アンドロイド
隣で、みゆきとユイナが楽しそうにおしゃべりをしている、初夏の日差しが気持ちいい。
こんな世界がずっと続いたら幸せだろうな、とユーゴは思った。
その瞬間、今までいたキャンパスの景色が消え、何処までも続く草原にユーゴは立っていた、
そして、少し離れた場所に、一目でアンドロイドと判る白い女性の体つきをした機械がこちらを向いてたっている。
「いかがでしたか、私達があなたの記憶から作ったバーチャル世界は」とそのアンドロイドが聞いてきた、
そんなこったろうと思ったよ、とユーゴは頭を掻いて、
「幸せそうな世界ではあったが、あまり愉快では無かった」と答えた。
すると、もう一体、同じようなアンドロイドが反対側に現れて、
「それは私達にとって、好ましい答えです」と言ってきた。
「で、あんた達はいったい何者で、何のためにこんな事をする」とユーゴが聞く、
「私達は、あなたに危害を加えるものではありません、ぜひお話を聞いていただきたいのです」
アンドロイドがそう言った後、スッとメルマが姿を現した、
(マスター、この機械たちは敵対する存在ではありません、とても興味深い情報を持っています)と言って来る、
こいつ、今までどこに行ってたんだよ、機械同士でお茶でものんでたのか、とユーゴが思っていると、
「あなたの所有する機体名メルマから、貴方の情報を得ました、私達はあなたに大変興味があります、ぜひ話を聞いてください」
ちっ、本当にお茶飲んでやがったな、メルマが取り込まれたんじゃどうにもならんな、
「聞くもなにも、ここから出るには聞くしかないんだろう」ユーゴが不機嫌にそう言うと、
「そんな事はありません」とアンドロイドが言う、
すると、今まで立っていた草原が消え、気が付くとユーゴはカプセルのような物の中で横になっていた。
「これはバーチャル世界に接続するための接続カプセル、ユーゴさんの脳はノーマルですので全身を包むこのような機械が必要なのです」
カプセルの横に立っていたアンドロイドがそう説明する。
もう一体のアンドロイドがユーゴの背中に手を回し、優しくユーゴを起き上がらせる、ユーゴはちょっと乗り物酔いのような不快感を感じたが、自分の治癒魔法ですぐ直った。
カプセルから出て周りを見渡す、
異様に清潔な工場、という印象だった、壁は金属むき出しで飾り気は一切なく、コンピューターと思われる四角い機会が無数に並んでいた、かなり科学が発達してると思われるが、その割にコンピューターが巨大なのが気になった。
「私達の名前は、バーチャルチップ保護システム、個体名はありません、私達の大元を作ったのは、8000年前にバーチャル世界を開発した人間達です、人間たちが居なくなった後も、このシステムによって改良を繰り返しています」とアンドロイドが説明する。
「あー、あー、何を言ってるのかよく判らない、メルマ、俺にも判るように説明してくれ」とユーゴが言うと、
(メルマは、言語での説明は時間がかかります、直接情報を共有します)とメルマが答えた、すると、ユーゴの頭に映像を含めた大量の情報が入ってくる、ユーゴは突然の出来事に頭を押さえ唸っていた。
・・・・・・・
8000年前、この世界は魔力も魔法も無い、ユーゴが元居た地球と同じような物理法則の世界だった。
科学は驚異的な発展を遂げ、人工太陽炉を開発し、エネルギーは無尽蔵に使用できた、食料もあらゆる物質から栄養素を取り出す技術が出来上がり、人工頭脳技術も発達して、機械が機械を開発するまでに進んでいた。
人々は働く必要のない世界を作り上げていた。
何もしなくてよくなった人類は、娯楽だけに興味を向けるようになっていった、その結果恐るべきことが起きていた、
人類は急激に人口を減らし、最後にはほとんど子孫を作らなくなってしまっていた。
バーチャル技術が発展すると、人々はすべてバーチャル世界で事を成すようになっていった。
初めは多数が参加する形のバーチャル世界が主流だったが、思い通りにならない人間より、人工的に作られたアバターと過ごす方が楽だと判ると、バーチャル世界は細分化し、最後には自分専用のバーチャル世界を作り出し、そこにこもりっぱなしになっていった。
バーチャル世界で、自分の思い通りの相手と恋愛し、子供もアバターで代用した、そして失敗すると時間を戻してやり直す事も出来た。
浮気しようが、ハーレムを作ろうが、犯罪を犯そうが、誰も文句を言わない、魔法を使える世界も、宇宙空間で生活する事も、何でも可能なバーチャルの世界、そして飽きてしまえば何度でもやり直しができるバーチャルの世界。
そんな暮らしを当たり前として送ってしまった人類は、現実世界には戻れなくなってしまったのだ。
当然、そこに子孫は生まれなかった。
人工頭脳には、人間に逆らわないというプログラムが入っていた、その結果この事態を止めることが出来なかった。
その結果、科学文明と人類は滅亡しはじめていった。
そんな世界に危機感を持った極々一部の人間は、機械に頼らない生活を送ろうと、人工頭脳が管理する施設から出て行った、
人工頭脳は人間に逆らえない、人々が外で暮らしたいと願えば逆らう事は出来なかった。
人間の誰もいない都市に残った人工頭脳と機械達は、出て行った人々の邪魔をしないようにしようと判断した。
人々が居なくなったアバターだけのバーチャル世界を保存するこの施設だけを残す事にし、不必要となった施設をすべて破壊した。
そして、外の世界に影響が出ないように、この施設を8000年もの間隠し続けたのだった
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情報の流入が終わったユーゴは、「この方法はもう辞めてくれ」と頭を振りながら情けない声でメルマに言った。
そして、自分がいた元の世界でも、先進国の人口減少が進んでいる事を思い出していた。




