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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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ミーティング


 次の日、ユーゴはバーバラの希望に応じて、仲間達に召集を掛けた、ユイナの兄、カイにも声を掛けておいた。

ユーゴの亜空間にある魔法訓練所の一角に、ミーティング用の建物も用意した。


そして、みんなが集合する前のひと時、ユーゴはブルーが用意した食事を楽しんでいた。

「いやあ、ほんと美味いなあ、この醤油の加減、抜群だよ」と料理を褒めるユーゴ、

「私達は、本来、生きてる人類の為に作られました、八千年ぶりにユーゴさんのお世話をできるのは、とても嬉しい事です」とブルーが言う、

「この味は、俺の記憶から再現したの?」

「そうです、ユーゴさんの好みの味は把握済みです」

「なるほどねえ、こんな美味い物を食べられるのに、バーチャルの世界に入り浸っちゃうのかあ」

「バーチャル世界でも、味覚、歯ごたえ、全て再現できます、栄養管理はバーチャル世界の方が完璧でした」

「ああ、そう言う事か、出たくなくなるのも仕方ないか」


そんな話をしていると、みんなに先立ってバーバラが姿を現した、

昨夜に比べると、かなり冷静さを取り戻したように見えるバーバラは、

「このアンドロイドというのは、魔法を使っても正体が見えないね、どいう物なのかサッパリわからないわ」

と言う、

「まあ、全く別の世界の物、と言ってもいいですからね、こっちの世界の人にしてみれば、未知との遭遇みたいなもんですよ」とユーゴが笑って答えた。

「ユーゴ、この機械達に出来る事を、もう一度よく聞かせて頂戴」バーバラが真剣に言って来る、

「出来る事、ですか」ユーゴは、ブルーとオレンジを呼んで、バーバラの質問に答えていった。


一通り説明が終わると、

「魔族というのは、力だけがすべてなのよ、それが、魔族だろうと、人間だろうと、魔族と人間のハーフだろうと関係ないわ、実力が上なら認め尊敬するわ。そして、自分より実力が上かも知れないと思う相手を見つけると、戦いを挑みたくなる生き物なの、魔族王ベゴールはこの機械達の力を得たユーゴに興味を持ったのかも知れないわね」

バーバラはそう言った。


「えええ、そんな、はた迷惑な、断る訳にはいかないんですかねえ」とユーゴが聞く、

「もし断れば、探索者たちは二度と戻ってはこれないわね」とバーバラは答えた。

「復活したという大魔王はどうなんです?」

「あんたね、いくらあたしが長生きと言ったって、あたしが生まれた時には大魔王は眠りついていたのよ、知る訳ないじゃない、それにほんとに復活したのかどうか、魔界の魔力量はたいして変わって無いわよ、ま、本当だったとしても、それこそ会って確かめるしか無いわね」

そんな無責任な、ユーゴは恨めしそうにバーバラを見ていた。


ユーゴは、バーバラの話を聞いて、一つそれは違うと思ったことがあった、

機械の力を得たユーゴではなく、機械の力を与えたユーゴだという事だった、

ベゴールは、むしろ機械文明の方に興味があるんじゃないか、自分はその為の手段かも知れないと、

そして、バーバラを巻き込むのも魔族の狙い、メビーラという魔族をよこしたのはその為ではないか、

そう思った。


「バーバラさん、メビーラという魔族とはどういう関係なんです?」ユーゴは昨日のバーバラの様子を見て、何か因縁があるのだろうと、聞いてみた。

「あれは、私の従姉妹よ、私の父親は魔族なのよ、昔大喧嘩してね、決着がつかなかったわ、あの顔を見るのが嫌で私は魔界を出たのよ、あいつだけは私が決着つけるわ」怒りが蘇ったのか、少し怖い顔でバーバラは言った。


これは、決まりだな、バーバラさんを巻き込んで、俺が断れないように仕組んだという事だな、

ここまでは、向こうの思惑通りという事か、ユーゴは、少し考えを整理して、

こうなると、魔族の予想を上回る戦力を整えるしか手はないかなあ、と両手を頭に乗せて、

「まいったな」と呟いた。


ミーティングのメンバーがほぼ全員揃った、

驚いたのは、ユーゴの仲間の他に、くれない屋の店員と夢魔法の館の踊り子が混じっていた事だった。

バーバラに聞くと

「私が鍛えた子たちよ、そこらの魔族に後れをとる訳無いじゃないの」と言って来た、

ユーゴは、しばらく使っていなかった鑑定魔法で彼女達を視た、

驚くことに、全員超一級の腕前だった、いつも気軽に給仕してもらっていた事にあらためて感謝した。

全員で七名、これだけでもかなりの戦力の上乗せだった。



バーバラは、全員を前にすると、まず今回のいきさつを説明しはじめる、

「いい事、今回の魔族の挑戦を受けなければ、行方不明になっていた探索者達は二度と戻ってこないと考えて間違いないわ」

バーバラの中では、探索者を助けに行くのはもはや決定事項のようだった、

それを聞いていた、ユイナの兄カイは、立ち上がり、皆に向かって「これは私からもお願い申し上げる」と言って、頭を下げていた。


そんなミーティングの会場の後ろの方で、

「なあ、バーバラさん、あれ怒ってるように見えて楽しんでるだろ、見た目が十歳ぐらい若返ってるぞ」

とバースが言う、

「なんか、個人的に因縁でもありそうな雰囲気だよな、あんなやる気のバーバラさん見た事ねえよ」

とコイルも言う、

「間違いない」とハンスもうなずいていた。


女性陣は、人質救出という単純な正義に燃えていた、ユイナは魔族と聞いただけで顔を紅潮させていた、逆にみそのは魔族にあまり接点がないらしく、比較的冷静に聞いている。


だが、余裕を持って話を聞いていられたのは、ここまでだった。


バーバラの説明は、魔族の実態に移った、

「百聞は一見に如かずよ」と言うと、バーバラは幻夢魔法を用いて、過去にあった魔族同士のいくさの様子を全員に見せた、

それを見たメンバーは、それまでの表情とは一変し、驚愕の表情に変わる、

強力なバーバラの幻無魔法は、ユーゴの頭にも届いた、

ユーゴは、正直魔族を舐めていたと反省し、まだまだ戦力が足りない事を実感した。


そんな一同の顔を見回したバーバラは、ニヤっと確かに魔族の血を引いてると思われる顔で笑った。

バーバラが楽しんでいる、というバースの指摘は当たっているようだった。




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