プロローグ
《名前》 ?(一條百合)
《種族》 人族?
《性別》 女
《年齢》 16
《レベル》 1
《称号》 才人・転生者(界を越えた者)・神々の加護・世界樹の加護
《体力》 50
《魔力》 表示不能
《攻撃力》 150
《防御力》 表示不能
《知力》 表示不能
《敏捷性》 180
《幸運》 1120
《スキル》
魔法全般
武術全般
耐性全般
時空間制御
天眼・並列思考・解析・探索・付与・合成・調合・錬金
《固有スキル》
創造
は?何これ??超凄いんですけど・・・?
気がついたら見知らぬ森の中で、大樹に寄りかかるように座りこんでいた。
あたりを見まわしても誰の姿も見えず、見覚えのない景色にここがどこなのか全く見当もつかない。
こんな鬱蒼とした森で、なぜ一人正体もなく寝こけていたのか。
一体どのくらいの間そうしていたのか、首から肩、背中、全身に、強ばってしまったためなのか、鈍い痛みのような倦怠感があった。
てか、そもそも私って・・・。
・・・!そうそう、一條百合、百合よ、百合。本人だけはいつまでも若いつもりの、でも所詮はアラフォー、三十九歳女、独身。
多感な十代の頃から夢みる夢子さんだった文学少女は、その後、二十歳となり、三十路を迎え、四十路の大台を超えようとしていた、はずだ。
ちまちましたもの作りと、最近では誰でも簡単に読むことができる軽めのオンライン小説が愛読書。
一人が好き、と幾つになってもぶれないお一人様思考を拗らせて、全く動じる気配もみせない真のボッチ、と少なくとも本人は思いこんでいた。
それは、結局彼女の臆病で感じやすい性質に所以するのだが、今はとりあえずそんなことを語っている場合でもない。
ただ思い出せたのはそんな程度のことで、おぼろ気な記憶を何とか引っ張り出そうと、いろいろ考えてはみたものの、やっぱり現状認識はできない。
名前はわりと簡単に思い出せた。
でも、それ以外のこと、自分自身のバックボーンや家族構成であるとか、何が起きてこうなったのかとか、この景色に見覚えがあるのかどうかなんてことは・・・はい、全然わかんないです。
ていうか、うん、たぶんこれっぽっちも見たことない風景だよね?
で、これってもしかして私、死んじゃった?
考えてみると、これまでの人生でも、力や体力とは無縁だった・・・はずだ。そういうことは、何となくわかる、ような気がする。
当然、同世代の同性とですら比べるべくもないし、ひ弱で脆弱だった自分に何かあるとすれば、それはそれなりの知恵や経験に基づいた洞察力、ちまちましたもの作り好き故の集中力と、我慢強さ、ある種の勘の良さでしかない。
もし今おかれているこの状況が、夢や脳内活動の副産物ではなく、本当に自分の想像どおりのものだとしたら、派手に音をたてたり、大げさに動いて助けを呼ぶなどもってのほかだ。
ここは、おそらく異なる世界・・・なら、これまでの常識なんてものが通用するかはわからない。
そして、たぶんこの場所は、人も寄りつかないような魔物ひしめく森のはず・・・、少なくとも愛読書ではそういう設定をよくみた。
ということで、まずは何をおいても現状確認。
軽く指先を曲げたり、手をぶらぶらさせたりしながら、痛みを警戒しつつ、身体が動くかどうかを確かめる。
同時に、無防備に目を閉じるのも怖いので、周辺の観察も忘れない。あちこち目が届く範囲で眺めていると、必然的にもたれかかっている大樹が目にはいった。
さわさわと風に揺れる金茶色の枝と金緑色の葉、降りそそぐ木漏れ日に、さっきまで感じていた痛みや倦怠感は、いつの間にか治まっていた。
どうやら身体が無事だとわかると、現金なもので途端に命が惜しくなる。明るいうちに安全を確保するにはどうしたら良いか、自分の状態からできることを考えた。
ラノベでは、大抵自分自身が気がつかない間に、現在の世界とは異なる世界へ転生させられ、何らかのきっかけでかつての記憶を取り戻す感じのパターンが多かったかな。
はっきりとはわからないけど、少なくともこの身体、赤ちゃんや幼児ではない。ある程度成長した女性、しかも肌のはりやコンディションからすれば、うら若き乙女といったところね。
日本人としてはあり得ない髪色に、髪の長さや白魚のような手指からして、上流階級のご令嬢といった風情も・・・。
ていうか、そんな記憶全くないんですけど?
この世界で生まれ育った記憶を失ったのか、はたまた幼少期を飛ばして、妙齢の乙女にいきなり生まれかわったのか、そのあたりの事情は、考えてもわからないのでとりあえず保留。
今は、そんなことを考えこんでいる場合ではない。
時間にして数秒、そんな思考にとらわれていたけれど、だからといって何がわかるわけでもない。
とりあえず藁にもすがる思いで、異世界転生なら剣と魔法の世界でチートが良いなぁ、などとありえない妄想を夢みながら、良い年して恥ずかしいと思いつつ、テンプレどおりにステータスを見たいと念じた。
結果、冒頭のステータスが判明したのだ。
我ながら、あまりにもご都合主義満載のステータスに半ば呆れながら、これが夢ではないことがまだピンとこない、それが私の異世界転生の始まりだった。