【番外編】「神様がいなくなった日曜日」その7
仕事が立て込んで更新速度激減してます( ;∀;)
【番外編】「神様がいなくなった日曜日」その7
―神の眼は全てを見通す―
■トリス視点
-日曜日 午前 0:40-
『神職専用の通信室』
「せ、先代が亡くなられた?」
(はい、正確には”転生を行い、もうここにはいない”という事になりますが)
「そ、そんな……」
最後の希望が目の前で打砕かれ、俺は膝を突き、呆然となる。
(先程から聞こえる警報……それに、現・神職のロイド様以外の方が、この回線を使用すると言う事は、”災害級の問題が発生した”と推察します。であれば、先代より、言伝を言いつかっております。)
「言伝? そ、それは一体? とにかくお願いします! ロイドたちが危ないんです!」
俺は、逸る気持ちを抑えきれずに、無礼を承知で答えを求めた。
(……最悪の場合、”『エデン』から『コクーン』を切り放せ”と……)
「ま、待ってくれ、それって……」
『エデン』とは、この世界の事を指す。 そして『コクーン』とは、神職に近しい一部の者にしか伝えられていないが……。
(『審判の間』をこの世界から切り離し、管理する異世界へと落とす……。 先々代の時代に、特異点によって『審判の間』が管理者と共に支配された時、施行されたと聞いております)
「特異点? 支配?」
神職の選定で選ばれなかった俺では知る由もないだろう。 ”特異点”にしても、マニュアルには詳細は記載されておらず”何かヤバイ現象”程度の認識だ。
「で、では、こちらからアクセスできない『審判の間』から、管理者の神職を脱出させる方法があるんですね!」
先々代が、今の状況と同じ様になっていた事には驚きだが、ロイドたちを助け出せることが出来るなら、 もう、これにすがるしか……だが。
(いえ、特異点と共に、先々代は『審判の間』と運命を共にしました……)
「そん……な」
(特異点を外に出さないためには、それしかありません。 切り離すのには……)
………
……
…
-日曜日 午前 0:50-
『施設部・制御室』
どうやってここに戻ってきたのかは覚えていないが、俺は『施設部・制御室』にいた。
「施設長! どうしたんですか? 顔色が悪いですよ?」
「リゼか……、いや、大丈夫だ……」
「今、内部のバイタルサイン特定できました……おい、嘘だろ?」
何だ? 何があった……。 ダメだ、考えが纏まらない……。
「ちょっと見せて! ……そんな、ちょっと! どうなってるの?」
「分からない、管理者権限が……複数発動してる。 それも2つじゃない!」
「大変です! リコちゃんのバイタルサインが……」
リコ……、そうだ!
「何だ! 何があった! 状況を説明しろ!」
我に返った俺は、モニターを見直しながら叫んだ!
「反応が6つ? どういう事だこれは!」
「管理者反応の2つ、ゲストの反応1つ……他の正体不明の2つ……後、”生島礼二”と表示されている少年1人が、それぞれ管理者権限に干渉してます!」
「そんな馬鹿な事……まさか?」
先々代を襲ったという特異点……信じたくはないが、特異点が現れたってのか!
「施設長! リコちゃんのバイタルサインが危険域に! これは……攻撃を受けています!」
「なんだって? おい! どうにか出来ねぇのか!」
「反応を追うだけで精一杯です! くっ、どうなってんだ!」
攻撃だと? リコは俺やロイドたちとは違う、戦闘訓練も受けた事のない一般人だ。 なのに!
「施設長……リコちゃんのバイタルサイン……消滅……しました……」
リゼが口元を抑え、嗚咽しながら報告する。
「そんな……そんな馬鹿な事があって……ん?」
俺は、モニターの違和感に気付いた。
「おい、リコを襲っていた奴の反応はどうした?」
「え? あ、正体不明も1つ、反応が同時に消えています」
「リコが”相打ちで倒した”なんて考えられねぇ、ただ”見えなくなっている”だけだ!」
理由はよくわからねぇ、わからねぇが、リコはまだ生きている! ロイドたちが何とかしたんだろう。ただ、”敵も一緒”って事が不安材料ではある。
リコは、どっからどう見てもただの一般人だ。 侵入者がわざわざ戦力を裂いて迄……?
「……人質か、なら、殺しはしねぇ筈だ! 管理者2人に集中し……」
パッカーン!
指示を出す俺の後頭部に何かが投げつけられた。
「いてぇ!……って、ハイヒール? リゼ、何しやがん……だ?」
側に立っているリゼが、凄い勢いで首を横に振っている……靴も両方履いている?
「一体誰……げ?」
パッカーン!
振り向いた俺の顔面に2足目のハイヒールが直撃した。
「アホかぁぁぁ!! 人質の救出が最優先でしょうが! ああ? ロイドとアリスは自力でなんとかするだろうけど、あの子はそうはいかないんだ! この、脳筋もみあげ!」
「お、お前どうしてここへ? それに……リア?」
「エリナさん?」
「先輩?」
「施設長……いや、前・施設長ぉ?」
「姉御?」
リアをおぶったエリナが、肩で息をしながらそこにいた……。
「……リコが人質にされたら、そこでロイド達は詰んじまうだろ! だったら……くっ」
よろめいたエリナをリゼが支え、寝てしまっているリアを受け取った。
「エリナ先輩! そんな躰で無茶しないでください! それに、この子は? まさか、リアちゃん?」
「ああ、泣きながらここへ向かっていたのを拾ったけど、リアのことを知っていたスタッフが多くてね、おかげでここまですんなり通れたよ。 何か問題あっても、うちの旦那が責任取ってくれるさ」
「おま、……いや、身体は……」
持病の為、前施設長の座を退き、家で療養していた筈のエリナが……リアをおぶって走ってきたのか? なんて無茶な事を……。
「そんな事よりも、今は一刻を争うんでしょ? リゼ、状況を手短に教えて!」
「は、はい!」
リゼが簡潔に状況を伝えるが、いくら俺よりエリナの方が場慣れしているからって、こっちからアクセスが制限されているんじゃ……。
「……特異点、まさか私の世代で現れるなんてね……やり口は前と一緒か」
「を、をい? 何か知ってるのか?」
「あんた! マスターキーを出しな! 私がなんとかする!」
「待て待て待て! 何とかするって、それに施設長は俺だ! 手段があるなら、俺が代わりに……へぶ!?」
俺が言い終える前に、エリナの拳が俺の顔面に撃ち込まれ、胸元から施設部の機能の全てを司るマスターキーをもぎ取られた。
「先輩、施設部内、全ての機能を開放する準備は出来ました! でも一体どうするんですか?」
部下たちは慣れたモノで、エリナが何かをする前に準備を整えていた様だ。ったく、大したもんだ。
「『神の眼』を起動する! 時間がない、30秒で使えるように! それと、『審判の間』への動力エネルギーをいつでもシャットダウンできるようにしておいて!」
「そ、それって……」
「あんな……封印された機能を使うなんて危険ですよ!」
「『審判の間』のシャットダウンなんて……そんなことしたら!」
「『神の眼』……」
エリナがマスターキーを使用し、制御室の床の一部が展開する。エリナは躊躇せずにその中に身を投じた。
「話には聞いていたが、これが『神の眼』なのか……」
エデンの何処であろうとも見通すことが出来、力を行使できると言われている。 施設長の俺にすら詳細は伝えられてはいないが、何年か前に技師が悪用しようとしたとかで封印されたはずだ。
(私が合図をしたら、『審判の間』への動力エネルギーをシャットダウン、『審判の間』が自前のエネルギーで再起動する直前に、動力エネルギーの供給を再開と同時に『神の眼』と同調させて!)
スピーカーを通して、エリナの声が響く。 確かにそれなら内部にアクセスは可能だろう、だが、ロイド達も一瞬、無防備になる可能性がある……。
「先輩……」
(タイミングが勝負、チャンスは一回だけ、みんな!頼んだよ!)
「「「「はい!」」」」
(トリス……大丈夫だと思いたいけど、医療班をお願い)
「お、おう、任せておけ! それと、お前は大丈夫なんだろうな?」
(……当たり前でしょ? 自分の嫁さんを信じなよ、みんなで豚丼パーティーするんでしょ?)
「あ、ああ……そうだったな……」
リコの奴、やっぱり話していたのか。 根っからのお人好しな少女の顔が浮かんでは消えていく。
(シャットダウン開始!)
ガギュゥゥゥゥンンンン……
エリナの合図と同時に作戦が開始され、『審判の間』へのシャットダウンが施行された。
「『審判の間』再起動迄、後10秒!」
モニターに映し出されたカウントダウンが開始され、緊張が走る。
「……5・4・3……エネルギー再供給開始!」
(『神の眼』起動!)
一発勝負の作戦が開始された……。
………
……
…
かなり間が開いてしまいました、申し訳ない。コロナの影響で仕事がてんやわんやで落ち着くまでは週一も難しいです( ;∀;)
むしろ、文を短くしよとすると逆に長くなって自己嫌悪がじわじわときます。
何とか後、3話以内に纏めたいです。
スマホがついにお亡くなりになりました。Newスマホだと、執筆中にフリーズしたり「保存」押したらフリーズ>シャットダウンと心が折れそう。