未来の花団
次の日、女性陣4人が揃ってユーゴの所にやって来た。
ユーゴは、平常心を心掛け、なるべく自然にふるまうべく、笑顔を浮かべた、
だが、笑顔を浮かべる時点で、普通とは違っている事にユーゴは気が付かなかった。
「ユーゴ殿、今日は報告があって参った」と至って冷静に、そう言って来たのはみそのだった。
ユイナとアイーダは、少し不機嫌そうにみそのの後ろに立っている、
みゆきは、なぜか一人少し離れた所で、ニコニコ笑っていた。
「はひ、なんでございましょう」ユーゴは思わず敬語で答える。
「私達は昨日、西の国のある教会から、奴隷として監禁されていた獣人の女性4人を救い出す事に成功しました」と言って来る。
「あ、ああ、それは大変だったでしょう、ご苦労様でした」と答えるユーゴ、
「今回の作戦は、敵に漏れていた可能性があり、もう少しで皆さんを危険に晒すところでした、まずはその点をお詫びしたい」そういって頭を下げるみその、しかし、とても謝ってるようには感じられなかった。
「そ、そうだったの?、これからは慎重に、気を付けましょうね」と答える。
「少し不審点があったので、ご報告します、まず私達4人が倒した相手は全部で14人でした、しかし、後から確認したところ、17人の男が倒れていました」とみそのは表情を変えずに言う、
後ろのユイナとアイーダが身を乗り出すのが判った、
「え、ああ、そうなの?なにがあったんでしょうねえ」とユーゴが答えると、
「ふん、惚けてないで本当の事いいなさい、それだけじゃないのよ、この子がB2と遊んでいたわ、どいう事?」そう言って来たアイーダは、後ろに隠していたB8を胸の前で抱き抱えた。
「この子達、嘘が下手なの、知ってた?」
B8、おまえ、何してくれちゃってるんだよ、ユーゴは頭に手をやり、この期に及んで言い訳を考えていた、
「いいですかユーゴさん、私達はあなたの秘密は守ります、どうか正直にお話しください」そう言って来たのはユイナだった、
「私達は、貴方の正体については、おおよそ検討が付いています、ですから多少隠し事があっても仕方無いと思っています、しかし、どうやって私達を監視ししていたのか、それだけはお話ししていただきたい」
みそのは、さっきより語気が荒くなっている。
ユーゴが絶句して困っていると、みゆきが前に出てきた、
「ユーゴさん、実は私達、一人で奴隷の方達を救おうとしていた方にお会いしまして、その方のお話をお聞きしたら、私達と同じ転移者だったんですよ、もっとも転移して来たのは400年前だそうですが、その人は上位神の存在も知ってらっしゃったの」
みゆきは、もう諦めろという顔でユーゴを見た。
え、転移者?ユーゴはビックリしてみゆきを見返す、
「その人は、今どこにいるの」そう言って立ち上がるユーゴ、
「ちょっと待って、その前に、私達をどう監視してたか説明しなさい」とアイーダがユーゴの前に立ちふさがった、
「ああ、それは・・」と頬を掻きながら、これは全部説明するしか無いかなあ、と思っていると、
(この状況は、全て説明する他、打開策がありません)とメルマが言って来た。
あ、やっぱりそう思う? じゃ、説明頼むよ、とユーゴはメルマに頭の中で言う、
(・・・・これは、本人が説明した方が誠意が伝わると予想)
何言ってるの、誠意って、ここはそういう事じゃ無く正確さが大切だろ、俺だと色々感情も入っちゃうし、
(当機の事も、説明していいのですか)
ああ、もうこうなったらすべて話せ、それで偵察ロボットの件は地図上に配置カ所を見せて、決して個人を監視している訳では無いことを、よーーく説明してくれ。
(了承)ようやく、メルマが了承すると、場所を亜空間の魔法訓練所に移し、テーブルと椅子を用意して、
「じゃ、メルマから説明させるから、よく聞いてやってくれ」と言ってユーゴはせっせとお茶の用意をした。
メルマから話を聞いてる女性陣は、想像以上の突拍子もない内容に、目を丸くしたり、口を押えたりして聴き入っていた、
それまで、平静に聞いていたみゆきは、超古代科学の話になると、誰よりも興奮しているのが判った、
化学の発達で人類が滅亡したと聞いても、他の三人は理解できなかったが、みゆきは「それはあり得るわね」と呟き、それを管理しているロボット達が居ると聞いて、
「アンドロイド、アンドロイドがいるのですか」そう言って立ち上がってユーゴを見た。
他の三人はキョトンとしている、
ユーゴは、みゆきの姿を見て、頭に手をやり、もうこうなったら仕方ないと、機械達のいる部屋と魔法訓練所の間に通路を作った。
そして、メルマに呼び出されたブルーとオレンジが現れる、
みそのはさっと距離を取り小太刀を構える、
ユイナも腰の件に手をやり、油断なく構えた、
アイーダは、ほけーっとアンドロイドを見ていた、
そしてみゆきは、胸の前で手を組み、アイドルかなにかに会ったような様子で、アンドロイドに駆け寄っていた、
アンドロイドの方は、すでに女性達の事は承知してる様子で、
「ユーゴさんにお世話になった、バーチャル世界管理システムのアンドロイド、ブルーとオレンジです」と自己紹介してきた。
メルマが間に入って、色々説明している。
メルマに任せて本当に良かったとユーゴは思っていた。
納得したのかしないのか、よく判らなかったが、4人が落ち着いてきた所で、
「じゃ、次は俺の番だ、転移者に会わせてくれ」とユーゴ言うと、
「まだよ、最後にユーゴ、あなたの部屋を見せてちょうだい、そこに監視なんたらがあるんでしょ」
とアイーダが言って来た、
「監視システムな」とユーゴは言いながら、あそこは俺の最後の聖域だぞ、見せたく無いなあと思っていた。
(こうなったら、自室は新たに作るしかありません、あの部屋は解放してください)
と、質問攻めにあって四苦八苦してたメルマが言って来る。
フー、仕方ないか、とため息をついた後、ユーゴは自室を解放した。
しばらく世話になったベットを消し、ソファーとテーブルを出す、
みそのはその様子を見て、「時空魔法とは、ほんとうに凄い」と感心していた。
ユーゴがみそのに、「ところで、この事を、どうお国に知らせるつもりですか?」とそっと聞いた、
するとみそのは、「知らせません、どうせ信用してもらえませんから」ときっぱり言い切った。
アイーダは、メルマにモニター見せて、とせがみ、次々写しだされる西側の様子を見入っていた。
オー、フェー、ここ知ってる、と声を上げ感嘆したかと思うと、突然振り返り、ユーゴに向かってこう宣言した。
「ここをこれから、私達の作戦室にするわ、ユーゴは別に自分の部屋を作って頂戴、私達は蝙蝠の羽から独立し、チーム未来の花団を結成します」
アイーダは腰に手を当てたお得意のポーズでニカッと笑った、
他の三人もうなずいたり笑ったりしている。
「そうね、メンバーは私達の他に、そこにいるアンドなんとかの二人も入って頂戴」
そう言われた、ブルーとオレンジは「アンドロイドです」と返し、体をチカチカさせながら嬉しそうにしているように見えた。
ユーゴはうな垂れ、何も言わずに首を横に振っていた。




