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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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勇者の力


 大魔王城の門は破壊していたが、城壁に沿うように半円に張られた魔法城壁は強力だった。

門を囲うように半円の陣形で魔物の侵入を防ぐギルド隊、それを援護するスパンク王国の特殊部隊も疲弊の色が濃くなっていていた。

「まだか、そろそろ何とかしてくれないと持たないぞ」ギルド長フランクの怒鳴り声が響く、

その隣で、副ギルド長のスザンヌも得意のアイスカッターを繰り出し奮闘していた。


カイが槍の先から強力な光を放ち、魔法城壁を打ち破らんと魔力を打ち放つ、だが魔法城壁はビクともしなかった。

上空で見ていたユーゴも、ここで時間を食ってはまずいとM1号改から飛び降り、カイに合わせて魔力を打ち放つ、それでも魔法城壁を打ち破ることが出来ない。この結界を破らなければ、城壁の中に亜空間の出入り口を作る事も出来なかった。


城壁の中で、大きな口を吊り上げ、トカゲの顔をしたゼバラがせせら笑っていた、

「フフフ、わしの結界魔法を、そんじょそこらの魔法城壁と同じと思ったら大間違いだ、長年の研究で魔法式を改良してある、お前たちの魔法では敗れんようにな、お前たちはいずれ魔物達にすり潰される運命よ」


ギルド隊の中に、怪我で戦線離脱する者が増えてきた、ドイルの亜空間を通ってイアンが結界魔法を張りながら怪我人を運ぶ。

囲いを突破して中に入ってくる魔物も増えてきた、そのことごとくをバーバラ隊が素早く倒す。

空からも羽の生えた魔物達が飛来する、空からの攻撃には、アイーダの魔石銃が絶大な威力を発揮した、

七つの銃を縦横無尽に打ち放つ、コイルとハンスも魔石銃で空からの攻撃に応戦していた。


だが、少しづつ押されてきている、このままではジリ貧と思われた。


「どいて、私がやるわ」

ユーゴとカイを制して前に出てきたのは、引き締まった顔つきのみゆきだった。

みゆきは大きな剣を中段に構えると、目をつぶり意識を集中させた、

すると、みゆきの剣が黄金色に光り出す、みゆき自身も黄金に光り出した。


「なんだ、あのオーラは、・・まさか伝説の勇者があの中にいるというのか」

さっきまで余裕で笑っていたゼバラの顔色が変わった。


みゆきは、つぶっていた目を見開くと、城壁に向かって走り出す、

そのままの勢いで上段から剣を振り落とした、

バキバキバキ、今までビクともしなかった城壁に傷がついた、

「えい、この、やあ、」傷しかつかなかった事に不満だったのか、みゆきは剣を振り回し、なんとか人が通れるぐらいの穴を開けた。


「すごいわ、みゆきさん」「でかした」「やるなあ、みゆき殿」みゆきへの賛辞を言葉を残しつつ次々と城壁の中に入る面々、城壁の外でみゆきは照れ笑いを浮かべながら頭を掻いていた、

「みゆき~、中に入らないの?」そう聞いてくるリス顔のB3の言葉に、慌ててみゆきも中に入って行った。


「ギルド長、城壁を破った、撤退してください」ユーゴはフランクにそう言ってユーゴも魔法城壁の中に入って行く。

城壁の外では、ドイルが大きめの亜空間への入り口を作り、皆を誘導していた、

「後はまかせたよ」最後にギルド長フランクが亜空間に入り、ギルド隊、スパンク王国の特殊部隊、全員の撤退が完了した。


ユーゴは城壁の中に入ると、みゆきの開けた穴の内側に新たに結界魔法を掛けた、敵の結界が解けても外の魔物が入ってこないようにする為だ、


先行した面々に下級魔族が襲い掛かる、だが、訓練を積み重ねたユイナ達の相手では無かった、

「な、何をしている、中に侵入したのは大した数ではない、一気に押しつぶしてしまえ」

ゼバラはあせるように叫ぶと、自分は城の奥に向かって歩き始めた。

「わしの結界を打ち破った事と言い、間違いない、あのオーラは勇者のものだ、まさか勇者がいるとは、誰も気が付かなかったのか」そう言って奥の扉に向かおうとする。


「いまさら、自分だけ逃げようというのか」そう後ろから声を掛けたのは、ユイナだった、

ゼバラは、振り返るとそれが勇者で無かった事にホッとする、

「フン、勝手にほざけ」そう言うと自分の周りに結界魔法を張ろうとする、

だが、それより早くユイナの一撃が飛び込んできた、そのスピードに目を見張るゼバラ、

「なに、貴様何者だ」そう言いながらかろうじて左腕に付いてる手甲でそれをさばく、

「我が名は、白竜の巫女、ユイナ・ラ・カンド、覚悟」そう名乗るとユイナの体が白い光に包まれる。


「ちっ、龍人か、また面倒な」ゼバラはそのまま立ち去るのは無理と判断したのか、剣を抜きユイナに相対した。

ユイナは、右、左、また右と、もの凄いスピードでジグザグに走りながらゼバラに迫る、その残像だけが視界に残り、まるで何人ものユイナが突っ込んでくるように見える、

ゼバラは、避けられないと思うと、自分を硬化させる魔法を掛けた、

ユイナの剣を固い岩のようになったゲブラの体がはじく、ゼバラが反撃しようとしたとき、ゼバラの耳に怪音波が鳴り響いた、B1の気転を利かした攻撃だった、

のけぞるように苦しむゼバラ、ユイナの剣が何度となくゼバラの体を突く、だが固いゼバラの皮膚に致命傷を負わす事が出来ずにいる。


忌々しそうにユイナを見るゼバラ、その視界の端に金色の光が走った、

みゆきがジャンプ一番、大上段からゼバラめがけて剣を振り下ろす、あわてて自分の剣でそれを受け止めるゼバラ、

だが、その首を一旦離れて勢いを付けたユイナの剣が貫いていた。

「くそう、勇者など聞いておらぬ」そう言うと、ゼバラの体はチリヂリに消えていった。





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