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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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科学の魔法


 バーバラが見せた魔族同士の戦、それは武器を持った何万という魔獣たちのぶつかり合いから始まった、

ダンジョンや東の森にいる魔獣たちとは明らかに違い、ある程度の知恵を持っているように見える、これはこの魔獣たちすべてが、魔族の使役獣だからという事だった。

使役獣は、使役者の魔力に応じて知能が高くなり、能力も上がる、ユーゴの蝙蝠達のように。

その姿は、もはや魔獣というより、魔物と呼んだ方がいいものだった。


そして、さらに厄介な事に、魔素の強い魔界の地では、魔物たちは一度死んでも数時間後に復活するという事だった。


魔族同士の戦では、この魔物たちのぶつかり合いが数日ぶっ続けで行われる、そしてどちらかの陣営が崩れて初めて魔族が相手の陣営に攻め込むのだ、

その魔族の戦いぶりがまた尋常では無かった、すさまじい魔法の応酬、巨躯と巨躯のぶつかり合い、人間と変わらぬ姿の魔族も、そのスピード、剣技、全て人間を凌駕していた。


こんな連中が、大魔王城の周りを取り囲んでいるのだという、普通に考えれば大魔王城にたどり着くなど無理な話だった。


「ユーゴ、わかったかい、あんたは機械の力を何処まで借りていいか迷っているようだけど、そんな余裕は無いわよ、今回は使える物はすべて使いなさい、その後の事はその後考えればいいわ」とバーバラがユーゴに言って来る。


その言葉を聞いて、ユーゴは、ハッと思い当たった、

機械の力をすべて引き出す、それこそが魔族の狙いなのでは無いか、

神ゲブスが、魔法と科学が融合した世界を是非見たい、と言っていた、もちろん神ゲブスは平和なそういう世界を見てみたいというつもりで言ったのだろう、

だが、魔族が違う意味で化学と魔力の融合を見てみたい、と思っても不思議ではない、

そして、それが出来るのは、ユーゴだけという事になる。


だとすれば、結果がどうなったとしても、向こうの思う通りじゃないか、

ユーゴは、額に手をやり悩んでいた。


そこへ、聞いた事のある笑い声が響いた、

「皆の衆、我らも参戦するぞ、ハハハハ」

そう言って、ミーテイング室に入って来たのは、黒龍と赤龍だった。

「我らも魔族とは、因縁があってな、ぜひ協力させてくれ」そう言ってくる。

アイーダあたりは、喜んで駆け寄って行った。


参ったなあ、どんどん話が大きくなっていくぞ、そろそろ方針を決めないとな。

ユーゴは、まずはとにかく機械達の以降をたしかめないと、そう思い、ブルーとオレンジに相談するために、その場を離れた。


機械達のいる亜空間、通称、機械の間に行ってみると、アンドロイド二体が、マザーコンピューターの前で

チカチカ体を光らせ、何か通信している様子だった、

ユーゴは、それが終わるのを待って、ブルーとオレンジに声を掛けた、

「ちょっと相談があるんだけど」と言うと

「私達もユーゴさんにお話ししたい事があります」と言って来た。

「話?なんだろう、そちらからどうぞ」とユーゴが言うと


「今、バーバラさんのお話にあった魔族への対応について、マザーコンピュータと話し合いをしていました、その結果、マザーコンピュータはあくまで外界との関係は閉ざしバーチャル世界の保護に従事する事になりました、しかし、我々アンドロイド二体は、マザーコンピューターとのリンクを外し独立AIとして、ユーゴさんに協力する事を決め、マザーコンピューターの了承を得ました」そう二人揃って言って来た、


「え、いいの?」とユーゴが聞くと、


「我々アンドロイド型は、元々生きた人間に従事する事を目的に作られています、我々を理解してくれる人間、すなわちユーゴさんに従事する事が、今の私達の使命と判断しました」とブルーが言う、

「それはありがたい、実は俺の相談と言うのも、協力してくれるかどうか確かめたかったんだ」

とユーゴは言うと、もう一つ確かめたい事を聞いた、

「蜘蛛型は使えるんだろうか」

ユーゴは装備や武器の製造を考えていた、それにはどうしても蜘蛛型ロボットが必要だったのだ、

「はい、マザーコンピューター及びバーチャルシステムのメンテナスに必要な分を残して、大半は使用できます」とオレンジが答えた。


「そう、そういう事なら俺も腹をくくろう」ユーゴはそう言うと、ブルーとオレンジと共にミーティング室に戻った。

ミーティング室に戻ると、その一角で、メルマも含めた機械三体とユーゴは相談事をしていた、

それを見つけたアイーダが、

「何をコソコソやってるの」と聞いてくる、

「いい事を思いついた、アイーダ、明日から楽しくなるぞ」と言ってユーゴはニヤッと笑った、


ユーゴは立ち上がると、

「みんな、ちょっと聞いてくれ」と全員に向かって言った、

それまで、魔族の情報や、戦い方の議論をしていた全員が注目する、

ユーゴは、一度全員の顔を見回してから言い始めた。


「今回の大魔王城遠征だが、俺は一人の犠牲者も出したくない、

だからその為の準備は十分にしたいと思っている。

まず、魔族への回答はなるべく遅らせようと思う、向こうが焦れようが構わない、いやむしろ焦れるぐらいの方がいいかもしれない。

それで出来た時間で、みんなにやってもらいたい事が二つある。

一つは、戦力になりそうな人員を集める事、探索者救出が目的だ、ギルドも協力してくれるだろう、

だが、腕のたつ者だけ選んでくれ、今回は資金はギルドからたんまり出させるつもりだ、なあに、重力魔石が安定して獲れるようになれば、資金は潤沢になるはずだ、心配はいらない。

そして、もう一つは戦闘訓練だ、半分の時間は互いの模擬戦、

もう半分はバーチャル世界に潜ってもらい、魔族との戦いをシミュレーションで体験してもらう、

出発前には、テストを受けてもらう、これに合格できなかった者は、今回の遠征から外れてもらうぞ」


がやがやとミーティング室が騒がしくなった、

「その、バーチャル世界とかシミュなんとかと言うのは何だ? さっぱりわからん」と言って来たのはバースだ、無理もない聞いた事の無い単語だろう、

「そうだなあ、簡単に言うと科学の魔法だ、科学による幻影魔法みたいなもんだ、リアルに戦闘を模擬体験できる、まあ、一度体験すれば判るさ」ユーゴにそう言われて、バースは深く考えるのはやめようという顔をしていた。


「ああ、それと黒龍さん赤龍さんは戦闘訓練の教官をお願いします、みんなを鍛えてやってください」

そうユーゴが言うと、

「おや、我々もテストとやらを受けるのかと思っていたぞ、まあ、そう言うのであらば鍛えてやろう」

とまんざらでもない顔で黒龍が答える、

「それは、もちろん実戦方式でよいのであろう、まかされよ」と赤龍も乗り気だ、

ユイナは端の方で青くなっていた。


そして、奥の方に座っていたバーバラは「やっとその気になったようね」と心底嬉しそうにしていた。




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