世界樹
この大樹が世界樹。
そうなると、ここは聖域のど真ん中になる。
絶句しました、ほんと。なんていう場所でいきなり目が覚めちゃったんだろ・・・と思った途端、ピピッと閃いた。
今読み込み中のマップに、聖域圏内がわかるような表示ができたら、モアベターじゃね?
思いたったら吉日、速攻追加で聖域を強くイメージしつつ、聖域だからやっぱり神々しい金色で半透明なグラデーションみたいな感じだよね、なんて思っていると読み込み完了。
半径50km圏内のマップが表示された。
地図というにはあまりに何もないのだけれど、半径50km圏内はどうやら森林地帯なのか、黒いような濃い緑色で塗られている。
そして、途中で追加した金色のグラデーションも、だからか、よりはっきりと見やすく、想像より驚くほど狭かった。
このマップの表示域が本当に50km圏なら、聖域は縮尺の感じから、世界樹を中心に5km圏あるかどうか、というところ。
さらに、何を基準としたのか定かではない、赤く明滅する点が大中小に表示され、移動していたり、止まっていたり、いろいろあって。
熱源感知搭載のレーダー擬きな機能を備えた、ハイテクマップが本当に展開されたことに驚く。
で、聖域圏内や金色のグラデーションが薄くなっていく境界帯域周辺に赤マークはない。それが確認できただけでも、とりあえず一安心とちょっとだけほっとした。
夜になったらどうなるかはわからないし、そもそもこの探索結果自体、どれだけ信頼できるのか正直言ってわからない。安心なんて、気を抜いてはいけないことも重々承知している。
でも、とりあえずはできたらこのあたりに住めたら良いなとなんとなく思う。この手の直感はまず当たるのだ。
こういう時は、どなたのお許しをいただけば良いのだろ?
わからなかったので、たぶんここの主であろう世界樹さんにお願いしてみようと思いたち、大樹に両手をあて、目を閉じ呼吸を整え、世界樹さんの健康と幸福をまずは願ってお祈りする。
自分の安全確保はもちろんだけど、世界の安定や安寧の上に個々の生命は成り立っているものだから。
自己満足のお祈りを、じっくりゆっくり捧げていると、ちょっとした異変が感じられた。
さやさやと優しい風に、木漏れ日が反射しているのか周囲が柔らかく発光している。
目を開くと、自分も含めた周囲がキラキラした光と幸せな気配に包まれた。もちろん私の目には入らなかったが、その光は金色の波のようにたちのぼり、遥か上空で放射状に拡散した。
でも、その時の私にわかったことは、まるで住んでいいよとお許しをいただいたような気がしたことだけだった。
ていうか、もしかしてこれが世界樹の加護?