表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神託の転移者  作者: 百矢 一彦
85/88

救出


 大魔王城の屋上、ユーゴとベゴールは互いを睨みつけて相対していた。


ユーゴも、ここに来るまでの間、模擬戦やシミュレーターで戦闘訓練をこなしていた、

その結果、自分がとんでもない存在だと、気が付いてしまっていた。

魔界の実質上の指導者ベゴールを前にしても、まったく臆することは無かった。


そして、だからこそベゴールに怒っていた、

この世界に来てから、安穏と暮らしたかったユーゴは、自分の力を隠そうとしてきた、

だが、それを邪魔したのは、目の前にいるベゴールなのだ。

これから先、この力が知れた後、今までの様に仲間たちと愉快にやっていけるかどうかも分からない、

そんな不安も、怒りを増幅させていた。


ベゴールはこの世界の、遠い過去にあった機械文明の力を知りたかった、

だが、目の前にいるユーゴは、それらしいものを何も持っていない、まさか自分に生身で挑んでくると思っていなかったベゴールは、とても腹立たしく思っていた。


「せっかく古代の機械文明のありかを教えたというのに、何も用意しなかったのですか?、あの機械達を使いこなせるのは、あなたしかいないと思ったのですがねえ」そうベゴールは平静を装って言った、

「いや、流石にまったく頼らなかった訳じゃない、今頃下で大活躍してるさ、だが、お前には使わない、お前の思惑に乗るのは面白くないからな」

ユーゴはそう言うと、徐々に魔力を上げていった。


「フン、まさか先日見せた力が、私の力のすべてと思ってるわけでは無いでしょうね」そう言うとベゴールも魔力を上げていく、

両者の周りには、異様な瘴気が立ち込めていた。



四階の広間、半獣半人の怪人と化した元探索者達が、アイーダ達に襲い掛かっていた、

だが、アイーダ達は防御魔法だけで反撃しようとはしなかった、

怪人の攻撃をかいくぐり、それぞれ持っていた革で出来た袋を投げつける、ユーゴが用意した無限袋だった、

中から出てきたのは、無数の蜘蛛型ロボットだ。

みそのが、怪人の後ろに回り、蜘蛛型ロボットを直接振りかける、蜘蛛ロボットは怪人の体に取り付き、額の魔石目指して群がって行く。


怪人たちは、蜘蛛ロボットを振り払おうとするが、その数は圧倒的だった、

蜘蛛ロボット達は、背中から上半身、首元を過ぎ顔面にまで迫っていた。

首を振り、手で何度も振り払う怪人たち、そんな集中力を欠いた怪人たちに金縛りの術を掛けるのは、みそのにとって簡単な事だった。


動きの止まった怪人たちの額で、数機の蜘蛛ロボットが共同で魔石の取り外しに掛かる、小さな光がチカチカしたかと思うと、器用に魔石をはずしていった。

魔石を回収した蜘蛛ロボットが無限袋に戻る、怪人によって潰された仲間も綺麗に回収していった。

みそのが金縛りの術を解くと、怪人たちは頭を押さえてしゃがみ込んだ。

カイが心配そうに駆け寄ると、「カイ、助かった」と礼を言って来た。


「よし、もう大丈夫だ、その体も何とかなるぞ、さあ帰ろう」カイがそう言うと、

みそのは用意しておいた魔法陣の描いてある敷物を広げる、みゆきが連絡を入れるとイアンが現れ、皆を順番に移動させた。

アイーダは無線機で「救出成功よ、引き返すわよ」と連絡を入れた。


「あの蜘蛛さんたち、一匹一匹は可愛いんだけど、集団になると不気味よね」とみゆきが言うと、

「そんな事いったら、可哀そうよ、私は少しもらえないかユーゴさんに交渉してみるつもりよ」とみそのが答えた。

「ユーゴがハーモングを誘導してくれたおかげで、思ったより簡単だったね」とアイーダ、

「あの魔人、かなりの魔力量を持っていました、ユーゴ殿に何事もなければいいのですが」とユイナはちょっと心配そうに言う、

「大丈夫でしょ、なにしろ、あの時のシミュレーションの通りなら相手が何者でも関係無いわ」そうアイーダはユイナに答えて、ニカッと笑っていた。



蝙蝠の羽の三人は、崩れた壁越しに、ハーモングと赤龍の戦いをまだ見ていた、

「おい、救出成功したってよ、引き返さないとまずいぞ」そうコイルが言う、

「ああ、だが赤龍の姐さん、あれじゃあ何言ってもきこえんぞ」とバースが困ったように言う、

ハーモングと赤龍の戦いは、激しい肉弾戦になっていた、

お互い炎の魔法に強く、自分の攻撃が相手の致命傷にならない、赤龍はいつのまにか龍の姿に変わり、恐竜顔のハーモングに鋭い爪で攻め立てるが、ハーモングの方も強靭な肉体の持ち主だった。


「ちょっと、頭を冷やしてもらおう」バースはそう言うと冷却魔石弾を詰め込んだバズーカ砲を、二人が戦っている方に構える、

「おい、後でどやされねえか」とコイルが心配そうに言うが、

「いや、あのシミュレーションが本当なら、感謝されるはずだ」バースはそう言って冷却弾を発射した。

赤龍とハーモングの間で冷却魔石弾が撃ち込まれ、一瞬その周りが凍ったように見えたが、二人の熱ですぐ溶けてしまった、

だが、こちらに注意を惹く事はできた。

振り返る赤龍に、大きく手を振って引き上げの合図を送る、それは確かに赤龍の目に留まったようだ。


赤龍はハーモングとの間合いを広げると、

「先に行ってな」とバース達に言うと、高く飛びあがり、急降下して再びハーモングに攻撃を仕掛けていく。


「よし、後は本人に任せて、俺達は引き返そう」そうバースが言うと、

「もう少し見て居たかったな」とハンスが残念そうに言う、

「おいおい、あんな怪獣対決見てても、なんの参考にもならねえよ」とコイルはそう言って走り出した、後の二人もそれに続いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ