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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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魔族からの招待


 三日後、ようやく宴会後の体調が戻ったユーゴは、M1号改に乗ってダンジョンウォールに向かっていた、

M1号は、超古代の機械達に寄って改良が加えられていた、速度計や高度計が付き、レーダーまで搭載されている、ほぼユーゴの趣味で付けられたこれらの機能は、メルマが居れば必要ない物ばかりだが、やっぱりこの方が雰囲気が出る。

ギルドに行くのに、わざわざM1号改に乗らなくても亜空間を利用すれば済むのだが、この日は天気の良さに釣られて空の散歩としゃれこんだ。


ダンジョンウォールの屋上に作られた真新しい飛行艇発着所の隅にM1号改を止めて、ギルド長室に向かう、

ユーゴは白竜サラヴィに言われた言葉が気になっていた、

魔族が絡んでる、とはどういう事なのか、あのギルド長に惚けられないようにしないと、と気合を入れていた。


 ギルド長室のドアをノックする、どうぞ、との声にドア開け中に入ると、アポなしのユーゴの登場に少し慌てた様子ギルド長フランクがいた、

「ああ、ユーゴ君、その後ダンジョンの調査は進んでいるかな、いま、西側が騒がしくてね、散らかっているが、そこに座ってくれ」

と、落ち着きのない態度でソファーの座るよう勧めてきた、

「ダンジョンの最深部の見取り図が出来あっがたので、持ってきましたよ」とユーゴが数枚の見取り図を渡す、その見取り図は、水中の通路は土砂崩れですべて埋まってしまっているように描いてあった。


「ほほー、これはよく描けてる、今、ダンジョン内に数カ所ベース基地になる施設を建設中なんだ、今よりスムーズに重力魔石が取れるように、さらに奥にも作るつもりだ、とても助かるよ」

と見取り図を見て感心するフランク、

「特別魔族と繋がるような物はありませんでしたが、なぜ魔族は俺に調査させたんですかね」とユーゴはいきなりカマをかけた。


へ、いや、あれ、ユーゴ君知ってるの?、いやそんなはず無いな、グランと私しか知らないはずだ、

フランクは、平静を装って、

「何の事かな?これは単に重力魔石の為に調査を依頼しただけだよ」と言う、

「え、そうだったんですか?バーバラさんが評議会に魔族が来た、と言っていたんで、てっきり魔族がらみかと思ってたんですが」とちょっと魔力を解放してプレッシャーを掛けてフランクの目を覗く、

バーバラは、魔族の顔を見るとさっさと帰ってしまったそうで、その後に何があったのか知らないとユーゴに言っていたが、バーバラの得体の知れなさを出せば、観念するとユーゴは思っていた。


「あ、いや」と言葉を詰まらせるフランク、

するとフランクの後ろにスッと人の姿が現れた、


妖艶な美女、体に密着した黒と赤のドレスを身にまとい、頭には小さめだが鋭い水牛の様にウェーブした角が生えている。一目で魔族だと判った。

「ウフフ、初めまして、私の名はメビーラ、魔族体表として人間との交渉を任されているのよ」

美しい顔に、微笑みを浮かべながら自己紹介してくる、

その前でフランクが、首を振って、自分は知らないと目で訴えている。


ユーゴは、これじゃここの動きは駄々洩れじゃないかと、呆れてフランクを見ていた。

フランクは、ユーゴのそばまで退き、脂汗をかいている。


「今日は重要なお知らせがあってお邪魔したのよ」

少し間をおいて、勿体ぶる魔族メビーラ、そして微笑みを消してこういった、


「大魔王様が、復活なさったわ」


目を丸くして青ざめるフランク、

その横で、「あ、そう」とキョトンとユーゴはしていた。


ユーゴの態度を見て、ちょっとたじろぐメビーラ、気を取り直したように、

「お祝いに、魔族長ベゴール様がダンジョンで行方不明になった冒険者をお返しするそうよ、大魔王城まで迎えに来るようにとのお達しよ、もちろん来てくださるでしょ、ユーゴ様」


様づけで名指しされたユーゴは、え、俺? と自分を指さし、メビーラを見て確かめる、

メビーラは、何を言ってるのこの男は、と言う顔をして、

「ええ、もちろんユーゴ様です、他にいないでしょ?」と言って来た、

ユーゴは、フランクは無視なのか、うーん、どうしたもんかと考えていた。

メビーナは、ユーゴの他に魔王城まで来れる実力者はいないでしょ、と言う意味で言ったのだが、ユーゴには伝わっていなかった。


ユーゴは、ダンジョンの行方不明者となると、ユイナの兄、カイの意見も聞かなとな、と思い、

「相談したい仲間がいるんで、答えは待って欲しい」と言った。

すると、メビーラは、思惑通りの成り行きに、

「ええ、ゆっくりと相談するといいわ、いい返事を待っています」と言って微笑みを取り戻し、静かに消えていった。


メビーラが消えるとユーゴは振り返り、

「ちょっとフランクさん、ここのセキュリティはどうなってんだ」とフランクに食って掛かる、

「あ、いや、今は、それどころじゃないんじゃないかな」とフランクは青ざめたまま答えた。

その後、ユーゴはブツブツ言いながらギルド内の結界魔法を張り直し、数匹の魔族の偵察用の小さな魔獣を捕まえて外に放り出した。

ユーゴの後をおろおろしながら着いて回っていたフランクは、ユーゴのダンジョン探索が魔族の依頼だった事はもちろん白状していた。



その夜、先日の宴会でこっぴどく絞られたユーゴは、バーバラの所に昼間の出来事を報告に来ていた。

「いやあ、メビーラとかいう、もの凄い美人の魔族の人が来て、大魔王復活のお祝いに人質を返すから大魔王城まで迎えに来いって言うんですよ」と、ごく普通に言った。


「なんですって、またあの女が来たですって」と言ったかと思うと、バーバラはみるみる魔力があがり、おぞましいオーラを出しながら、

「ユーゴ、あんた魔族の大魔王城に来い、と言う意味を知っているのかい、それは、自分達を倒して、大魔王城まで来れる物なら来てみろという意味よ、いわば果たし状みたいなものなのよ」と続けた。

髪を逆立て、目を赤黒く光らせたバーバラの顔は、ユーゴがそれまで見たものの中で一番恐ろしいものだった。

うう、この人の方が魔族より恐ろしい、ユーゴがそう思っていると、

「ユーゴ、明日、あんたの戦力全部に召集をかけな、緊急ミーティングよ」

そう、バーバラが息巻く、


「せ、戦力、ですか?」

ユーゴは、まだ状況をよく呑み込めて無かった。







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