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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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四体の魔族


 見えてきた魔界の地の海岸線は、いたって普通だった。

漁村らしき集落も見える、半魚人のような生き物が、上空のユーゴ達を不安気に見上げる姿が見えた。

陸地に入ると、濃密な森林が続く、時々魔獣の姿が見られたが、怯えて姿を隠してるように見える。


 やがて、山岳地帯が見えてきた、

「さあ、いよいよだよ」そう無線で知らせてきたのはバーバラだった。


飛行船の中は緊張感に包まれる、延々と続く山岳の先、皆が見る視線の先に大魔王城がわずかに見えて来る、

それと同時に、いくつもの飛行体がこちらに向かって飛んでくるのが確認できた。

黒龍、赤龍の前に竜騎士が出る、両者の距離はあっという間に縮まっていった。




大魔王城の城壁の上、四体の魔族がその様子を見ていた、

「ほんとうに黒龍赤龍もいるぞ、これは面白いことになりそうだ」

そう嬉しそうに話しているのは、この中では一番年下に見えるバラムカという魔族だった、

背中には黒い大きな羽があり、飛び出したくてウズウズしてるように見えた。


「ベゴール様のお話では、機械とやらの力を侮るなとの事でしたが、変わった乗り物は一体だけの様子、暇つぶし程度にはなって欲しい物ですがね、期待は持てませんね」

そう言ったのは、ハーモングという名の魔族、顔は人間のようだが二つの尻尾が体の後ろで踊っていた。


「ほう、あれは白竜の谷の竜騎士ではないか、これは中々の精鋭を揃えたと見える、あまり舐めない方がいいかもしれないぞ、ハーモング」

と口とは裏腹に余裕の表情でハーモングに言ったのは、ゼバラという名の角を持ったトカゲのような顔をした魔族だ。


「フン、あたしはバーバラさえいれば文句は無いわ、今度こそギタギタにしてあげるわ」

美しい顔に目をぎらつかせて言っているのは、先日ユーゴの前に現れたメビーラだった。


「お知らせします、ナーガ隊が突破されました、間もなく白の台地に到達します」

鎧を着た下級魔族がそう報告する。



 戦いの戦端が開いた、

蛇の下半身に人型の上半身、背中に羽を生やした倍以上の数の魔物に向かって、竜騎士が槍を振りかざし突っ込んでいく、

数では圧倒されていた竜騎士は、瞬く間に魔物達を蹴散らした。


視界の下には、真っ白な地面が果てしなく続いていた、

魔素による瘴気で空は濃い紫色をしている、その下に広がる不気味な静けさの白い大地。

その不気味な景色は、いよいよ戦いの場に着いた事を示していた。


いつの間にか飛行艇の屋根にドイルが立っている、ユーゴが乗るM1号改の前方だ、

「そろそろかの」とドイルが言うと、眼下の白い大地にぼこぼことあちこちに地割れが出来る。

地面の中から無数の魔物が湧き出て来る、白かった大地が、魔物たちによって黒く染められていく、

数分後には、もはや隙間が無いほど魔物が湧き出てきていた。

紫の空には、さっきの魔物とは比べものにならない数の飛行体が飛んでいる。


それを確かめたドイルが、杖をふりかざす、


「広域冷却魔法、グランドアイス」


ドイルがそう唱えると杖の先から光が大地に向かって走り、黒くザワザワと動いていた魔獣達が白く凍り付いて行く、その範囲はどんどん広がって大魔王城の方まで続いて行った、


ドイルはユーゴの方に振り返り、「では、わしはこれで、後方で支援に回るぞ」とニヤッと笑った、

「はい、よろしくお願いします」とユーゴも笑顔で返した。


飛行艇の中ではバーバラが、ドイルの久しぶりに見る魔法に、相変わらずこれだけは反則級ね、とほくそ笑んでから、

「よし、行けるところまでこのまま飛行艇で突っ込むよ」と号令をかけていた、


無数の飛行体が近づいて来る、今度は形が龍に近い

「向こうにも龍がいるのか?」とユーゴが独り言ちすると、

「あれは羽の生えたトカゲよ、一緒にするでない」と黒龍が捻話で言って来た


その羽の生えたトカゲの先に、別の飛行体が何体か見える、一つの体にいくつもの首が付いていた、

「ヒュドラだ、あれが出てきたという事は、あのバカもあの辺いるという事だな」

そう言ったのは赤龍だった、

黒龍と赤龍は、竜騎士を一旦下げさせると、二体同時にブレスを吐く、

何体もの魔獣が落下していくが、それでも敵の数は圧倒的だった。


黒龍と赤龍を避けるように、空飛ぶ魔物は飛行艇に向かう、竜騎士との乱戦が始まった、

バンナとアダンテも空飛ぶトカゲ相手に奮闘する、だが、その数は圧倒的だった。

結界魔法で包まれた飛行艇に体当たりする魔物の数が増えていく、そろそろ限界と思ったバーバラが着陸の命令を出した。


地表では、ドイルの魔法によって凍った魔物と地面に、ひび割れが出来始めていた、

新たな魔物が湧き出ようとしていたのだ、

その上に飛行艇が着陸する、後部の扉が大きく開く、中から整然とギルド隊が班ごとに飛び出していく、

その後にバーバラ隊が続く、そして、姿の見えないスパンク王国の特殊部隊が飛び出した。

「さあて、ひと暴れして来るか」バースの声に応えて蝙蝠の羽の三人が出ていった。


ギルド隊は、半円を描いて大魔王城に向かって、走り出した。

その中心にスパンク王国の特殊部隊がいる、

大魔王城まで数百メートルにまで迫った所で、氷を割って魔物が次々飛び出してきた、

あっという間に、敵味方入り乱れての乱戦になっていった。


少し、タイミングをずらして未来の花団の四人とカイが出てくる、その後にゆっくり歩きながらバーバラが出てきた。


バーバラを降ろした飛行艇は、戦列を離れ後方に引き返した、バンナとアダンテは飛行艇の警護に回った。

そしてユーゴは、飛行艇の上に取り付けたM1改を切り離し、はるか上空で戦況を見ていた。


魔物と相対するギルド隊は、相手のその数に全く怯むことなく、魔物達を蹴散らしながら大魔王城に向かって行く、幾度となく繰り返したシミュレーションの効果だった。

予想より早く、魔王城の門までたどり着く、しかし、堅牢な門の前には、ひときわ大きい鬼のような形相の下級魔族が二体待ち構えていた。

後から出て行ったバースが、バズーカ砲をブチかます、

倒れた巨体の魔族にバーバラ隊が一斉に襲い掛かる、その周りの魔物の侵入を防ぐようにギルド隊が今までとは逆向きの半円になっていた。



上空では、ヒュドラを相手に黒龍と赤龍が戦っていた、

八体だったヒュドラは、すでに半分が深手を負い、地面に落ちて行った。

「お前の使役獣など、相手にならんわ、早く姿を現すがいい」そう黒龍が言うと、

黒龍たちのさらに上空から、炎の柱が向かって来た、それを黒龍がブレスで吹き飛ばす。

「さすがのタフネスぶりだな」そう言って姿を現したのは、魔族バラムカだった。


「タフなだけでは無いぞ」黒龍はスッと人型に変身すると、ものすごいスピードでバラムカに向かって行く、バラムカはその攻撃をかろうじて剣で受け止めた、

そのまま二人は、空中で離れてはぶつかるを、もの凄いスピードで繰り返しながら戦い始めた。

龍の姿のまま、ヒュドラの相手をしている赤龍は、

「姉様はいつも美味しい所を持って行く」と不満げにヒュドラの羽を引き千切っていた。







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