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【番外編】「神様がいなくなった日曜日」その6

執筆するのも躊躇いがちになる、エピソードです。それを踏まえた上でご覧ください。


【番外編】「神様がいなくなった日曜日」その6



■アリス視点■


-日曜日 午前 0:33-


『審判の間・魂の書庫』


たくっ、冗談じゃないっての、ひ弱で可憐な私に肉弾戦をやらせようなんて、さっ!!


ガゴォォン!


アイアン・マ……歪なゴーレムのどてっぱらに拳を叩き込み、怯ませる。ちょっち硬いなー。


「ぐぁ! このババぁ!」


私は『管理者権限』を”身体能力強化”と特殊なガントレットとブーツを装備する”部分装備”に割り当てた。『管理者権限』は、本来一人が使うモノで複数で同時に使うなどまずあり得ない。私とロイドでも大きな能力を使う際は被らないように注意している。


「……なのに、こいつ迄『管理者権限』を使ってきたら意味ないじぁないのさ! ふん!」


ガイィィン!


歪なゴーレムのパンチをいなし、最小限の挙動でダメージを入れていく。

複数個所で同時に使っていたら、ロイドが敵に襲われている場合、上手く発動させられない恐れがある。こいつを倒すか、ロイドと合流するまでは……。


「をっと!」


ゴガァァァン!


侵入者の少年は、造り出したゴーレムで滅茶苦茶に突っ込んでくる。私と違って格闘技の経験はなさそうで動きは読みやすいが、一撃喰らうだけでお終いだ。


「くっ! ちょこまかと! いい加減、潰されちゃいなよぉぉぉ!!」


ブォン!


ゴーレムの腕が、私の頭上を掠めていく。


「んぅ、このままじゃ、ジリ貧ね……ん? なに、これ?」


『審判の間』のシステムと視界を同調させたままだったのだが、少年の識別表示が「正体不明(アンノウン)」から「生島礼二(いくしまれいじ)」に書き換わった。


「グッジョブよ、ロイド!」


愛する夫への感謝を口にし、次の手を打つ。狙いは視界内から隠された3冊の黒い本、そう、5人の訪問者の本の内の3冊だ。『審判の間』で受肉したからには、より正確な、魂の情報が『魂の書庫(ココ)』に顕現している。名前まで分かれば、こっちのモンだ!


「管理者権限発動! 『魂の書庫』内における”生島礼二”の行動を禁ずる!」


「何ぃ? 何でボクの名前を?」


ジャラララララララララ!!! ガシィィィィン!!!


無数の鎖が現れ、彼に絡みつき足を、行動を封じる。


「こ、こんな鎖! 疑似……」


「”生島礼二”を”敵意を持つ侵入者”と断定! その発言を禁ずる!」


彼は、地面に縫い付けられ、管理者権限を使おうとするが、そんなを許す程、私は人間……、いや、神様出来ちゃぁいない! 畳みかけるように、言葉をも禁じた。


「!!!ー、!!!」


「はぁ? 聞こえん……、じゃなかった、聞こえないわよー? えいえい!」


ドガ!……グリグリ……


「!!!!」


どうやら、彼の”なんちゃって管理者権限”は発音しないと使えないようだ。この私の美しい脚で、顔を念入りに踏みにじる。彼の攻撃のおかげで、手間暇かけてセットした髪型が台無しだ。ちょっとは反省して貰いたいものである。


「!!……!!」


彼の側に落ちている黒い本を拾い、パラパラと捲ってみる。 当然グリグリ攻撃は続行中だ。


「ホンっとに、度し難い真正のサイコ野郎だわー、ひくわー」


「!!!!」


余りにも酷い情報に、目を覆いたくなる。こんなん野放しには出来ないし、何よりも、私たちの管理する異世界へ転生なんてさせたくない。


「コレさえ押さえちゃえば……さぁて、どう料理してくれようかしらねこんちくしょう!……え? ちょっと、どうなってんの?」


残りの2冊も探そうと『魂の書庫』のなかをサーチしていたら、外へ逃げた筈のリコの反応がある事に気付く。


「あの子ったら、何で戻ってきてんの?」


(……リス! ザザッ……ろ! 一人…ザッ…行った ザザッ……リコが…ザッ…ない!)


(ちょっと! ロイド! リコがどうしたってぇのよ! ロイド!)


一瞬、ロイドからの念話が通ったが、直ぐに切れた……。本は3冊、後2人いる。交戦中らしいロイドの言葉……。


「まさか、一人がリコに?」


ガコォォン……ガガガガ……


リコの逃げた方へ向かおうとした途端、書庫内の本棚が不規則に動き出す。まさか、まだ動けるのかと彼を見たが、鎖に拘束されたままだ。


「ちぃ、もう一人も”なんちゃって管理者権限”を使って、リコを?」


私は残りの本の追跡を諦め、彼をその場に拘束したまま、リコの反応に向けて走り出すが……。


ゴガガガガ……


本棚が私の行く手を阻み、徐々にリコの反応が見えなくなる……。 


「邪魔するなってぇ、のぉ!!」


ドガァァァァン!!!


道を塞ぐ本棚を強引に排除(ぶち壊し)し先へ進む。管理者としては問題のある行動だが、娘が危ないんだ!(かまうもんか!)


「リコ、今行くから、無事でいなさいよ!」


………


……



■リコ視点■


-日曜日 午前 0:37-


『審判の間・魂の書庫』


痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!


「い、痛い……けど、立ち止まっちゃ……あぐぅ!」


私の右の太ももには、大きなナイフが突き刺さっている。呼吸をする度、いや、そうで無くても、耐え難い激痛が襲ってくる。階段で転んだ時よりも、タンスの角に足の小指をぶつけた時よりも比べ物にならない激痛だ。


「もーいーかーい? ”まーだだよー”ッて言っても、無視して行っちゃうけどねー? キャハハハハ♪」


本棚に寄りかかる様に、よたよたと逃げているが、私にナイフを突き立てた彼女は、一定の距離を開けて追いかけて来る。


「ほらほらほらぁ、速く逃げないとぉ、もう一本刺しちゃうよぉ~♪」


追跡する彼女は実に楽しげだ、まるで猫が鼠をいたぶる様に、心底楽しんでいる様に見える表情をしている。 


「い、いやぁ……助けて……誰か……ママ、パパ……」


おかしい……。 激痛で泣き出したい中、冷静な部分の私が違和感を訴える。


「うっ! どう……して?」


私はお世辞にも”人並みに”とは言えないほど、どんくさい(と思います)。 それなのに何故、彼女は私をあの場で殺さなかったのだろう?


「っ……獲物を、いたぶる為? 違う、それなら逃げられない様にするはず……」


映像機で見る物語(ドラマ)でこういう展開が……。あ、まさか!


「う、くぅ……これは罠です……」


彼女が、私を傷付けて逃がす理由……。私が逃げようとする場所、そこにいる人物を誘き出すため……。


「ママが……狙い……?」


「ぴんぽぉぉん♪ 正解でぇす♪」


ザシュ!


私の足が止まった瞬間、耳元で声が聞こえ、背中に衝撃が走った。


「うぁ!!」


背中を斬りつけられ、私は床に倒れ込んだ。


「ばれちゃったかぁ♪ 道案内させて、もう一人の神様と一緒に活け造りにするつもりだったのおにさぁ♪」


「……う、うぐぅ……」


私は、自分の右腕に噛みつき、悲鳴をかみ殺す。 ダメ、声を上げたらママが……。


「ふぅん? ぴーぴー泣き喚いて親鳥を呼んでくれると思ったんだけど?」


ダン!


「……!! んぐっ……んむぅぅ……!!」


彼女は、激痛に耐える私の左腕を足で踏みつけ、ナイフを私の左手に突き立てた。声を上げない様に顎に力がさらに加わり、口の中に血の味が広がっていく。


「へぇ、頑張るじゃない? いいねぇ、お嬢ちゃんが音を上げるのと、あたしがイっちゃう(絶頂)のどっちが先かなぁ? きゃはははは!!」


ガン!ガン!ガン!


彼女は、私の左手に突き立てられたナイフを、何度も踏みつけている。


「---!!! むぐっ!!!!!」


………


……



「ぜぇ、ぜぇ、なんてコ……。 普通なら色々なモン漏らしまくって命乞いするモンだけどさぁ……」


ふーっ! ふーっ! ぐぅぅ……


私は仰向けにされ、足に刺さっていたナイフも上から踏みつけられ、床に縫い付けられていた。意識を失いそうになっても、傷口を抉る様にされ、無理矢理覚醒させられている。


ガシィ!


「かはっ! いっ……ぎぃ!」


彼女が、私の右腕を強く蹴り、口から離させ、再び咥えられない様、手を掴まれている。


「お嬢ちゃんさぁ、いい加減、ゲロっちゃいなよ。さぁ、命乞いでも、助けを呼ぶでもサァ♪」


「はぁー……、はぁー……」


「ん~? なんだって?」


彼女が、息絶え絶えの私の呟きに耳を傾けた時、私は無意識に……全てを込めて叫んだ!


「お願い! 『魂の書庫』! 私の居場所をママに、分からない様にして! 私と彼女をここに閉じ込めて!!」


「な? ちょ! バカ!」


ガゴン! ゴガガガガガ!!


私の叫びに呼応するように、書庫内の本棚が不規則に動き始めて、私たちを囲んでいく。 良かった『魂の書庫』が私の願いに応えてくれたようです……。


「やめなさいよ! この! やめろって言ってんだろうがぁぁ!!」


彼女が狂ったように、私の頭や胸を蹴りつける。 これでいいんです……このままここで……。


「ごふ! かはっ……うぁ……」


あれ? 何か大事な約束があったような……頭がぼーっとしてきました……。おや? 小さな女の子が泣いている……あの子は誰? ほらほら、泣かないでください。 一体どうしたんですかぁ?


「!!!、!!!」


誰かが、何かを叫んでいます……。だめですよぉ? ここでは静かに……。


………


……




■侵入者の少女視点■


-日曜日 午前 0:45-


ダン!


「ちっくしょう! このクソ本棚!」


やられた……完全に閉じ込められた。 あの小便臭いお嬢ちゃんが、まさか、ここまでするとは思わなかった。 命乞いや、もう一人の神様に助けを求めるどころか、あたし諸共ここに閉じ込めやがった!


「天井も見えないし、あたしの力じゃ破壊も出来ない……ちっ!」


不意を突いて先手を取るつもりが、このままでは包囲されてから捕まるのが目に見えている。 方法は一つ、そうなる前に、この檻を開けさせるしかない!


「お嬢ちゃん、この邪魔くさい本棚どけてくんないかな? あたし本とか嫌いなんだよね!」


標本の虫の様に、床に縫い付けられ気を失っているお嬢ちゃんの胸を踏みつける。


「あぐぅ! はぁ……うぁ……? うぶ!」


意識が戻ったのを確認し、苦痛に顔を歪ませるお嬢ちゃんのお腹に乱暴に跨る。


「お嬢ちゃん、痛いだろ? ここから出してくれたら、お嬢ちゃんだけは逃がしてあげたっていいんだよ♪」


現実世界(リアル)では、散々こうやって、希望を持たせてからおなかを斬り裂いて、絶望に叩き落とし、命乞いと悲鳴を聞きながら絶頂する(イク)のが、あたしの楽しみなのだが、今回はあたしの命がかかっているから、本当に逃がしてやってもいいと思ったのだが……。コイツは!


「いや、です……もう、逃げられません……」


「ぐっ!……この!」


ビィィィ……


お嬢ちゃんの服をナイフで斬り裂き、胸とお腹を露出させる。


「誰にも汚されていない様な、白くてキレイな肌だね? ……うらやましいね……でもさ!」


ズン!


「ぎぃ! うぁ!!」


急所をワザと外し、白いお腹にナイフを突き立てる。 殺しはしない、実験と練習はいっぱいやったから、死なない様に殺す(いたぶる)のは得意だ。あたしにかかれば、どんな屈強な男だろうとすぐおしゃべりになる。


「ほらぁ、痛いでしょう? ここも! ここも! ここだって!」


ズン! ズド! ザシュ! 


連続でナイフをお嬢ちゃんのお腹や胸に突き立てる。男が女を【ダキューン】するてこんな感覚なのだろうか? 誰の足跡もついてない初雪を踏みにじっていくような感覚、頭の芯から痺れていくような快楽に我を忘れそうになる。いけないいけない、楽しんでちゃぁいけない。


「……うっ!……ぐ……うぐぅ!」


「ちょっと、嘘でしょ? 正気?」


お嬢ちゃんは、血だらけになった右腕に再び噛み付いて、声を殺している……。 何でそこまでして!


「っざけンな! 自分が殺されそうなのに! 何で親なんか庇うのさ! 自分の命の方が大事でしょ!」


お嬢ちゃんの右腕を、無理矢理口から外し、文句を言ったが……。


「ころ……してください、ママが……危険になる……くらいなら……ころして……くださ……」


こいつバカなの? 親にとって、子供は道具でしょ? そんな親を助けるために、何で命が捨てられる?


「ころして……ください……」


「だまれ! だまれ!だまれ! だまれぇぇ!!!」


ザン! ズド!…………


「はぁ、はぁ、はぁ、はっ!?」


言い知れない恐怖に、お嬢ちゃんのお腹や胸を、めった刺しにしていた。 マズい、殺してしまっては元も子もない。


「ちょっと! まだ死なないでよ! あたしを開放してから死になさいよ!」


鮮血に白い肌が塗りつぶされ、息も絶え絶えになってるお嬢ちゃんを抱き起こす。


「ママが……いなく……なった……ら……妹が……悲しみ……ます……だから……」


「……ちっ!」


もう痛みも感じていないのだろう、視線も虚ろで、うわ言の様に”ころして”と連呼している。これでは何を言ったところで脱出は不可能だろう。


「昔の、親を信じてた頃のあたしみたいで、凄くムカつくんだよ!」


もう一人の神様と、鉢合わせするのは間違いないだろう。その時までに、このお嬢ちゃんが死んでれば一発で消されそうだし、よしんば生きていたとして人質にしても、この出血だから途中で死ぬ可能は高い。


「となると、まっとうな母親が見た時に、我を忘れる位の状態で、殺しておくかナ?」


そう、逃げられないとなった時、追い詰めた方は勝利を確信している。それが警察だったり攫った子供(おもちゃ)の親だったりで反応は様々だ。、今回は親が一人で乗り込んでくるパターンではあるが、警察より厄介だ。


「手足をバラバラにして飾り付けをするのは、時間もないし、部屋とかじゃないと……。 うん、母親なら……あれかナ?」


あたしは、お嬢ちゃんに刺さっていたナイフを回収し、腰に装着していた、大きく長いナイフ(ダガー)を取り出す。コイツには何度も命を救われ、あたしを商売道具としていた豚ども(両親)を始末した、信頼できる相棒だ。


「お嬢ちゃんに恨みはないけど、特別にコイツで、女として最大限に屈辱的な殺し方をしてあげる♪」


少なくとも、まっとうな母親ならば、気を失うか、怒り狂って冷静では無くなるはずだ。 その隙を突けば、この絶体絶命の窮地から逆転できるはず。


「目測を誤ったら、即消し炭って所かナ?」


意識のほとんどない、お嬢ちゃんの足を開かせ、その間にダガーを宛がう。


「ごめんねぇ、その様子だとネンネちゃんポイし、コイツが初めての相手になっちゃうねぇ♪」


あたしを馬鹿にした、クラスメイト(うざいやつら)は大抵遊んでいたけど、コレでキメよう(ぶっすり)とすると、うぶなネンネの様に、いやいやをするんだよねー。 破瓜よりも何倍も痛いだろうし、確実に死んじゃうからねぇ。


「まぁ、今のお嬢ちゃんなら、死んだ事にも気づけないかもだから、安心しなよ♪」


ホントは、もうちょっと遊んでから止めを刺したかった(こわしてやりたかった)んだけどネ……。


「それじゃぁ、バイバイ♪」


あたしは、二度刺しをしない様に慎重に角度を確認し、ダガーを持つ手に力を込めた。


………


……
















大変遅くなりました。神ちゃんの身体に残された傷痕の原因回です。

書いててSAN値がゴリゴリ削れていく感じでした。

確定申告の作業における「現実逃避のパワー」を使って書き上げたのは良いですが心が痛い。

次回こそ終わらせるつもりですが、最後まで読んで頂ければ幸いです。



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