第11話「大逆転」
第11話『大逆転』
■伊勢海助視点
「バカ野郎! 言っただろ、俺は”豚野郎”何て名前じゃねぇ!」
「俺の名は伊勢海助! いずれ、異世界生活王になる男だ!!!」
日朝HEROのごとく、ビシィ! っと決めポーズを決める。
まさか人前で名乗り口上を、これでもかってタイミングで決められる日がこようとは……ビバ、異世界! ……というか、その手前らしいんだけど、そう絶叫してもいいくらいに今の俺はハイテンションだった!
(豚くーん! イキってるとこ悪いんですけどぉ? 大丈夫なんです~?)
「あ、はい。 すみません、調子こきました」
(豚くん。 使い方はさっき言った通り、ぶっつけ本番だけどやれる?)
「ああ、イメージトレーニングはばっちりだ、いける!」
(よっし、んじゃぁ。 一発ぶちかまして頂戴、豚野郎くん!)
「そこは名前で言ってほしい!」
命の恩人の声に後押しされ、べーやんの前に立つ俺は……そう、超カッコいい!!※個人的見解です
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■べーやん視点
一体どういうことだ? あの豚野郎が生きていたのも驚きだが、人間の姿で俺の前に立っている。
どういう理屈か分からねぇが、独り言をのたまってるこっちが本体ってことか?
「わざわざ殺されに戻ってくるとは、いい度胸だな……後ろのメス豚共々、始末してやるぜぇ」
何のことはない、何の力も持ってなさそうだし、何より俺には疑似管理者権限がある。
「ぶっ殺……んぁ?」
大蛇の一飲みで終わらせるつもりだった……だが、何でだ?
「何じゃこりゃぁぁぁぁ!!」
なんで俺は宙を舞っているんだ? 床から巨大な拳が突き出され、ド派手にぶっ飛ばされたと気づいた時には床が目の前にあった。
ドベシャァァァァ!!
「て、てめぇ! 今、何をしやがったぁ!」
豚野郎は一歩も動いてない。 それに、あのチビは瀕死で手を貸した様子もない。
「疑似管理者権限発動! この豚野郎を拘束しろぉ!」
「管理者権限発動!」
「んなぁ?」
今こいつなんて言った? ブタ野郎からあり得ないセリフが聞こえた。
「対象を、悪意ある侵入者に認定! 全ての権限を剥奪!」
「ぶぎゅる、待て待て待て待て待て待て!!!!」
俺は大蛇の姿を保てず、人型の状態で地べたに這いつくばっていた。
「ざっけんな豚野郎! なんでお前がソレを使える!?」
どうなっている、マジもんの管理者権限だとぉ? 他の管理者から奪ったシンボルアイテムの一つが使い物にならねぇ、だが、こっちにはまだシンボルアイテムがあるんだぜ!
「やりやがったな、どんな手を使ったが知らねぇが、こっちはまだまだやれるんだぜぇ!?」
俺は別のシンボルアイテムを使い、両腕を巨大なナイフに変化させた。 シンボルアイテムはすべて同じ造りになっていて、数をたくさん持っている方が勝つ! まぐれで一個潰されたからって俺の有利には変わらねぇ、潰された分はあのチビから補填すれば良いだけの事だ!
「あー、やっぱりか。 セキュリティソフトは大事だよね~俺も昔エロサイト広告に釣られて思い知ったぜ!」
ズモモモ……
「何ィ? うぉっとぉ!!」
豚野郎が意味深な事を言いながら床を巨大な拳に変化させ、左右から俺を圧し潰そうとしてきたが、それはあのチビがやったのと変わらないしょぼい攻撃だ。 俺はとっさにもう一つのシンボルアイテムを起動させ、変態を解除した腕を組み、肩と肘からでっかいスパイクを形成する。
「あめぇ! 超あめぇ! こんなぬるい攻撃で……」
俺を挟み込もうとした拳にスパイクが突き刺さり、奴の攻撃は無効化された、だが?
「だよねぇ、今だよ! さっちゃんさん!」
めご……
「はごぉ!?」
豚野郎は不敵な笑みを浮かべた後、意味不明な事を口走った。 さっちゃんさんって何のことだと思った次の瞬間、俺の下半身に凄まじい衝撃が走った!
「んが……な、何が……」
バチィィィィン!
「ぐべぇ!」
腰が砕け散ったかのかの様な衝撃と同時に、拳の攻撃を防いでいた変態も解除された為、骨が砕け内臓が潰される感覚を再度味わいながら意識が遠くなる。 残ったシンボルアイテムですぐさま回復をしなければまずい!
「疑似……管理者……げぶ! 権限……俺を、全回復、させろぉぉ!」
これで形勢は逆転……あれ? 俺の意識はそこで途絶えた。
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■伊勢海助視点
「警報が止んだ……ってことは」
(今、神様の意識がなくて、あのモヒカンによる複数の疑似管理者権限による不具合もとりあえずは落ち着いたようだね、お疲れ様だよ豚くん!)
「あ、はい、何はともあれ上手くいきました! ありがとうございます、さっちゃんさん!」
べーやんは、疑似管理者権限が解除された状態で足元から現れた、巨大なカンチョーの指にケツを貫かれたまま潰されていた。 一応生きてはいるみたいだが、泡を吹いて気絶している。
(とりあえず、残りのシンボルアイテムもアクセス無効にしておいたよ! これでしばらくは動けない筈さ!)
「さっちゃんさん、何から何まで助かります」
(いやぁ、豚くんの記憶のおかげでもあるから、気にしない気にしない♪)
自称”謎のお助け美少女”こと、さっちゃんさんによると、『審判の間』を預かる管理者にはシンボルアイテムという証が存在し、それを身につけた者は絶対的な存在であり、どんな侵入者であっても逆らう事は不可とされるらしい。
だのに、神ちゃんが侵入者のべーやんによる『疑似管理者権限』にやられたのは何故かというと、セキュリティの甘さそれに尽きる。 べーやんは他所の管理者から奪った複数のシンボルアイテムを所持していた。 んでもって、セキュリティはガバガバでシンボルアイテムは、各『審判の間』で使用できることが発覚。 管理者権限をの方が上とはいえ、タイミング次第で複数の疑似管理者権限に優先権が移るというダメダメっぷりであった。
ああ、「さっちゃんさん」というのは、瀕死だった俺を救ってくれた命の恩人である。 といっても、人間ではない様で、今俺のいる『審判の間』のAIみたいなものだと言えばよいのだろうか? 刺されて死にかけた子ブタの身体から、間一髪、修復中の本来の身体に移してくれた上に損傷部分を補ってくれた。
つまり、脳の半分はさっちゃんさんと同化してしまっている。 俺の記憶や知識も共有したため、セキュリティの問題点が浮き彫りになり今回の対策に繋がった。 でも、そのおかげで神ちゃんとリアちゃんの危機を救えたので良しとしよう。
「しっかし、『管理者権限』まで使えるのはびっくりだったよ、流石さっちゃんさんだね!」
(え? ああ、ソウダネ~)
「豚野郎……なの?」
「だから俺の名前はブタ野郎じゃねぇって、何度言え……ば?」
「ひぃ!」
不意な呼びかけに、べーやんへの突っ込みのようについ怒鳴ってしまった。 リアちゃんが酷く怯えている、まずいい!
「ああ、ごめん! 怒ってるわけじゃないから! ごめんして!」
ジャンピング土下座で全身全霊の謝罪を行って、何とか落ち着いてくれたが、リアちゃんのあられもない格好に、つい前かがみになったらひどく睨まれジャケットを奪われた。 それでも煽情的な姿に鼻の下を伸ばしたらシャツ迄奪われ上半身は裸になった。 それでも剥き出しの太ももが眩しいが、バレたら下も剥ぎ取られそうなので眼を逸らしておく。
「あの、その、助けてくれてありがとう。 あんたがいなきゃお姉ちゃんは殺されてた……本当に……ありがとう!」
「おほう! ききき、気にしないでいいよ、です!」
リアちゃんは眼にいっぱい涙を浮かべ俺に抱き着く。 自分も危なかったってのに、神ちゃんの心配とは実にリアちゃんらしい。 初対面でこそ暴力脳筋ゴリラメイドではあったが、こう、しおらしい姿を見ると実にエロ……美少女なんだよなぁ。 ま、まずい! トリスさんにリアちゃんを紹介された際の金色の奇跡を思い出し、俺のエクスカリバーが発動承認されそうになる!
「ぐぎぎぎぎぎぎ」
自らの尻を全力でつねり上げ、発動のキャンセルには成功した……が。
(豚くん! ちょっとまずいことになった!)
「え、どうしたのさっちゃんさん?」
「え? 誰と喋って……」
さっちゃんさんの声はリアちゃんには聞こえていないが、そのさっちゃんさんが慌てた様子で警告を発した瞬間、『審判の間』の警報が再び鳴りだした!
<<警告・間もなくコクーンの全機能が停止します。 関係者は速やかに避難してください>>
「なんだってー!!」
「次回予告」
ああ、復活したよ主人公!
間が空き過ぎて、都市伝説になったかと思ったZE☆
脳内ボイスとか、もうビヨーキじゃん?
モヒカンのケツは大爆発だ! 何かに目覚めたり? ……はしないNE!
一難去って、また一難は物語のジョーシキだよNE!
卵がまた落ちる? それって全滅フラグじゃん?
次回! 第12話『復讐』に、レッツ、異世界ドライブ!
※諸事情により、番組内容とタイトルが変更になる恐れがあります。ご了承ください。
ほぼ3年ぶりの更新です。 他のシリーズや別ジャンルで拡げた風呂敷がまとめられずに偏ってるうちに、仕事が変わったりして絞れなかったのが敗因(;^_^A
久々にまとまった休みが取れたので停滞していた連載モノを各1話ずつ更新できたのは僥倖。