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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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想定以上


 ベゴールは魔力の上昇と共に、体が一回り大きくなっていく、理知的だった顔は、獰猛な鬼と化し、目を真っ赤に燃やしユーゴを睨みつける、


 それに対し、ユーゴの方は体に変化は見られない、だが、濃い紫色のオーラが体を覆い、外から見ると黒い塊にしか見えなくなっていた、ユーゴも目を赤く光らせベゴールを見つめていた。


「まだ、魔力が上がるか、たいした化け物だな」ベゴールは感心したように言う、

「ああ、確かに化け物だな」ユーゴは自嘲ぎみに答えた。


ユーゴの体が消える、ベゴールの顔面の前に現れると、思いっきり拳で殴りつけた、

ベゴールが体の周りに張っていた強力な魔法防壁がそれを防ぐ、だが構わず殴り続ける、

ベゴールがユーゴを風魔法で包み捕まえようとする、

ユーゴは一旦瞬間移動で間合いを取り、同じ攻撃を繰り返す、

すると、ベゴールの魔法防壁にひびが入り出し、ついにベゴールの顎をユーゴの拳が捕らえた、

ベゴールの大きな体が床に叩きつけられる。

「一発は直にぶん殴りたかったんだ、すっきりしたぜ」ユーゴがそう言うと、

「この程度で、何をほざく」ベゴールはすぐさま魔法防壁を張りなおした。


ベゴールが右手を前に出し、手のひらを握りしめる動作をする、

すると、ユーゴの周りの魔素の圧がギュウっと圧縮され、ユーゴの動きを封じ込めようとする、

「ふん、これでちょこまかとアチコチに移動できまい」とさらに圧を強めるベゴール。


だが、ユーゴはあっさりとその場所から瞬間移動して間合いを取った、それと同時に右手から衝撃波を打ちこむ。

「なるほど機械の力を借りずにわたしに挑むだけの事はある、だがおまえは、この存在を忘れていないか?」ベゴールはそう言うと左手に掴んだ大きな魔石を見せた、

ユーゴの放った衝撃波が魔石に吸い込まれていく、

「忘れてなんかいないさ、お前がちゃんと持ってきてるかどうか確かめたんだ」

ユーゴは目だけを赤く光らせてそう答えた。


「お前の攻撃魔法は、この魔石がある限り意味はない、もう、同じ場所を何度も攻撃させるような馬鹿な真似もしないぞ、機械を使わなかった事を後悔させてくれるわ」

ベゴールがそう言うと、いつのまにかユーゴの周りを精鋭と思われる魔族が取り囲んでいた。


ユーゴは、ベゴールが持つ魔石を見て、想定より少し大きいなと思った、だが、「まあ、なんとかなるか」と呟いていた。

(探索者の救出が完了しました、黒龍、赤龍の他は各自撤退しています)とメルマから報告が入る、

龍の二人は自分で何とかするだろう、よし、じゃあ始めるか。


ユーゴは更に魔力を高める、そして、その魔力をベゴールが持つ魔石へと注ぎこんだ、


「何を考えている、いくら魔力を使おうともこの魔石の前では無駄と言ったろうが」ベゴールは無駄と判って魔力を注ぎ込むユーゴの意図が判らずにいた。

そのすさまじいユーゴを包み込む魔力のエネルギーに、ユーゴの周りの魔族達もユーゴに近づけずにいる。さすがのベゴールも狼狽えていた。



 遠く離れた飛行艇の中からも、そのユーゴを取り囲む魔力のオーラが確認できた、

「始まったようね、想定では十分程だったわね」バーバラがオレンジに確かめる、

「はい、魔石が想定の質量なら、十分八秒、誤差は+-15秒です」とオレンジが答える。

「撤退は済んでいるのか?」ギルド長フランクが大きな声で確かめる、

ちょうど姿を見せたドイルが、

「二龍の他は亜空間に収容は済んでいる、時期にここに来るだろう」と答えた。

「龍達ももたもたしてると間に合わなくなる、何をしてるんだ」そうフランクが言うと、

「ギルド長、案外心配症ね、あの龍は本気を出すと音速超えるわよ」とバーバラが笑った。


赤龍は、まだハーモングと戦っていた、

有利に戦ってはいるが、火と熱に強い者同士、なかなか決着をつけられずにいた、

魔王城の屋上のユーゴのエネルギーの塊がが、その視界に入る。

「ちっ、時間切れのようね」そう言うと大きく羽ばたき、上空に舞い上がった、

「逃げるか赤龍、戻って決着を付けろ」そうハーモングが怒鳴る、

だが、そのハーモングも、屋上のエネルギーに気付くと、無言でそれを見つめていた。


上空で、赤龍と黒龍が合流する、

「思いの外手こずった、片翼引きちぎってやったから、逃げられまい」

そう言って少し不満げな表情の黒龍、

「こっちも留めはさせなかった」とこちらもスッキリしない様子の赤龍、

「まあいい、どうせ奴らは終わりだ」黒龍がそう言うと、二体の龍はその場から物うごいスピードで離れて行った。



ユーゴが、魔力を放出しはじめてから、もうすぐ10分になろうとしていた、

ベゴールが持つ魔石は、赤黒い色から、徐々に紫色に変わってきている、

「貴様、まさかこの魔石の容量を超える魔力を注ごうとしているのか?」

ベゴールの顔が青ざめる、魔石はすでに異常をきたし、ベゴールの手に吸い付いて離れない、

「ま、まさか、そんな事をしたらどうなるのか判っているのか」

ベゴールが叫ぶ、

「ああ、判っているよ、散々シミュレーションしたからな」

ユーゴはそう言って、魔力を送り続ける。

魔石がユーゴの魔力だけではなく、周りの物全てを引き付けようとしていた、


「予定時刻を過ぎました、今だ変化がありません、想定より魔石の容量が多い可能性があります」

オレンジがそう警告した、

「カーク、急いでもっと離れて」バーバラが慌ててカークに指示する、

「は、はい」カークは飛行艇を素早く動かし始めた。


(マスター、危険領域に入りました、M1号改を退避させます)

メルマはそう言って、M1号改と共に亜空間に退避する。


魔石は、まるでブラックホールのごとく、周りの大気を吸い込み始める、そして、それが止んだ瞬間、ピキとひびが入った、

ユーゴは、それを待っていたようにスーッと姿を消した、


紫色だった魔石は、薄い水色にそして白く変化していく、

そして、全てを飲み込みながら暴発した。魔族や魔王城そこにあった物全てを飲み込んでいく。


白い光が円形に広がって行く、その範囲は、ユーゴ達の想定を超え、白い大地の外、山脈迄飲み込んでいった、

飛行艇が、ガタガタと揺れる、中にいる者は低い体勢で何かに捕まり、それが収まるのを待った、

静かになったのを確かめて、魔王城のあった方向を見る。


そこには、何もかも無くなった白い大地が円状に広がっていた、

「・・・・・・」

飛行船の中では、誰もが静まり返ってその景色を見ていた、

飛行船の外で、黒龍が、

「流石にあの中にいたらやばかったかもしれんな」と呆れ顔で言っている、

「シミュなんとか以上の威力だったな、ビックリした」と赤龍も予想以上の暴発に驚いていた。





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