第4話「はるか遠い理想郷……でも、豚丼はおいしいです!」『後編』
無理はせず1週間1話ペースが良いのではと友人からアドバイスされ、慌ててあげるよりかは内容を冷静に見直せるという事にでかるちゃー
【第4話】
『はるか遠い理想郷……でも、豚丼はおいしいです!-後編-』
「すみませぇん……取り乱しました……
伊勢さんは被害者という事だったんですねぇ……」
小一時間程、弾む双丘を眺めつつ、
剛と柔の狭間で死後の世界なのに臨死体験という貴重な体験をしていたが、神ちゃんもようやく落ち着いたようだ。 ゴリラメイドも担架で運ばれていった。 既に真っ白に燃え尽きていた。
「まぁまぁ、欲の皮の突っ張った奴なんて大勢いますからねー」(※おまいうである)
「そうなんですよ! しかも申告されてない不祥事が次々に明るみに出て、各部署で大騒ぎだったんです。 人事で人が減って、それでも頑張ってようやくブームが去って落ち着いてきたと思ったら異常な特異点が発生したって連絡が……」
「特異点?レイシ●トしなきゃ的な案件が?」
「……? ●イシフトが何かはわかりませんが、本来ありえない……名状し難い程のとんでもない死に方をした人がいたらしくて」
さすが神ちゃんは天然だなぁ、小粋なソシャゲギャグがスルーされた……
まぁ、ソシャゲがこんなところにあるとも思えないけどね。 しかし、とんでもない死に方? 想像もできない。 そんなの、俺の計算し尽くされた異世界転生への愛の逃避行計画に比べたら、ふふん。
「ありえない死に方って……どんな?」
「ええと、通り魔に腹部を刺された直後、少女の命を庇ってトラックに跳ねられ全身複雑骨折に内臓破裂、更には、消滅制御に失敗した時空の歪みをモロに受けて上半身切断等などを、大勢の目の前で、神掛かったタイミングで一度に行われたと……」
それは、中々綿密な……ん? それってどこかで……俺だ!
「一つ一つが一生に一度も起きないレベルとも言われるほどのレアケース。 それを一度に複数も……循環システムもオーバーフローを起こしてしまって、こっちは今、大騒ぎですぅ……」
「その異常な特異点が、どこかの”審判の間”から異世界に転生してしまったかもしれないって情報が入ったのですよぉ、まだ転生していない可能性もありますが、情報が不確かで、管理者に緊急の収集がかけられまして、通信会議の為、少し席を外してリアちゃんにお留守番頼んでたのですが、まさかここでも事件が起きるなんて踏んだり蹴ったりですぅ」
神ちゃんはがっくりと肩を落とす。 なるほど神ちゃんがいなかったのとゴリラメイドだけだったのはそのせいか。
「へ、へぇ……もしそんなのがココに来たら大騒ぎですよねぇ?」
「ええ……ココと私が管理する世界が汚されるくらいなら、異常な特異点は完全に破壊して灰になるまで燃やし尽くして包んで丸めてトイレに流します! ふ、ふふふ、そして、自らこの世界を自爆させます!」
「うぇぇぇぇ!? 殺しても自爆するので!?」
俺はここで異世界に入る前に”ありえない死に方”をしたのを思い出して背筋が寒くなる。
「神界そのものが崩壊する歪みに変わるかもしれません。 ふへ、ふへへ……」
やばい、神ちゃんの目が暗黒面に落ちる直前のどこかのジェ●イみたいだ。
「なんて、冗談ですよ、冗談!」
「HAHAHA、冗談きついっすねー!」
「そんな歩く災害みたいな人が、ココにたどり着くのもあり得ないですよね、ふぅ……」
神ちゃんはあまりない胸をなでおろす(※とても失礼である)
って……いやぁぁぁぁぁぁぁ!! 俺、来ちゃってる! 来ちゃってるよぉ!!!
どうするどうするどぉおする? 俺ならどうする? ばれたら殺されて焼かれてトイレに!? いや、らめぇ!!
「どうかしましたか? 伊勢さん?」
「い、いえ、なんでもありません! 大佐!」
「やだなぁ、大佐ではありませんよ? それで、伊勢さんの進退ですが、資料が現在閲覧できない状態でして、こちらで改めて調書を作成することになりました。 えっと、まずは死亡時の状況を覚えてる限り、出来るだけ詳しく」
「あーあー、そう、そうだ、神ちゃんは普段、仕事以外では何を?」
や、やべぇ、資料が見れないのは幸いだが何とか誤魔化さないと。
「ふへ? んーそうですねぇ、基本的に私はここを離れられないので、結局、ここでリアちゃんとランチをするのが唯一の楽しみに……お恥ずかしながら」
一瞬きょとんとはするが、意外とあっさり乗ってきた。 人が良すぎるんだなぁ、しかし神様の唯一の楽しみがランチって、サラリーマンみたいで世知辛い。
「へ、へぇー、神ちゃんのお勧めランチってどんなのなんです?」
「私が管理する世界では、えっと、畜産が盛んなので、……そうです! 豚です!」
「はひ?」
「んふふぅ、特に豚肉です! ここの豚丼はおいしいんですぅ! じゅるり……あ、ごめんなさいです! 別に伊勢さんがおいしそうとか……あ!」
きゅるるるる……
「あ、ひゃっ? これは! あうあう、お昼食べる暇がなくて……あううう」
うっとりとしていた神ちゃんのお腹が鳴った。 俺の胃腸もキュルルと別の意味で鳴った。 赤面する神ちゃんと蒼白になる俺は二人揃えば、超龍●にシンメ●リカルドッキングができそうだ。 ドッキング言ってもリアルじゃないからね!勘違いしちゃダメなんだからね!(※あたりまえである)
「ボ、ボクは悪いスラ……げふん! 子豚じゃなーいよー♪」
場を和ますために、異世界で悪意がない意を表す伝説の踊りとセリフを披露する俺!(※必死である)
「……ふふ、ぷっ!あ はは! わっわかってますよぉ、ぷっくくく!
伊勢さんは優しい方です。 私をリラックスさせようと、ぷぷ!」
神ちゃんが涙を浮かべながらくすくす笑った。 滑ったと思ったら結構ウケてる? こんなので?
眼鏡を外し涙を拭う。 ををう? メガネ外すと、これはまた……。 ”眼鏡っ娘はメガネ外すと超可愛い”という永遠不滅の法則を目の当たりにしたZE! しかも、勘違いで好感度アップ? チョロインか? チョロインなのか?
「神ちゃんは、とんでもない隠れ攻略対象かもしれん……」
改めて見るとふわふわっとした長い金髪。 妹とは対照的に小柄でに抱きしめたら折れてしまいそうな華奢な身体つき、ゆったりとしたローブのせいか余計に儚げで、守ってあげたい心がくすぐられる。
「はい? 私がどうかしましたか?」
「あ、いや、こっちの話で……」
いかん、異世界にこの身を捧げたこの俺はリアルなコミュ力に乏しい! 異世界モノには転生前に女神を脅は……友達になって助けてもらったり、異世界のお供に道ずれにするパターンもあったが、こんな娘と一緒なら、ちょっと悪くないとか思えた。
「でも、伊勢さんは異常特異点ではないことは確かですね。 異世界をどうにかしようとする特異点が、こんなにいい人なわけないですから」
はう! エンジェルスマイルを超えたゴッデススマイルに俺の良心が痛む。 堪忍やぁ、堪忍やぁ、心の弱いおいちゃんを許してくれええええ。
「ははは、そういってもらえると嬉しいですね」(キリ!)
「若くしてお亡くなりになって、未練とか不安でいっぱいのはずなのに、審査前にこちらの不手際で精神体が死にかけたのに責めもしないで逆に励ましてくれたり、初めてだったんですよ」
「いや、まぁ、失敗は誰にでもありますし」
「普段は、補填内容が承諾できないと、暴力を振るわれることも珍しくありませんでした」
神ちゃんは無意識だと思うが左の頬をさする。 多分殴られたんだろうなと思った。 ひでぇな、補填してくれるだけでもありがたいというのに暴力って! 神ちゃんは人がよさそうだから舐められちゃうんだろうなと思った。
「辛いなら別の仕事とかは考えなかったんです?」
出来るだけ優しく、話を良い方向へと誘導するつもりが……。
「この仕事が向いていないのは分かっています。 でも、前任の父と母が事故で亡くなりまして、昔から補佐をしていた私がこの場所を任されたので、それに応えたいんです」
神ちゃんが弱々しく笑顔で答える。 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! やめてぇぇぇぇ!!! 眩しくて直視できないいい!! これで、俺がその異常特異点だとか言い出したらって! 言えると思うかぁぁぁぁぁ!!! 神ちゃんの笑顔が凍り付くなんて考えたら、それだけで死にたくなる! いや、死んでるんだけどさ! うぉぉぉん!
「あ、あの……伊勢さん? 本当に大丈夫ですか? 義体に不具合でも?」
ぐぉおおお!! 辛い! 今はその純粋な優しさがつらぃぃぃぃ!!!
「い、いやいや、神ちゃんがこんなに一生懸命頑張っているのに、それを分かってあげられない奴がいるってのに腹が立ちまして……うぉ!?」
神ちゃんが驚いた顔でこちらを見つめ、大粒の涙がボロボロと溢れ出す。
「え、えぐぅ、そんな、ダメです! 私は、ココを預かる、ひぐぅ……不意に、そんな優しい……言葉、私、ダメ! 泣いちゃ、泣いちゃ」
必死に自分に言い訳をして、溢れる感情を抑え込もうとする神ちゃん。
それでも涙はとめどなく溢れ決壊寸前で、見てるこっちが辛い。 俺は無意識に机から神ちゃんの太ももの上に飛び乗る。
「伊勢……さん?」
両腕(足?)を広げておどけたポーズで立ち上がり、昔聞いた、癒し系コメントを思い出しながら……。
「ないたっていいじゃない、かみさまだもの。 かいすけ」(※センスは皆無である)
「……!」
いかん、滑ったか? 現世でのコミュ力0の俺的センスでは救いにはって……ぐぇぇ!!
「すみません、ちょっとだけ、ちょっとだけでいいですから……お願い、うくぅ……」
神ちゃんは、俺を強く抱きしめ肩を震わす。
「どうぞ思いっきり遠慮なく、人が来たら教えますんで……」
ぽんぽんと神ちゃんの腕を優しく叩いた。 それが合図かのように神ちゃんは泣いた。 そりゃぁもう子供の様に泣きまくった。 どれだけこの小さな体に溜め込んでいたのだろうか。
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泣き声が寝息に変わるのに、そう時間はかからなかった。
溜まっていたものを吐き出したせいか、神ちゃんは椅子の背もたれに身を預け眠ってしまった。 俺を抱き枕にして眠る姿からは、ここを管理する神様とはとても思えない。
誰もここに来なかったのは幸いだったけど。 異世界生活ひゃっほい! って思っていた自分が、
なんだかとてもちっぽけに思えてきた。 そんな俺が異常特異点で、神ちゃんをより苦しめてると思うと……胸の奥がもやもやしてくる。
「俺、普通に死んでた方が……って、何言ってんだろうな、異世界転生生活は俺のすべて……だったはず……」
そう独り言をつぶやいていた時だった。
「伊勢殿……そのままで、ちょっと宜しいですかな?」
な? いつの間にか、俺の目線の高さに初老の男の顔が? 男は口に人差し指を当て”静かに”のジェスチャーをする。 神ちゃんと似た雰囲気の服装なので関係者のようだ。 とりあえず警戒を解き、男の指示に従う。
「よっと……」
男は神ちゃんを俺ごとお姫様抱っこして、いつの間にか現れた白いソファーに寝かせる。 そして俺を拘束していた神ちゃんの腕を優しく解き、俺を解放する。 神ちゃんは余程疲れていたのか起きる様子もなく、静かな寝息を立てている。 男は俺を机に戻し、自らも神ちゃんの椅子に腰を下ろすた。
「ご協力感謝します、伊勢殿」
男は俺に深々と頭を下げる。 今の俺は豚の姿だが事情は知ってる感じで、神ちゃんの方に優しい視線を送りつつ口を開いた。
「あんなに気を張っていたあの子がここまで気を許すとは、流石は”自称・異世界に愛された男”と言ったところですかな?」
「何故その通り名を? おっさん、一体何者だ?」
背筋が寒くなった。 俺の情報は見れないって言ってたのに、このおっさんは俺が異常特異点だって気づいてるんじゃ……?
「あの子の部下の一人ですよ伊勢殿。 いや、”極大警戒指定、異常変異特異点α(アルファ)”と呼んだほうが宜しいか?」
「なっ!」
ばれてるぅぅぅぅぅぅ!? 俺、終わったぁぁぁぁぁ!!! しかも”極大指定”とか”変異”とか”α(アルファ)”までついちゃってるぅぅ!! 俺消される、消されてしまう!!!!!
誰か助けて……ぶひぃ!!
『次回予告』
ん? をっと……テステス、えーと何だっけ?
あーそうそう、主人公の豚野郎が色々死亡フラグ?
ついにばれちゃった? ばれちゃった?
主人公の秘密がばれるのって、1クールが終わる辺りじゃないの?
主役メカ交代の回で撃墜されるD-1カ●タムより早くない?
次回、死んじゃう? また死んじゃう?
異世界生活モノなのに、まだ入り口前でまごまごしてるってどうなの?
異世界生活に疑問? 読んでくれてる希少な読者もそろそろ激おこ?
え? 生きているから神様だって殺される? どゆこと?
次回! 第5話『異常で変異な特異点は神様を殺してしまった!-前編-』に、
レッツ異世界ドライブ!
※諸事情により番組内容とタイトルが変更になる恐れがありますご了承ください。
異世界生活の始まらない異世界転生モノ…どうしましょう?