第6話「異常で変異な特異点は神様を殺してしまった」『中編』
かなり遅くなってしまいました、申し訳ないです。他の執筆とのバランスがまだまだですね……
【第6話】
『異常で変異な特異点は、神様を殺してしまった!-中編‐』
「ん~あー、おいら?
えっとーあーそうそう、初めましてー、おいらは~
”極大警戒指定、異常変異特異点β(ベータ)”でーす!」
「ここの神様をー、ぶち殺しに来ましたー!よーろーぴーくー♪」
「なん、だって?」
突然現れた怪しいパンクロックな男、どれくらい怪しいかというと……。
レインボーカラーのモヒカン!
世紀末にヒャッハー! しそうな棘付きの肩当!
素肌に革ジャン!
過剰なまでの髑髏のシルバー!
酷く怪しい、優しく表現しても、
究極進化したモヒ●ンAだ……。
しかし、そんなふざけた格好の事よりも。
こいつ例の異常変異特異点な上”神ちゃんを殺す”と、
確かに言った……。
「”β”って事は考えたくなかったが、やっぱり複数こんなのが?」
俺が”α”なんだろ?
いや、こいつだけ異常なのかもしれない。
いくら異常な死に方で転生することになったからって、
”神様を殺す”って発想がおかしくないか?
普通はそこで神様と交渉して、ウハウハ展開になるように努力するのが、
”真の異世界生活希望者”ってモンだろ!(※個人的見解です)
「んー? 子豚ちゃん喋ってるぅ? ひょっとして転生者(仮)なんだぁ?」
くねくねして気味が悪い、”カマ”要素もあったのか……。
「ああ、ちょっと手違いがあってな、
今はキュートな子豚ちゃんだよ”β”さん?」
リアちゃんに抱きしめられているからわかる、
背中に柔らか……いや、激しい動悸が伝わってくる。
神ちゃんが見つかる前に、アレを何とかしなければならない。
しかも他の神様を殺してきたような奴だ、
リアちゃんが落ち着くためと、トリスさんが戻ってくるまでの時間稼ぎ。
出来るだけ穏便に友好的に……。
「んー? ”β”さん? んー、なんか響きがこう、ぐっと、んー!」
「あー、別の呼び方が良かったですかね?
何とお呼びして良いか分からなかったもので……。」
不良に絡まれた時にと、身に着けたヘリ下りトークで対応する俺。
「”ベーター”ここ、アルプスじゃねーし、
”ベイダー”宇宙でもねーし! ”べー、べー”牛飼いでもねぇよ!」
一人で悩んでる、こいつ意外と話せる奴かも?(※同類的な意味で)
「よぉーし! 決まったぞぉ!」
「おめでとうございます、一体どんなイカした呼び名なんで?」
「んっとねぇ~ここはぁ、フレンドリーにぃ”べーやん!”
そう、”べーやん”そう呼んでくれるぅ~?」
いちいち、くねくねしたポーズを取りやがる。
さんざん悩んで”べーやん”かよ、センスわりぃ。
「そうですか、じゃぁ、べーやん……」
フレンドリーに勤め、名を呼んでみる俺。
「あぁ? 今なんつった?」
「え?」
あれ? 俺、地雷いつ踏んだ? 急に血の気が引いていく。
「で、ですからフレンドリーに”べーやん”と……」
さっきのカマ口調もどこへやら、いきなり豹変した。
青筋もバッキバキだ、どこの不良漫画だよ!
「豚野郎にフレンドりーに呼ばれる、いわれはねーんだよ!
ああ? 牛丼にすっぞ! この豚野郎!」
中々、難易度が高い事を言う”べーやん”、
しかし不味いこのまま奴が詰め寄ってくれば、神ちゃんが見つかる!
「お姉ちゃんをお願い……」
「あふん、ちょ、まだ……」
リアちゃんが俺の耳元で囁く、一瞬ゾクゾクっときたが、
気を取り直した時には、既に足元に放り出されていた。
「うほ、なんだぁ? えろえろパツ金髪メイドちゃんが
おいらの相手してくれんの?」
ゆっくりと近づくリアちゃんを、
いやらしい目つきで舐め回す様にじろじろと見ている”べーやん”。
「引き千切って、磨り潰して地獄へ逝かせてやるよ……」
リアちゃんのセリフに、つい股間を押さえて縮み上がった瞬間
ドン!!
リアちゃんが、一足飛びに踏み込み、べーやんの体が九の字に曲がる……。
綺麗な崩拳だ、
ズバァァン!! ゴロゴロゴロゴロ……
ボールの様に吹っ飛ばされ、転がっていくべーやん。
しかし、ミニスカートのメイド服での崩拳……大変素晴らしゅうございました。
ちらりと見えた、白いおしりに感謝の意を捧げる。
「んーいいね、いいね!
その強気な表情を、泣き顔にしたくなってきちゃったよぉ~?」
「そんな、まともに入ったはず?」
何もなかったように立ち上がるべーやんに驚愕するリアちゃん。
何がどうなってるんだ? 俺の頭が潰された時以上の衝撃に見えたが?
「あれぇ? 驚いてる?驚いてるねぇ? げぶはぁ!」
「え?」
べーやんが、いきなり血を吐いて膝をつく、一体何なんだ?
「ひゅー、ひゅー痛ぇ、ちょー痛ぇ!
やっぱ、他の神様のとこじゃ効果は薄いかぁ……べっ!」
血の塊を吐き出し、ゆらりと立ち上がるべーやん。
リアちゃんは中腰に構え警戒を続ける。
「今のうちに、とっとこ、とっとこ……」
何処かの残飯が大好きな騎士団長の様に神ちゃんの元へ高速移動し、
ソファーをよじ登ると、神ちゃんの寝顔が目の前に……。
涙の痕は残るものの、子供のような寝顔にほっとする。
「ち、ちゅーしたら起きちゃうかな? ごくり……いかんいかん」
雑念を振り払う、しかし困った。
神ちゃんを気づかれずに運びだすなんて、子豚の俺には無理だし、
起こして一緒に逃げる? リアちゃんを置いて?
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「リアちゃん!?」
俺はソファーの背もたれに飛びつき、駆け上がった。
そこには、胸元を押さえて壁際に追い詰められているリアちゃんの姿が!?
「ふぇっへっへっへ! さぁ~おべべをはぎはぎしちゃおうねぇ~!」
べーやんが、バタフライナイフをカッチャンカッチャンしながら、
リアちゃんのメイド服の、おそらく胸の部分だろうを口に咥えた。
「く! この変態野郎!」
「んー? だめだよぉ? メイドさんが、そんな汚い言葉使っちゃぁダメダメ~!」
べーやんの言葉には同意見だが、なんでこんなにむかつくんだ?
「さぁ、生まれたまんまの姿になって、ご奉仕して貰おうかなぁぁ?」
「っざ、けんなぁ!!」
ガっ! ドム!
「な!? ぐぅ! おぶぇ!」
べーやんの顎を狙った、リアちゃんの掌底ががっちり掴まれ、
べーやんの膝蹴りがリアちゃんの腹に突き刺さり、リアちゃんが苦悶の表情を浮かべる。
「畜生、俺は何もできないのかよぉ……」
子豚の姿であることを悔やむ俺、いやそれでいいのか?
俺の異世界生活の夢は、こんなところで終わっていいのか?
神ちゃんの涙を見て、どう思った? 何を感じた?
あんなふざけた奴に、神ちゃんを殺されていいのか?
神ちゃんが殺されて、リアちゃんの泣き顔が見たいのか?
どうなんだ? 伊勢海助!!
ドカッッッ!!!
「ぐぅ、うあああ!!」
べーやんは、ぐったりしたリアちゃんの両腕を掴み持ち上げ、両手を重ねて、ナイフを突き立て、壁に縫い付けた。
「はーい、ご開帳ぉぉぉぉ!!!」
ビィィィィー!!
激痛に身を捩る事しかできないリアちゃんのメイド服が、
もう一本のバタフライナイフによって、無残に切り裂かれた!
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「イイねイイねぇ~顔を真っ赤にして、涙を流すメイドさんの、
H☆I★M☆E★I☆! おやおやぁ? 下着もつけてないなんてぇ?
これはぁ、たぁっぷりお仕置きしないとねぇ?」
「う、うぅぅ……お姉ちゃん、ごめん……私じゃ……」
「だぁいじょうぶ!ここの神様? お姉さんだっけ? 美人さんだったらぁ君の後にぃ、たぁっぷり可愛がってから、嬲り殺してあげるからぁ~安心しなよぉ?」
「……やめて、お姉ちゃんをもうこれ以上苦しませないで……
せっかく会えたのに、せっかく笑いあえるようになったのに……」
「いいねぇ~その顔、おいら、もう、我慢できないよぉ……それでは!」
「誰か……お姉ちゃんを助けて……」
「うぁっったりまえだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ズドム!!!
「はを!?」
某、海賊王を目指すアイツの名台詞に勇気を貰い、そのセリフと共に、
俺はズボンを下ろしてたべーやんの【バキューン】にダイレクトアタックだ!
全体重を、全力ダッシュでめり込ませた感覚が頭に伝わる!
股間を押さえながら悶絶するべーやん。
「か!? ふぅぐぁぁ!? んがぁぁぁぁぁ!!!」
流石に、男性の最大の急所を潰されたら無事ではすむまい。
俺の頭には確かに何かが潰れる感覚が残っていた……うげげ。
「て、てめ! 何しやがる! この……豚野郎!」
「バカ野郎! 俺は”豚野郎”何て名前じゃねぇ!
俺の名は伊勢海助! いずれ、異世界生活王になる男だ!!!」
麦わらのアイツの様に言い切り、びしぃ! っとべーやんを指さす(指はないんだが)
「第一、神ちゃんは俺が最初に唾つけたんだ! 俺が最初にぺろぺろするんだ!
神ちゃんの笑顔を見るために、楽しいこといっぱいするって決めたんだぁぁぁ!!」
「危ない! 豚野郎!」
ドシュ!
「だから、豚野郎じゃないって……えぶ?」
「ぴーぴーうるせえんだよ、豚野郎……」
股間を押さえながら、べーやんが俺に手を伸ばしていた……。
こいつ、まだ……あれ?
「ぶふぉ! え? あれ?」
脇腹って言っても胴体って言った方が早いな、
そこが燃えるように熱い、あれ? 何で俺、血の海に沈んでるんだ?
リアちゃんが涙を流しながら何か叫んでる……。
はは、さっき名乗ったじゃん、いい加減”豚野郎”は勘弁してくれよ。
「はぶっ!」
「この!この!くそ豚野郎が!俺の大事な【バキューン】に!!」
はっ! 覚醒した気分の俺に、そんな、ちんけな蹴りが聞くかバーカ!
をを? 何度も踏みつけられてるのに全然痛くないZE!
今なら余裕で勝てる気がする! これが異世界パワーって奴かな?
「しねやぁぁぁぁぁ!!!」
ドコォ! ベシャ! ズシャァァ……
べーやんが、俺をサッカーボールの様に蹴りやがった!
結構な量の血の線を、床に引いちまったが全然痛くない!
そろそろ、カッコよく立ち上がって、俺のチート能力でぶっ飛ばす!
あれ? 立ち上がれないぞ? それに寒い……おい、誰だよ冷房入れたのは。
寒い寒い寒い……あれ? 背中に温かい感触が?
視線が急に高くなった、誰かに持ち上げられてる?
「伊勢さん……、こんなに傷だらけになってぇ……」
神ちゃん? 目が覚めたのか?
俺は、いつの間にか起きてた神ちゃんに抱かれていた。
「ひゅー、ひゅー……ごふ……」
駄目だよ、今俺血まみれだから、汚れちゃうよ。
あれ? また涙を目にいっぱい溜めて……。
違う! 早く逃げないと……神ちゃんが殺され……。
ちゅ……
え? 今、神ちゃんにチューされた?
「ぺろぺろは流石に恥ずかしいのでぇ、今はこれで許してください」
あ……やっぱり神ちゃんの笑顔は可愛いなぁ。
とびっきりの笑顔を見せられ、ドキンとする。
それに、聞かれてたのかぁ恥ずかしいなぁ……。
でも、俺は本気だぜ? イチャイチャフラグ立てまくる所存ですだぜ?
「ひゅー、げぶ……」
あれ?さっきから声が出ないな?
それに目が霞む……あ、この感覚覚えてる。
俺死ぬんだ……。
霞む視線の先、べーやんが迫ってくる……。
神ちゃん逃げ……る……んだ。
その時ぞっとするような、冷たい視線でべーやんを睨む神ちゃんを見た。
泣いた顔を見るのは嫌だけど、そういう顔もしてほしくないなぁ……。
やっぱり神ちゃんは笑顔が一番だ……よ……。
視界がブラックアウトして俺の意識が遠ざかる……。
最後に神ちゃんの、神ちゃんらしくない言葉を聞き、俺の意識は途切れたのだった。
「ここは、神聖なる【審判の間】管理者である”審判長”として、貴方を殺します!」
……寒い、寒いよ……ぶきぃ……
『次回予告』
おっとぉ? 結構強いぞモヒ●ンA!
ゴリラメイドも、タジタジだぁ!
うぉぉ! ゴリラメイドの貞操の危機に……
あれ? ゴリラメイドって処女だっけ? まいっか!
貞操の危機に、豚野郎が覚醒!?
かっこいいセリフと、姿がミスマッチだぞ?
罰が当たったのか、脇腹を一刺しだ!
あー死ぬね、これは間違いなく死んだね?
神様に、ある意味告ったのについてないねー!
異世界生活は、始まってもいないのに終わるんだね?
本当に? それでいいのぉ? 良くないよね?
おや? 神様の様子が……。
次回! 第7話『異常で変異な特異点は神様を殺してしまった!-後編-』に、
レッツ異世界ドライブ!
※諸事情により番組内容とタイトルが変更になる恐れがありますご了承ください。
次回で一応一区切りをつける予定です。このまま、異世界生活が始まらない物語で終わったらどうしようかと思い始めていましたが……