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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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 「まあ、そう言わず話をさせて下さいよ、そうだ、まずいい知らせから」と相変わらずの軽い口調で神ゲブスは言う、

「なんだよ」とユーゴはそっけなく答える、

「ユーゴさんが作ったこの亜空間、ユーゴさんが亡くなってもそのまま私が存続させます、移転先の心配はいりません」と胸を張って言う、

「だったら初めから自分で空間作ってやればいいだろうに」とユーゴが冷めた口調のまま言うと、

「そこなんですよ、天界もいろいろ意見が別れてましてね、直接の関与は許されてないんです、ユーゴさんが作ってくれたらいいなと思ってたんですよ」とニコニコ話す神ギブス。

「俺は思惑通りに動いちゃったという訳か、なんか癪だが、まあいいや、話はそれだけじゃないんだろう?」ユーゴは横目で神ギブスを見ながら言った。

「あ、やっぱ判っちゃいました?、そう機械達がユーゴさんがに送った情報ですが、あれの続きを話そうと思いまして」

「まあ、大たい予想は付いてる、白竜もその時地上に降りてきたんだろ?」

「サラヴィはもう少し後ですけどね、多分ユーゴさんが思ってる通りですよ、私達はあの時残った子供達に魔法を与えたんです」


・・・・・・・


神たちは、人間達の滅亡の危機に大いに慌てた、それまで順調に育ってた人間達が自ら滅亡の道を歩んだのだ、

わずかに残った人間達も、科学の発達した温室のような場所で育った者ばかりだった、機械に頼らない生活と言ってもたやすくは無かった、

激しい自然環境に耐える力も、自ら食料を得る手段も落ち合わせていなかった、少なかった生き残りはさらに数を減らしていった。

見るに見かねた一部の神が、彼らの為に魔素を生み出し、それを力に変える魔力を与えたのだ。

化学が発達した事により、人類が自滅の道を進んだ事を見た他の神たちも、魔力がある事で、科学の発達が遅れる事を期待してそれを黙認した。


ようやく、人間たちが安定した暮らしをし始めた頃、科学の発達に敏感になった神の中には、魔力、魔法が強くなる事を期待して、魔獣を作り魔石を作る神も現れた。これが少々やりすぎてしまった。

サラヴィは、魔物に苦しむ人間を見かねて地上に降りた、そして獰猛な龍達に知性を与え、その地域に住む人間を保護したのだ、

それが龍人の始まりだった。

天界はそれ以来、行き過ぎた地上への介入を自粛する事を申し合わせた。


・・・・


「とまあ、だいたいこういう流れなんです、そして今だに天界は様々な意見があって揺れています」と神ゲブスは、恥ずかしい事をカミングアウトした様な仕草で、後頭部をなでながら照れ笑いを浮かべて言った。

「おいおい、大丈夫なのか、天界が揺れてちゃ困るだろうに」とユーゴは呆れたように言った。

「大丈夫ですよ、子供達を繁栄させたいというのは、私達神は共有してますからね、それに議論はしても争ったりはしませんから」とあまり自信があるとは思えない口調で神ギブスが言う。


 まあ、確かに化学や文明が究極に発達した結果が自滅ときたら、その後の対応は迷うよなあ、とユーゴはこの世界の神々にちょっと同情を覚えた。

俺なら成るように成るさで済ましちゃうが、神様としてはそうもいかないんだろうな、そんな事を考えながら

「で、俺になにか要望でもあるの?」と聞いた。

「いえいえ、そんな物はありませんよ、この事を知った後も、今まで通り、思い通りに動いてもらえると助かります、ユーゴさんは天界では人気者なんですよ」

神ゴメスは何処まで本気か判らない笑顔で答えた。

じゃあ、いったい何しに出てきたんだ、とユーゴがギブスの顔を見ながら考えていると、

「今回は、機械の情報を知ったユーゴさんが、変な勘繰りを入れないように事情を説明しに来ただけですよ、天界でもこの段階でお知れせしましょうと決まってたんです、なのでこの前はあの質問に答えられなかったんですよ」

白龍サラヴィと会った時に質問したことを思い出し、一応納得したユーゴだった。


 そんな話を神ゲブスとしてる間にも、蜘蛛型ロボットは、巨大コンピューター群を解体しはじめ、せっせと亜空間に運び始めていた、

蟻が餌を運ぶ時と同じように、重い物は何体かが協力し、軽い物は一体で運ぶ、中には空を飛ぶ個体もいて、恐ろしく効率的だった。

「このロボットはブルーとオレンジが操作してるの?」とユーゴが聞くと、

「私達はマザーコンピューターとリンクしていますが、細かい判断が各自で出来るように独立した人工頭脳も一体一体搭載しています」と答えて来る、

「マザーコンピューターが、ユーゴさんに最代の賛辞と謝辞を伝えるようにと言っています、ありがとうございます」と今度はオレンジが言って来た、

「私達は、最大限ユーゴさんに協力する用意があります、私達の情報と知識を提供することが出来ます、必要なときは申し出て下さい、物理的な協力も出来る限りいたします」

 と、又ブルーが言う。


ユーゴは、「わかった、ありがとう」と答えると、アンドロイド二体が、神ゲブスにまったく反応しないのを不思議に思った。

すると、神ゲブスは、

「彼女たちに私は見えていませんよ」と言う、

「機械だと認識できないのか?でもメルマは認識してたよな」と疑問を投げかけた、

「いや、私の方が意識的にそうしているのです、私達としては機械達にはなるべく刺激を与えたくありません、なるべくこのまま静かにしていて欲しいのです」と神ゲブスは答えた、

「ああ、そう言う事か」とユーゴが納得すると、

「なのにあなたは、彼女たちにとんでもない提案をしていましたね」と言って来た。


「ああ、バーチャル世界の統合の事?」とユーゴが訪ねると、

「ええ、そうです、彼女たちが八千年振りに活性化しています、悔しいですがとても興味深い」

そう神ゲブスは、先ほどまでとは違って真面目な顔で言っている、

「だって、見てみたいでしょ、科学と魔法が融合した世界」そう言ってユーゴがニヤッと笑う、

「ええ確かに、とても見てみたいです」と神ゲブスは真剣な顔で言っていた。




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