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【番外編】「神様がいなくなった日曜日」その4


【番外編】「神様がいなくなった日曜日」その4





-日曜日 午前 0:25-


『審判の間・魂の書庫』


■アリス視点■


ヒュィィィィィィィィィィィ!!!


「まさか、こんな所で喧嘩を吹っ掛けられるとはね……」


異常事態に「審判の間」が警告音を発し続けている。


「……」


目の前に現れた”ソレ”は徐々に形を変え、人の形になっていく。 先制を取りたいところだが、今はリコの安全が最優先だ、魂の書庫の外がどうなっているのか分からない以上、下手に手は打てなかった。


「おやおやぁ? ”侵入者のみを迎撃する機能”は使われないようですね?」


「……あなたは誰?」


どういう事? 何で侵入者がその存在を知っているわけ? 私は出来るだけ平静を装いつつも内心に焦りが生まれていた。


「私? 私の名前ですか? ふむ? これから死んでしまう方に、名乗るのもどうかと思うのですが?」


影の様に染み出した”ソレ”は、私の目の前で10代後半の少年へと姿を変えていた。


「できれば名乗ってほしいんだけど? とっ捕まえた後、”少年A”で済ませたくないのよね、ノックもせず、ズカズカとココに入り込んでくる非常識な子供には、ね?」


「……っ!」


おや? 軽いジャブのつもりだったのだが、無礼な侵入者は一瞬だけ感情の揺らぎを見せた。


「……はは、愉快な方だ、神職というからには、慈愛溢れる聖母のような女性かと思っていたのですがね?」


平静を装う様に、眼鏡の中央を指でくいっと上げる”少年A”の彼、この仕草に態度に言動……。

あー、これあれだわ、私の嫌いな、いけ好かない上、嫌味が大好きな委員長タイプだ。


「慈愛? 聖母? キミさぁ、何夢見てんの? そんなに、自分にとって都合のいい女が理想なわけ? それともキミ、マザコン?」


学生時代、似たような雰囲気の奴に言い放った言葉と同じ様なセリフを、”ばちこーん”っとぶつけてみた、当時、学級委員長だった彼は泣いてしまったが、目の前の彼はどうかな? 冷静さを欠いてくれると有難いんだけど……、なにせ、私は彼に気づかれない様に、書庫内の本棚を操作してリコの脱出経路を造っているのだから。


「こ、こここ、のぉ……、だ、誰がマザコンだ! このババぁ!」


ちょろかった……、彼は目を血走らせて、私に殴りかかってきた。


ス……、ガッ! ズッダァァン!


「ぶべ!」


私は軽く身を捻り、すらりと伸びたすべすべの美しい脚(自己評価)を彼の足元に差し出すと、足を引っかけられた彼は、無様に顔から床に突っ込んでいた。


「畜生! ぶっ殺して……」


ズン!


「ぶぎゃぁ! 」


私は、起き上がろうとした彼の背面、腰の上辺りの中央をハイヒールの踵で頭の方へ向かって、抉るように踏みつけた。


「どう? 痛くて動けなくて、呼吸もしにくいでしょう?」


「かは? バ、ババァ! 殺して……ぎゃぁ!」


ぐりぐり


ムカッと来たので、足に力を込めたやった。


「ババァとは失礼ね、私は、こう見えてもまだ18歳よ!」


「な!?」


踏みつけられている彼が、動けないままに驚愕しているのが分かる……、いや、ちょっと、ほんのちょっと盛り過ぎたとは思うけどさぁ、そこまで驚かなくてもいいじゃん! 傷つくなぁ、私そんなに老けてる?


「ママ、18歳だったんですか!? え? じゃぁ、私を産んだのって……」


別の意味で驚くリコの声が聞こえた、あちゃぁ……。


「ハイハイ、リコ! そこは突っ込まずにいてくれると嬉しかったんだけど?」


「え? あ! はい! ママは18歳で、すごく奇麗で、お若いです!」


「あはは、アリガトネ……」


素直というか天然というか、ちょっーと遅く、訂正する(くうきをよんだ)リコにお礼を言った。

そして、足元でブツブツ呟く彼が、何を狙っていたのかに気付くのが遅れてしまった!


「ヒ、ヒヒヒ! それが、”侵入者のみを迎撃する機能”を使わなかった理由だったのか!」


「ちょ! まさか!」


「”疑似”管理者権限発動! 創造機能(クリエイト)行使!」


ズズズズズ……バコン!


彼が、あり得ない言葉を放った瞬間、床が波打つ様に跳ねた! 咄嗟に彼の拘束を解き、距離を取ったため、私の後方にいたリコの姿が丸見えになってしまった。


「くっ! 何で? あなたが管理者権限を?」


「ヒハ! ヒハハハ! びっくりしたかい? 僕が管理者権限(神様のチカラ)を使える事に!」


「ちぃ! どうなってんのよ! これって一体?」


脳内でシステムの動きを可視化した、管理者権限の一部が、彼に”使用許可”を出している? あり得ない、神職の”管理者”でも、管理者から許可を出した”ゲスト”でもないのに何故!?


「ババァ……、いや、神職の補佐? 秘書? でも、娘まで一緒にいるって事は、神様の愛人と隠し子? 愛人だけなら僕諸共にと思ったけど……隠し子迄囲ってるなら、そうかー」


「バカ言ってんじゃないわよ! ロイドと私は正真正銘の夫婦で、リコは可愛い愛娘よ!……あっ!」


「ほほぉう? つまり、貴方達を人質にすれば、ここの神様はこちらの言いなりですね?」


しまったぁ、つい、カッとなって……何とかリコだけでも! 彼は品定めをする様に、私とリコを見ていた、マズい、戦う術を持たないリコが人質に取られたら、私とロイドは何もできない……。


「いいねぇ、怯えるその顔! よぉし!君に決めた!”疑似”管理者権限発動! 創造機能(クリエイト)行使! 鋼鉄の母親(アイアン・ママ)!」


ズゴゴゴゴ……


「しまっ……リコ! 13番の所から外に逃げなさい! 道は作っておいたわ!」


彼は、床から酷いネーミングののゴーレムを作り出し、その肩に乗って、リコの方へ向かわせた、本棚の移動による”逃げ道を作成中”なので、管理者権限による物理的妨害がまだ出来ない、それまではリコに自力で逃げてもらうしか……。


「でも、ママを置いてなんて行けないです!」


彼に睨まれゴーレムが迫る中、足を震わせながら、抱きしめたくなるような可愛いセリフを吐く、我が愛娘……、しかし今はそれどころじゃない!


「バカ! いいから行きなさい! ちょろちょろされると邪魔なのよ!」


「……ママ……、はい、ごめんなさい!」


リコは13番の本棚に向かって走り出した……、ああああああ!焦っていたとはいえ、もうちょっと言い方ってものがぁ! リコ、眼にいっぱい涙溜めてたよ! 後でいっぱい謝らないと、そのためには!


「あらあら、マザコンかと思ったら、あんな幼い子のお尻を追いかけるロリコンだったのね?」


「なん、だと?」


私の挑発に食いついた、リコを追うゴーレムも、一瞬、足を止めた!


「ないわー! 超引くわー! ボン・キュ・ボーンの美女がココにいるって言うのに、まだ毛も生え揃っていない様な小娘に欲情するなんて、とんだむっつり変態エロメガネさんだわー!」


リコ、ゴメン! 挑発とはいえ、酷いこと言っちゃった! 揃っている以前の問題なのは、この間一緒にお風呂した時に分かってるけど……私は心の中で、リコに必死に謝っていた。


「き、キサマ! 今なんて言いやがった!?」


ををう、予想以上の食いつき、いける!


「それとも、ママのおっぱいの方にしか興味ないのかしら? こんなにセクシーな美女に無関心なんて……」


私はくねくねとセクシーポーズをとって挑発を加速させる、ロイドとリコにはとても見せられない、エリナになんて知れたら一生ネタにされる、 こんなことになったのも、このエロメガネの所為だ! このガキだけは記憶が飛ぶまで、ボテくりまわしちゃる!


「僕がマザコンだと? お前も僕をそんな風に言うのか? いいよ、計画なんてどうでもいい!」


私の身体を張った悩殺ポーズが効いたのか、ゴーレムもこちらに向き直り、こちらに向ってくる。 それにしても”計画”ってなにさ?


「お前も、僕のママの様にバラバラにして食ってやるよ!!」


「へ? バラバラ? 食うって?」


訂正しよう、彼はロリコンでも只のマザコンでもない、名状し難い程の、キチ●イな偏食サイコ野郎だった……。


「やだなぁ、”キミを食べちゃいたい!”ってガチの意味で来られるとこんなに鳥肌が立つなんて……」


ゴオオオオ!!


ゴーレムが迫る、リコが無事に外に出るまでは、美味しく頂かれるワケにはいかないが、ロイド以外に、このナイスバディを好きにさせるつもりもない。


「神様を、なめんじゃないわよ!」


………


……



-日曜日 午前 0:40-


『審判の間・魂の書庫、緊急脱出ルート』


■リコ視点■


「はっ、はっ、はっ、は……グスン」


私は全力で、本棚によって造られた脱出通路を走っていたが、体力が続かず本棚に手を突いて足を止めていた。


「はあ、はあ、はあ、はあ、ママ……大丈夫……かな……」


<<バカ! いいから行きなさい! ちょろちょろされると邪魔なのよ!>>


「ひぅ……」


本心じゃないと分かっていても、”邪魔”と言われたことに、ズキンと胸が痛む。私は、パパとママの役に立ちたいだけなのに、足手まといなのです……。


「はあ、はあ……」


ゴゴン……


本棚が道を形成していく、ママが私を逃がそうと頑張っている、管理者権限は、同時に使うにはリスクが高いと聞いたことがある、私がココにいる限りママが危ない目に遭う。


「早く、外に……」


『魂の書庫』は外側から見た『審判の間』の外見よりも広く、見た目通りではない。無限空間らしく、管理者でもなければ迷い死ぬと聞いているから、この通路を造るだけで大変だという事は分かる。


ゴガン……


私が再び走り出し、暫くすると通路が行き止まりになり、扉が見えた!


「はあ、はあ、出口? 早く……パパに知らせないと!」


キィィィ……


私が扉に手をかけるより先に、扉が開き、人影が見えた! パパ! パパが来てくれた!


「パパ! 大変! ママが! ママが危ないの! 早く助けて!」


私は無我夢中で、パパに抱き着き助けを求めた……。


「そう、マダてこずってんの? あのグズは……」


私の頭上からは、パパの声ではない若い女性の声がした。


「パパ……? じゃない!?」


私は、抱き着いていた人物がパパでないことを悟り、慌てて離れて尻もちをついていた。


「ああ、お嬢ちゃんが、グズの言ってた”神様の弱点”ってやつだね?」


扉を開けた入ってきたのは、見たこともないハイカラで露出も多く、皮で出来た素材のような服を着たピンク色に髪を染めた少女だった……。


「ふぅん、”こっちの手助けに行け”って追い出されて、書庫への入り口探してたら扉が出てきたから何かと思ったら……緊急の逃げ道って奴ね、らっきー!」


「あ、あなたは? それにパパは?」


明らかにこの世界の人間じゃない、書庫に入ってきたメガネの人と同じ匂いがする。


「パパ? ああ、ロイドとか言ったっけ? 今頃殺されて、腑分けされてるんじゃない? アハハハ!」


「え?」


ケラケラと笑う少女の目は、年相応とは思えない残虐性を見せていた。


シャキン!


「お嬢ちゃんのパパさぁ、私好みのイケメンだったから、私が解剖したかったんだけどね~、予想以上にしぶとくってさぁ、私はこっちに回されちゃったんだよねぇ」


少女は私を見下ろしながら、大きなナイフを抜いた。


「イイネ、怯えた小動物みたいで……濡れてきちゃうよ♪」


「い、やぁ……」


少女は顔を高揚させ、息遣いも荒くなり、私に迫ってくる、私は逃げようとするが、蛇に睨まれた蛙の様に逃げることが出来ない。


「パパとママねぇ、きっと幸せな家庭ナンだろうね~♪ そういうのってさ、滅茶苦茶にしちゃったら絶頂モノだよね?」


少女が何を言っているのか分からない、ただ、パパとママが危ないという事は分かる、自分自身の危険は二の次として……。


「さぁて、フラストレーション溜まっちゃってるから、つまみ食いくらいいいよネ♪」


「ひぃ……」


「お嬢ちゃんは、どんな音色で鳴いてくれるのかナ? お腹を開いたらどんな色なのかナ?」


「パパ……ママ……リアちゃん……」


私は、もう助からないと理解した、愛しい両親と妹の顔が浮かんで消えていく……。


ガッ!


「あう!」


いきなり髪を掴まれ、引き上げられた、少女が舌なめずりをしながら、私の顔を覗き込む。


「ダイジョウブ、ダイジョウブ、ゆっくりたっぷり、ねぶり上げる様に、死なない程度に殺してあげるから♪ キャハハハハハ!!!」


少女は私に向かって、ナイフを振り下ろした……。


………


……











大変遅くなりました。連休でなければまだ書き切れなかったはず……。

正直、過去の話とはいえ、若き日の神ちゃんが酷い目に遭う事を考えると、ノリノリで書けないとも言いますが( ;∀;)ゴメンヨ


あと2話以内に収める予定です。

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