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第1話「とても遅れてきた男」

連続投稿、平日はペースが落ちますがよければ読んでやってください。

【第1話】


『とても遅れてきた男』



<とは言われましても……>



異世界物でおなじみ「システムさん」は困ったように言う。


「何故だ!?異世界へ転生する前の要望や特殊ステータス、チートスキル等の大まかな

 設定を決めるお楽しみタイムだろ?何故に出来ないホワイ?」


<かつてはそういう事もあったそうですが、今はいろいろ事情が変わりまして……>


「スライムになったり骸骨の戦士or大魔導士だったり……

 ここで決められても心の準備は出来ていたというのに!がっかりだよ!ぺっ!」


<ともかくですね、私では対応できかねますので……担当の者に……>


やさぐれる俺にシステムさんはテンプレ気味に逃げ腰だ……

せっかくの異世界転生(※決まったわけではない)……

チュートリアルで躓くとは予想外だった……


「せっかくの俺の異世界デビューに水を差すとは、運営もたるんでるな……

 運営があるのかどうかはあえて考えないが……」


<……あーはい、それではそのように……はい、すぐに……>


システムさんが誰かと対話しているようだ……客を待たせるとは益々使えないな(※客ではない)


「まぁ、この状態だと真っ白か真っ暗な部屋か空間で神様と対面し、

 謝罪とかチート能力付与とか奇麗な女神さまからチートアイテム授与とかがあるはずだ……

 俺の長年の研究でそう答えは出ている……」(※個人的見解です)


<大変お待たせいたしました、すぐに担当の者……>


「ち、やっとかよ、担当の者が来るのか転移するのか知らんがさっさとしてくれ!

 俺の予定では、すでにチートスキルやその他の設定を終えて……

 今頃は火属性で赤い髪のツンデレ美少女とラッキースケベフラグを回収しているはずだったんだ!

 予定が狂ってイベントCG回収できなかったら訴えるからな!」(※個人的見解です)


<……のいる部署へ直送します……良い旅を……>


「は?直送って?」


言うのと同時に足元にぽっかりと穴が開いた……直径10m程の回避不能な穴が……


「のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


<やっといなくなったか……やれやれ、今更異世界転生とか言われてもねぇ……


 遅過ぎるというか……何というか……まぁ私には関係ないことですね……>



謎の空間に静寂が戻る……




………………………………………………



………………………………



………………




「……のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……どかん!……べん!……ゴロゴロ……ぶべら!」


曲がりくねった落とし穴から放り出され転がりながら壁に顔面から激突しようやく止まった……


「痛ぇ!超痛てぇ!、鼻が!異世界の美少女を虜にする俺の整った鼻が!……ここは?」


予想通り真っ白い空間だ……壁・天井・床、全てが白い……


「ちっ……」


ん?誰かいる?……振り向くと立派な事務机が視界に入る、

その横にはメイド服を着た美しい少女が立っていた…………

年は15~17位だろうか、肌は白く金髪ショートで華奢な体つきながら

肩が大きく開いた漆黒のメイド服に隠されたふたつの胸の膨らみは何でもできる証拠とばかり

しっかりと自己主張している……ぐらっちぇぐらっちぇ!

スカートも短目!膝上20センチ!わかってるぅ!

うん、実に俺好みの美少女メイドだ……ナイス異世界!


異世界美少女メイドは、にこにことエンジェルスマイルで姿勢正しく控えている。


「いい……これぞ異世界!ここから俺のハッピー異世界生活が始まるんだZE!!」

 俺は感激に拳を突き上げ叫ぶ!


「ちっ……」


ん?何か聞こえたが……俺とメイドっ娘以外に人の姿は見えない……

事務机の上には様々な資料が広げられており、机の主は今はいないようだった……


「こほん、あーあー出迎えご苦労、

 俺はこの度、異世界転生した最強の転生者、「伊勢海助いせ・かいすけ」という、

 いずれ異世界転生王となる男だ……」


考え抜いたカッコイイポーズを決めて自己紹介、

これでメイドっ娘も俺にメロメロ(※死語である)


「ちっ……」


また何か……?メイドっ娘は先ほどと変わらず天使の笑顔のままだ……


「なぁ、メイドちゃん……ここの担当の人ってどこに行ったんだ?

 トイレ?ランチ?それともサボり?」


俺は辺りをきょろきょろと見まわしながらメイドっ娘の肩をポンと叩いた……

その時……


「……ん……な……」


ん?何だ?何か呟きながら俯いたぞ?そうか、照れているのか、うぶな奴だな……

俺はキリリとした顔でメイドっ娘の顎を指先でくいっとしゃくり上げ……


「ふ……緊張しているのかい?目をキュッと閉じちゃって、可愛いね……

 でも、俺はこれから沢山の異世界美女に囲まれる予定だ……君さえよければその……」


”ゴギン!”


鈍い異音がした……あれ?メイドっ娘の顎をしゃくり上げていた俺の右手首が、

メイドっ娘に握られ曲がっちゃいけない方向に曲がっていた……え?


「え?あ?うぇぇぇl!!!手ぇ!俺の手ぇぇぇぇぇぇ!!」


「触んなって言ったよなぁ?……異世界転生王?はぁ?……

 異世界美女沢山だぁ?脳みそ沸いてんのかこのボゲェ!!!」


そこには鬼がいた……双子の鬼のメイド姉妹なんて尊いモノじゃない……

手首の痛みが薄れるくらいの殺気をぶつけてくるマジな鬼のメイドっ娘が……


「え?ひゃ……?手……俺……手が……え?何で?天使は?……」


「誰が天使じゃぁぁぁぁぁいい!!!」


”ぶぅん!!!!ズザザザザザ!!!ドカン!”


俺は片手でぶん投げられ壁まで吹っ飛ばされた……こ、殺される!?



「たす……助け……た……たす……」


メイドっ娘……いや鬼メイドが暴走した汎用人型決戦兵器の様に迫ってくる……

逃げようと壁伝いに立ち上がろうとするが足がガクガクと震えて上手く立てない


「……異世界……転生?」


じり……


「……チートだスキルだアイテムだぁ……?」


じり……


「……無双でハーレムでウハウハだぁ?」


じり……


「……ざっっっけんなぁぁぁぁぁ!!!!!」


何とか立ち上がった俺の頭めがけて一足飛びで鬼メイドの拳が迫る……


”ドコォォォォォォン!!!!……パラパラ……”


間一髪だった……腰を抜かした俺はへたり込んだが、

俺の頭のあった場所に鬼メイドの右拳が突き刺さる……


「避けてんじゃねぇ!こんの……うすらトンカチがぁぁぁ!!」


”ガゴン!……ガラガラ……”


拳を引き抜き、俺を見下ろす天使の笑顔など欠片もない鬼メイド……

俺はここで死ぬのか……何も為さぬまま……何にもなれないまま……

俺が知ってる限り……異世界転生物で死んだ後の導入部分で殺されるなんて……


そんな理不尽な事があって……はい、今目の前に展開されています……

異世界王になる処か冒険に出る前に「わりい、俺死んだ」になってしまうとは……


「おい、今更……異世界転生だと?ブームは過ぎ去ったんだよ……

 ラッシュもバブルも弾け飛んでんだよ!空気読めよ!」


「そ、そんなこと……言ったって……だって……ひっく……」


涙と鼻水どころか穴という穴から出すものすべて出しちゃってる気がする……

某Q的な第3の少年の気持ちを今理解した……説明を切に求む……

俺は怯えながらも身も蓋もないことを言う鬼メイドに言葉を絞り出すが……


「言い訳すんなぁ!!」


”ドコォ!!”


「ひぃぃ!!」


鬼メイドが右足を上げ、俺の顔のすぐ横に蹴りを入れ壁を砕く……

足で壁バンされている状態だ……恐る恐る目を開け……そして俺は見てしまった……

気づかなければよかったのに……気づいてしまったのだ……


「く……黒の……」


「あぁ?なんだって?」


「黒の……レース……少し……透けて……」


「ん?………………!!!!……!?」


鬼メイドの視線が俺の視線の先を追い自らの足の付け根へと……

みるみるうちに怒りとは違う赤で顔を染め上げた……あ、ちょっと可愛い……


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


”ドッゴォォォォンンン!!”


「げぶ!?」



俺が最後に見た光景は……鬼メイドはゆっくりと右足を壁から引き抜き、

地面に下ろす事なく天を突くように大きく振りかぶった……

露になるスケスケの黒のレース……そして!

ローライズだったと……キシ●ア殿に伝えてくれ、黒は良い物だと……

降臨する天使を崇める様に悟った顔の俺に鬼メイドの踵落としが炸裂した……


終わった……俺の異世界生活(※まだ未遂です)





   『次回予告』



なんと、異世界に突入する前段階でのあってはならない大事件!


「伊勢海助いせ・かいすけ」彼の冒険は……


始まってもいなかったが、ここで終わってしまうのか!?


いったい次回はどうなるのか?死んだよね?あれ絶対死んだよね?


頭ぐちゃーってスプラッタだよね?、


でも、メイド服に黒のレースでスケスケのローライズだなんて……ダ・イ・タ・ン♪


これって勝負下着ってやつ?やだー!



次回!第2話『まるで豚を見るような目で』にレッツ異世界ドライブ!


※諸事情により番組内容とタイトルが変更になる恐れがありますご了承ください。

黒か白かで迷いましたが結局黒に…反論は受け付けます(をい)

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