第5話「異常で変異な特異点は神様を殺してしまった」『前編』
ペース配分を検討中…書き溜め単発ポンポンが理想らしいので、今のコツコツ週末ドッカンよりかは負担が減るのかな?ともあれ執筆スピードが問題かも。
【第5話】
『異常で変異な特異点は、神様を殺してしまった!-前編‐』
「いや、”極大警戒指定、異常変異特異点α(アルファ)”と呼んだほうが宜しいか?」
初老の男は確かにそう言った。
俺はちびりそうになるのをこらえつつ、平静を装おうとしたが、
「ものすごい脂汗ですが、もしや体調がすぐれませぬか?」
ぶひぃ、隠せてない!おっさんの眼がこちらをじっと見つめている。
ちなみにすごくいい声だが、敵か味方かの判断に困る声だ……。
この声は、若者や身なりがしっかりしていると穏和そうに見えて
その実、残酷で野蛮な敵に多い声だ(※個人的見解です)
あと一つ”アレ”がはっきりすれば、信用に値する声でもある(※個人……)
「はは……何かの間違いでは?
お、俺はそんな大それたものでは……」
”バン!”
「ぶひぃぃ!!ごめんなさい!ごめんなさい!
焼かないで!殺さないで!流さないでぇぇぇぇぇ!!」
初老の男が机に手をつき、立ち上がってこちらを見下ろした。
ダメだ、死亡ルートまっしぐらだ……と思ったら?
「この度はうちのバカ娘が、ご迷惑をおかけしましたぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ぶ、ぶひぃ?へ?」
初老の男は、俺の目の前で机に頭を擦りつけるかのように
俺に謝罪をしていた……ちょっとちびったのは内緒だ!
「え?娘?誰?まさか、神ちゃんの親父さん?死んだんじゃ?」
「をっと、申し遅れました。
私”審判の間”の”施設長”を務めております、トリス・リードと申します」
すっと名刺を差し出す初老の男、改めトリスさん。
娘がいるってことは父親だ、ならばこの声だと悪人ではない!
なにせ”頼れる父親No1の声”だから!(※個人的見解DESU)
「ど、どうも……神ちゃんのお父さんでしたか」
「神ちゃん?お父さん?はて?……をを!なるほど!」
少し考えこんで何かを納得するひろ……もとい、トリスさん。
「いやいや、私は”審判長”の父親ではありませんよ、
で、いつまでそうしているつもりだ!いい加減出てこいバカ娘!」
「……バカは余計だ、くそ親父」
トリスさんが小さく叫ぶと、
トリスさんの背後の壁からゴリラメイドが現れる。
「露出怪人ゴリ……ぶひぃ!」
思わず声に出ちまったが、
ゴリラメイドの殺気を抑えない目力に、俺はまたちびってしまった。
「改めまして、こちらがうちのバカ娘の……」
「……リアリス・リード……です、ごにょごにょ……あいたぁ!?」
「まったく、ちゃんと頭も下げられねぇのか?」
トリスさんのげんこつを、良い角度でお見舞いされ、
頭を押さえながら蹲るゴリラメイド。
「どうも、すみませんでした……反省して……ます。」
眼は逸らしているものの、一応謝罪の言葉を絞り出していた。
「伊勢殿、この通り反省もちょっとはしてるようなので……
許してやっては貰えませんか?」
椅子に座ったまま頭を下げるトリスさんと、
その傍らで控えつつ、そっぽを向くゴリラメイド……ふむ、
退場時はほぼ全裸だったがのが、流石に今は最初に見た黒のメイド服を着ている。
しかし、こう改めて見ると……
”粗相をしてそれを誤魔化そうとしてるけど、
バレバレなツンデレメイド”な感じで実に良い……。
何とも、短めのスカートとストッキングが醸し出す絶対領域がたまらん!
エッチなお仕置きで泣かせて”くっ!殺せ!”と言わせたくなるような美少女だ。
でもなぁ……いかがわしい事を考えつつ、ジト目になる俺。
「お怒りはごもっとも、
こちらとしては出来る限りの謝罪と補填を致しますので……」
真っすぐにこちらを見つめるトリスさん、
まぁ復活出来ないわけでもないらしいし……ん?
「今はこの程度でご勘弁を……てい!」
”ヒュバッ!”
それは、一瞬の出来事だった……
まるで時間が止まったかのようだった。
トリスさんがゴリラメイドに対して、勢いよく右手を振り上げたのだ!
絶対領域のシークレットゾーンが一気に広がる!
そして、そしてそこには!俺たちの待ち望む桃源郷……は、なかった。
黒でも白でもない……あれ?おかしいな?これは?
”らん、うんたら、らんらんらん~らん、てぃん!”
”らん、とんんらら~らんらんららら…ぽぉう!…”
不可思議な音楽が、俺の頭の中に流れる……。
いつしか俺は金色の野原を歩いてるような錯覚を感じた。
子供たちよ、俺の荒んだ心の代わりに見てオクレ、
金髪美少女は、下もやっぱり……古き言い伝えは真であった!
『そして、時は動き出す!!』
翻るスカートが、再び絶対領域を作り出した瞬間……
俺の鼻から勢い良く鼻血が噴出した!
これがアニメだったら様々な角度からその瞬間が映し出され、
オブジェや謎の光で一部分が隠されるであろうが……。
異世界には、そんな仕事熱心な光はいなかった(※異世界は関係ない)
「イイ……許す許しますよ、いい物見せて戴きましたぁぁぁぁぁ……」
悲鳴をあげようとするゴリラメイドの口を、
トリスさんが飛びついて口を押さえ……、
次の瞬間体がくの字に曲がる姿を眺めながら、
俺は静かにその場に倒れた、
その顔は満足気だったであろう。
俺はこのまま出血多量で死ぬ……のか?
………
……
…
「ん?…あれ?」
背中に感じる温かみに、俺はゆっくりと目を覚ます。
「気が付いたか?豚野郎……」
「ぶひぃ!俺に止めを?いっ……」
「お願い、静かにして!お姉ちゃんが起きちゃう!」
悲鳴を上げようとしたら、ゴリラメイドが覆い被さるように制止してきた。
どうやら俺は、ゴリラメイドの膝の上で治癒魔法をかけられているらしい。
背中に当てられた手から、温かい波動が伝わってくる。
「失った血の回復は時間がかかるから、おとなしくしてて」
「え?俺を治療?なんで?」
「ごめんなさい、転生希望者がまたお姉ちゃんを苦しめるのかと思ったら
かっとなってつい……これはその、お姉ちゃんを泣かせてくれた……お礼」
「泣かせた……か、そんなつもりじゃなかったんだけどな……」
悔しさと悲しみの混じった表情で謝罪された……。
そういやトリスさんは?
きょろきょろと、視線を巡らせたがいなかった。
「パパはゲートを閉じに行った、お姉ちゃんを休ませるために……」
「パパぁ?さっきはくそ親父って……」
素朴な疑問を口にした。
「くす……あれは、パパと私がケンカするときの呼び方なの」
やっぱり笑うと可愛いな、ちょっとドキッとした。
「ねぇ、教えて?あなたは今騒ぎになってる”異常変異特異点”なの?」
「そ、それは……」
どうする?彼女は真剣な眼差しで俺の顔を覗き込む……
既にばれてるようだけど、何と答えたらいいのか。
「他の審判長様と同じ様に、お姉ちゃんを殺しに来たの?」
「はぁぁ?神ちゃんを殺す?俺が?」
とんでもない発言に声が裏返る、どういうことだ?殺すってなんだ?
「さっき、施設のスタッフに聞いたの、
ココとは別の世界の”審判の間”で”異常変異特異点”が、
審判長……つまり神様を殺して、また別の世界へ逃げ込んだって」
「……正直分からない、でも俺は神ちゃんを殺すなんて」
「ごめん、意地悪言った殺すつもりなら、
お姉ちゃんが寝てる間にできたもんね」
「えっと、リアリスちゃんだっけ?気になったんだが」
「うん、リアでいい、みんなそう呼ぶ、で何?」
「さっきトリスさんは、神ちゃんとは親子じゃないって、
でもリアちゃんはパパって……」
ちょっと混乱してきたので、
話題を変えるためさっき思った疑問を聞いてみた。
どう見ても姉妹反対の対格差だし多分、
親戚のお姉ちゃん的なものかな?と軽い気分で聞いたのだが。
「それは……私がお姉ちゃんに絶縁されて、
今のパパが養女として引き取ってくれたから……」
重かったぁぁぁぁぁぁぁ!!、ごめんなさぃぃぃぃぃ!!!
でも絶縁って、養うためにって言ってた神ちゃんが、
そんなことするとは思えない。
それに、なんで今こうして一緒に?仲もあんなに良さそ……
よ、良さそうだし!
「……なんかすまん、嫌なこと聞いたかな?」
「あ、変な勘繰りしないで……もう、過ぎた事だし
今はお姉ちゃんの側にいられるから」
リアちゃんは遠い目をしながら力なく笑った、
何か触れてはいけないものに触れた気がして気が滅入った。
そんな時だった……
「あんれぇぇ?こぉんなところに美味しそうな子豚ちゃんとぉ、
おいら好みのえろえろパツ金メイドちゃんがいるよぉ?」
「誰!?ゲートは締まっているはずなのに?」
不意に響くイヤらしい誰かの声、
リアちゃんが俺を胸元に引き寄せ、椅子から立ち上がる。
神ちゃんが寝ているソファーの向こうに扉が現れており、
パンクロック的な格好をした変人がそこにいた。
「ん~あー、おいら?えっとーあーそうそう、
初めましてー、おいらは~
”極大警戒指定、異常変異特異点β(ベータ)”でーす!」
まさか、こいつが……なんで?思考が追い付かない。
「ここの神様をー、ぶち殺しに来ましたー!よーろーぴーくー♪」
「なん、だって?」
今、こいつなんて言った?
『次回予告』
ついに明かされた、ゴリラメイドのフルネーム!
え?そっちじゃない?じゃぁ謎のおっさん?そっちでもない?
ゴリラメイドはノーパンだった!?きゃーやだー!
怖いねー恐ろしいねー、なんてったって金色の野原だねー!
出血多量で死にかける主人公もウブだねー!
てか、来ちゃいけない変な新キャラも登場だ!!
死ぬ?今度こそ殺される?豚かメイドか神様か?
まだ、異世界の入り口だよ、異世界生活は始まってもいないよ?
いっそのこと『Ge:ゼロから進まない異世界生活』に改名したら?
え?流石に怒られる?ですよねー!
次回!第6話『異常で変異な特異点は神様を殺してしまった!-後編-』に、
レッツ異世界ドライブ!
※諸事情により番組内容とタイトルが変更になる恐れがありますご了承ください。
異世界への入り口編もいよいよ佳境に(謎)