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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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戦力アップ


 次の日、早速魔法訓練所では戦闘訓練が始まっていた、

黒龍に対し、蝙蝠の羽の三人がかりで模擬戦をしているが、黒龍にまだ一太刀もあびせられずにいる、黒龍の方は、攻撃はせず、相手の攻撃を軽くいなしてるだけだ。


「うわ、まるで大人と子供ね」アイーダが呆れるように言う、

「だが、三人の連携が少しずつ上達している、あのような戦い方はあの三人もした事が無かっただろうし」ユイナは、三人の攻撃パターンが少しずつ変化してる事に感心していた。


「さて、こちらもはじめるぞ」そう言ったのは赤龍だった、

未来の花団の四人は、「はい、よろしくお願いします」と言うと、赤龍を囲むように散った、

アイーダが魔石銃を打ち込むのと同時にユイナとみそのが左右から突っ込んでいく、赤龍は一瞬で上空に避けた、そこを狙ってみゆきが風魔法を放つ、赤龍はその魔法を持っていた剣で払うと、「ほう」っと感心するようにみゆきを見た。

その後も、断続的に攻撃を続けるが、やはりこちらも一太刀もあびせる事は出来なかった。


ユーゴは、メルマとオレンジと共に、戦闘訓練用シミュレータの準備をしていた、

ユーゴが魔法で人間がすっぽり入るカプセルを作り出す、亜空間なら簡単だった、

そこに、蜘蛛型作業ロボットが様々な器具を取り付けていく、

そして、三体の蜘蛛型ロボットが、カプセルの上部に取り付いた、

蜘蛛型ロボット内のコンピューターが、バーチャル世界の構築をするらしい、

この辺りは、説明を聞いてもユーゴには理解できない世界だった。


魔界のデータは、先日バーバラがユーゴ達に幻夢魔法で見せたものを、メルマがユーゴから取り出し、オレンジたちと共有していた、かなりリアルな魔界の再現に成功したようだった。


シミュレータは、とりあえず七機作った、これは、バーバラの店員、踊り子の人数に合わせた数だ、この子達をユーゴは仮にバーバラ隊と呼ぶ事にしていた。

出来上がったばかりのシミュレータを早速バーバラ隊に試してもらう、七機のシミュレータは連動する事も出来、同時に入れば連係プレイも可能だった、


バーバラ隊がシミュレータの中に入り、バーチャル世界を発動させる、

う、とか、ちっ、とかの声が漏れ聞こえてくる、バーチャル世界の中でかなり苦戦しているようだった、

ぶっつけ本番で魔界に突入するのと、このシミュレータでの訓練を経験して魔界に行くのでは、雲泥の差があるだろうと、ユーゴは踏んでいた。



そんな様子をバーバラが見に来た、バーバラはユーゴを見つけると、

「ユーゴ、どうやって魔界に乗り込むか、なにか考えでもあるのかしら」そう聞いてくる。


ユーゴは、機械の力を借りるなら、巨大ロボットや空飛ぶ戦艦でも作って圧倒してやろうかとも考えた、だが、それには時間が足りそうにないし、このバーバラや、黒龍赤龍の収まりがつかないだろうと思っていた、第一、ユーゴ自身がそれでは気が収まりそうになかった。

一方的に喧嘩を売って来た魔族の長ベゴールに、ユーゴは自分でも驚くほど腹を立てていた。

静かに暮らすという、ユーゴのささやかな望みを打ち砕かれた恨みは大きかった。


自分だけで一点突破する方法も考えた、瞬間移動魔法を駆使すれば何とかなるだろうと思ったからだ、だが、バーバラの記憶によると、魔族の陣地には強力な結界魔法が張って有り、それを突破するにはある程度の時間がかかってしまう、そうなったら、何万という魔獣に取り付かれてしまい、身動きが取れなくなる可能性があった。

いくら魔獣との実力差があろうとも、その数は無視できない、

人間が何万という羽虫の中を進むのが困難なように、この魔獣たちを露払いしてもらう必要があった。



「具体的にはまだ何も、シミュレーションの結果を見ながら考えますよ、でも決めた事が三つあります。まず、人間にも魔族に対抗できる力がある事を示す。次に、ベゴールとかいう向こうの大将は、俺が機械の力を借りずにぶちのめす、そして、犠牲者は一人も出さない」そうユーゴは答えた。


「随分と高い目標にしたもんだねえ、ユーゴ、忘れてないかい、向こうにはあの魔力を吸う魔石があるんだよ、あんたの力だけでやれるのかい?」バーバラは少し不安そうに言う、

「それについては、ちょっと考えてる事があって、いま解析中です」とユーゴは苦笑いしながら答えた。

「まあ、それはあんた次第だ、まかせるわ」とちょっと肩をすぼめるバーバラ、

「勝てない喧嘩はしない主義です、なんとかしますよ」ユーゴは今度は不敵に笑って見せた。


ユーゴは、機械との融合をさせるのが相手の目的なら、それ抜きでぶちのめすのがベゴールにとって一番の痛手だろうと考えていた、ここだけは譲れない、そう考えていた。


「犠牲者を出さないというのもねえ、それはそれに越したことは無いけど、乱戦は必至だろう、他の者まで気遣う余裕はないわよ」と、これも懐疑的にバーバラは言って来る。

「それは、あの人達にお願いしようと思っています」

ユーゴは、丁度現れたドイルとイアンの方を向きながら言った。


ドイルには後方部隊の指揮を頼んでいた、移動系魔法が得意なイアンと共に戦闘離脱者や怪我人の回収をしてもらい、ギルドから治癒魔法や回復魔法の得意な者をつけて後方支援してもらう予定だ。


「おや、ドイル、今回は後ろで見物かい? 歳を取ったもんだね」と嫌味っぽくバーバラが言う

「フフフ、なーに初っ端に特大広域魔法をぶち込んでやるさ、その後はお前さん方に任せる」とドイルは笑って答えた、

「まあ、その方が無難ね、あんたは接近戦はからっきしだからねえ」とバーバラも笑っていた、

イアンはそんな二人を見ながら、少し震えていた。

「聖者さん、よろしく頼むわよ、爺コンビで後ろを賄ってくれれば、思い切り戦えるわ」

バーバラがそう言うと、イアンは飛び跳ねるように「はい」と返事をした。


タイミングよく、ギルドに行っていたユイナの兄、カイが戻って来た、

「ギルドでは、魔界に行けるような要員は30人ぐらいだろうと言っていた、それとは別に治癒魔法師を10人ぐらい選別してくれるそうだ」

と報告してくる、

「そんなもんだろうな、で、ギルド長本人も出ると言ってましたか?」とユーゴが聞くと、

「本人は渋っていたが、副ギルド長が尻を叩いていた、あれなら出てくるだろうな」とカイは思い出し笑いをしながら言う、

「あの人には、少々痛い目に会ってもらわないとな、俺を出し抜こうとしたんだから」とユーゴも笑って言った。


そこへ、黒龍、赤龍と共にユイナが来て、

「ユーゴさん、白竜の谷の竜騎士が二十騎、参戦してくれるそうですよ」と言って来る、

「今、連絡があった、白竜様も承諾して下さったそうだ」と黒龍も言う。

竜騎士と言うのは、飛竜に乗った騎士の事で、白竜の谷の竜騎士と言えば、二十騎もあれば一つの国ぐらい簡単に制圧できるだろうと言われていた。


「谷の竜騎士は、元々は対魔族用に作られた部隊と聞いています、頼りになりますよ」そう言ったのはカイだった、

「大昔、魔族達とはちょっとあってな、その時に作られたのが最初だ」黒龍が意味ありげに言う、

「白竜様、まだこだわってらっしゃるとみえる、これは益々張りきらねばならぬな」赤龍はそう言って笑っていた。


「それは頼もしい」とユーゴはいいながら、白竜と魔族の因縁ってなんだろう、と気になった。

「因縁ですか、何があったんです?」と聞くと、

「それは私の口からは言えぬ」と答るのを断られてしまった。


大幅戦力アップだ、その辺はまあいいか、とユーゴも深く追求しなかった。



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