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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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偵察ロボット


 それじゃ、私はこの辺で、と言って神ゲブスが去った後、

「引っ越しはどの位かかる?」とユーゴが訪ねると、「68時間42分の予定です」とオレンジが答えてきた。

「引っ越しした後、跡地はどうするの?」と聞くと、

「地上から発見されないようように、上層は埋め立てる予定です、」と答えた。


ユーゴは、迷いの地、と呼ばれた地域も無くなるという訳か、そりゃグランさんが喜ぶな、でも、色々説明が面倒くさいから黙っておこう、と考えていた。

じゃあ、俺も一旦帰るとするか、

「後で、また、様子を見に来るから、一旦帰るね」そう言ってその場から、スッと姿を消した。


 自室に戻ったユーゴは、

「ところでメルマ、おまえ、俺がエスカレーターの中で苦しんでる時、何もせずに静観していたな」

と、メルマに胡乱な目つきで聞いた、

(あの時点で、マスターに危険は無いと判断、有用な情報を手に入れる為には必要な事と判断しました)

とメルマはいつもの機械口調で言って来る、

「ほーん、何もお前が向こうの情報を俺に伝えればそれで済んだんじゃないのか?、前もって警告しなかったのはどういう訳だ?」ちょっときつめの口調でユーゴが問いただす、

(当機にも未知なシステムが多岐に渡り確認されました、それを解明するためにはマスターにバーチャル世界に入って頂く必要がありました)といつもと変わらずに言う、

「つまり、俺を実験に使ったという事だな」ユーゴがそう言うと、

(安全は保障されてました、・・・マスターを納得させるにも必要な処置と判断しました)

いつもの機械口調だが、少し詰まり気味に答えるメルマ、

「ふん、それに見合った成果を見せてもらおう」ユーゴはメルマを脇に抱え、閉めつけながら言っていた。



それから十日後の夜、ユーゴは亜空間を通って西側のとある国の王都にいた、狭い路地にはいると、

「じゃ、情報収集頼むよ」と言って、小さな蜘蛛型のロボットを十体を地に放った。

ロボットたちは、闇に紛れて散っていった。

「さて、これで粗方済んだかな」ユーゴはそう言うと、再び亜空間に戻って行った。

自室に戻ったユーゴを、「おかえりなさいませ」と迎える声がする、

「ただいま」とユーゴが答えると、

「偵察ロボットは役にたちそうですか」と女性型アンドロイド、オレンジが聞いてきた。


ユーゴは、メルマの提案で、偵察に使えるロボットの製作をオレンジに依頼した、マザーコンピューターは、自分から独立させメルマとリンクさせる事を条件に承諾したのだった。

偵察ロボットを使う事で起こる事は、責任を持たないという意思表示のようだった。


偵察ロボットの製作は、嘘の様に簡単だった、

亜空間に引っ越した施設の中に、作業用蜘蛛型ロボットのメンテナスと製作専用のボックス型の機械があり、そこで数分で次々出来上がって来た。とりあえず二百機の偵察ロボットを作り、西側各地とイスタン、それにインターキのギルドにも配置していた。

形は作業用ロボットに近いが、大きさがかなり小さい、親指の爪程の大きさだった。

その大きさに独立した人工頭脳、カメラ、盗聴器も入っている、超古代の化学力の凄さを改めて見せられた気分だった、魔法による盗聴は、魔力の強い者には気づかれる心配があるが、魔力をまったく持たない偵察ロボットはその心配が無かった、極めつけにこの小ささなのに光学迷彩機能まで搭載されていた。


ユーゴの部屋には、専用の机も設置された、机の上に偵察ロボットから送られてくる画像がうきでるようになっている、メルマが重要度を検索してユーゴに見せるようになっていた。

この空間だけは、まさにSFの世界だった。


「こりゃあ、滅茶苦茶便利だよ」とユーゴはオレンジに答える、

ただし、こんな事をしてると女性陣にばれたら、間違いなく絞殺されるなと心の中で思っていた、

今、机の上のモニターには、みそのがとある町の教会に忍び込んで猫二匹を放ってる様子が映し出されていた。

「ギルドに大人しくしてろと言われてるし、俺も目立ちたくはないかならな、ありがたいよ」

ユーゴがそう続けると、

「私達にはモニターは必要ありませんでしたので、モニター技術の開発はしてきませんでした、これからはそちらの技術にも力を入れるようにします」とオレンジがお茶を運びながら答える、

「いやいや、これで充分凄いけんですけど」とユーゴは逆に呆れて言った。


次の日、ユーゴは朝食後のコーヒーの時間をいつもより長くしていた、

そろそろ来る頃だと思うんだがなあ、と二杯目のコーヒーをのんでいると、

「わたし、ちょっと用事があるんで出掛けますね」とみゆきが出て行ってしまった。

あれ、もしかして、俺に内緒でなんかやってるのか?とみゆきを顎をさすりながら見送った。


昨夜、みそのは教会に監禁されている奴隷を発見していた、それを知ったユーゴは今朝当たりに救出してくれと連絡があるだろうと踏んで、朝食後待っていたのだ、それが連絡が来るどころかみゆきが出掛けて行ってしまった。

「メルマ、様子がおかしい、ちょっと調べてくれ」と言いながら部屋に戻り、机に座り映し出されるモニターを見た。


「ユーゴ殿に連絡だけでも入れて置いた方がよいのではないか」とユイナが言っている、

「いや、グラン殿の話では、いまユーゴ殿には別の依頼をしているとか、それにしばらく表に出したくないとおしゃっていた」と言ったのはみそのだった、

「ユーゴの方も、コソコソ一人でなんかやっているのよ、知らせる必要なんか無いわよ」という声、これはアイーダだった、

そこにみゆきが現れて、

「ユーゴさん、今朝は暇そうにしていたわよ、向こうの仕事は終わったのかしら」と言っている。

「今回は、ユーゴ殿を抜いて計画を立てました、このまま実行しましょう、それにイアンさんの魔法陣があれば、それほど難しい計画ではありません」とみそのが言った。


「イアン?誰よそれ」ユーゴは初めて聞く名に戸惑いながらも、

まあ、みそのさんがああ言うんだ、そう心配はいらないだろう、ここで見張って危なくなったら出て行けばいいな、と今回は見物に回る事にした。

にしても、余計な事はするな、と言っておいたのになあ、ユイナさんまで黙ってるなんて、と自分が隠し事をしている事を棚に上げ、不満げなユーゴだった。


夜になって、メルマから(動きがありました)との連絡をうけ、机に座りモニターを見るユーゴ、

ヒルフォーマー商会の応接室、そこには、女性陣の他にもう一人、みすぼらしい神父服を着た男が立っていた、

あれ、この人、どっかで見た事があるような・・・、ユーゴが思い出そうと頭をひねっていると、

(ファントラス王国の港で、少年と一緒にいた男です)とメルマが言って来た。

ああ、あの時の、ユーゴも港の事を思い出す、でも、なんでここに?

不思議に思いながら、ユーゴはモニターを注視した。



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