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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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パーティでお披露目


 ユーゴはジャステス武器屋に来ていた、だが臨時休業の看板が下がっている。

仕方が無いのでジェラールの研究所に向かった、ここにも人影らしきものは無い。

みんな何処にいったのやら、と思っていると、カークが早足でこちらに向かって来た。

「あ、ユーゴさん、ジャステスさんなら、街の外に出来た飛行艇組み立て工場にいますよ、親父さんも一緒です」と言って来た、

「いつの間にそんなものが出来たんだ」とユーゴがビックリしていると。

「僕、特殊な道具を取りに戻って来た所なんです、一緒に行ってみませんか」と言われ、ユーゴはそうだなと頷いた。


「カーク、お前に作ってもらいたい物があるんだ」工場に向かう道すがらユーゴはカークに言った、

「え、僕にですか?」カークは驚いたが、「何でも言ってください、良い物を作って見せます」と言って嬉しそうに笑った。


工場に着くと、まずその大きさに驚いた、成程これは街の中には作れない、城壁の外じゃなきゃ無理な大きさだった。

中に入ると、シースカイ号の屋根を高くした形の大きな飛行艇が、ほぼ完成した姿で鎮座していた。

「シースカイ号の三倍の大きさか、でかいな」とユーゴが言うと、

「定員は五十名、それくらい乗れないと採算が取れないんだとよ」ジャステスがユーゴを見つけて言って来る。

「もう完成してるのか?」とユーゴが聞くと、

「後は内装がもう少しだ、その後のテスト飛行なんだが、念のためにお前に乗ってもらいたいとジェラールが言っていたぞ」とジャステスが言う

「ああ、喜んで乗せてもらうよ」ユーゴは笑って答えた。

「話は変わるが、カークがやけに張り切っていたが、何を頼んだんだ?」とジャステスが聞く、

「ああ、このでかい奴とは真逆の乗り物だ」と言ってユーゴはウインクして見せた。


カークは板金の職人と何やら話し終わると、ユーゴとジャステスの所にやって来て、

「これなら、ここに余ってっる板金で間に合うそうです、噴射口は模型に使った奴が丁度良さそうなんで、一週間もあれば出来るとおもいますよ」とユーゴがメルマと相談しながら描いた図面を手にしながら言う。

「これは、水に潜るのも前提だから、出入り口の防水も頼むぞ、まあ、少々の事は俺の魔法でなんとかなるがな」

「任しといてください、僕、ユーゴさんに貰った指輪のおかげで、魔法加工もかなり腕を上げたんです」とカークは腕を曲げ力こぶを作る動作をする、ユーゴは、嬉しそうにその力こぶを叩いて「頼んだぞ」と言う、

「なんだ、これは、・・一人乗りの飛行艇か」ジャステスがカークの持っていた図面を見て言う。

「ああ、俺の専用機だ」ユーゴはニヤッと笑った。

用事の済んがだユーゴは、外に出ると「おっと、ここにも出入り口を作っておくか」そう言ってスッと姿を消した。


数日後、ヒルフォーマー商会のインターキ支店で、飛行艇完成記念パーティーが開かれていた。

大型飛行艇のテスト飛行は無事終わっていた、この日の為に訓練を重ねた風魔法師は、四つの噴射口を見事に操り、静かに飛行艇を飛ばしてみせた、念のために乗り込んだユーゴの出番は全く無かった。

スクルトの司会で、グランが挨拶し、続いてジェラールが挨拶をしている、立食式の会場で、ユーゴの周りの女性陣はひときわ目を惹いた。

アイーダは年相応の可愛らしいドレスを着て、ご機嫌で食べ物を物色している。

みゆきはいつもの趣味とは違う、ちょっと妖艶なドレスを着ていた、後で聞くとバーバラのお下がりらしい、だが、それが妙に似合っていた。

みそのは、グランのそばで控えめに立っていたが、黒のドレスはあまりに目立っていた、忍びがあれじゃまずいだろと思われるくらい目を惹いた。

だが、注目度ではユイナの右に出る者はいなかった、パーティと聞いて着るものに困ったユイナは、純白の白竜の巫女服を着ていた、銀の髪飾りも付けた正式な物だ、髪を切って凛々しさを増した顔立ちは、この人は実は女神です、と言われたら信じてしまいそうなくらい美しかった。


男性陣もそれなりに頑張ってはいるものの、普段のがさつさは服装だけでは誤魔化せない、途中からは酒も入って、いつもの親父になっていた。

時の人となっていたユーゴは、気楽に酒を飲める状態では無かった、次から次へと知らない顔が挨拶に来る、元商社マンは愛想笑いで何とか乗り切っていた。


パーティーも中ほどに差し掛かった頃、紅い幕で覆われた全長三メートルほどの大きさの物が会場に運び込まれた、

ギルド長のフランクがその前に立って、

「皆さん、ご注目下さい、我がギルド所属の稀代の魔導士、ユーゴタチバナ専用機がこちらです」そう言うと紅い幕が開けられ、緑の本体がピカピカに光った超小型飛行艇が現れた。


それを見たユーゴは飲んでいたワインを吹き出しそうなる、カークがこっちを見て拝む様に頭を下げていた。

「この飛行艇は、ユーゴ君が自ら設計し、我が町の技術者達によって作られたものです、この世界が大きく変わる事を予感させる素晴らしい乗り物です」フランクが続けて説明する。


周りの人達は、おおー、と声を上げると、飛行艇に近づき、様々な角度からそれを見ていた、

いつのまにかユーゴの隣に来ていたグランが、

「すいませんねユーゴさん、あれの請求書がギルドに来た時、私もたまたまそこに居ましてね、費用は出すから宣伝に使わせてくれと頼んだんですよ」とにっこり笑って言って来る。


ユーゴは、費用はどうせギルド持ちだ、吹っ掛けていいぞ、とカークに言ったのを思い出していた。

フランクもユーゴの所に来て、

「費用は持ったんだ、これくらいは許してくれ、あれはいい、あの機体は君専用だから魔石を一切使ってないらしいが、魔石を使ったあれに似たものを量産するつもりだ」と興奮気味に言って来る、

ユーゴは、こいつ、絶対ヌルヌル付けにしてやる、と思っていた。

「いや、参りましたユーゴさん、あなたの設計したあの小型飛行艇、あの美しいフォルムは私のような技術屋には思いつかない、素晴らしい」今度はジェラールが心底感心したという面持ちで言って来た。

ユーゴは、まあいずれバレる事だしな、と頭を掻いて諦める事にした。


初期のレーシングカーのようなフォルムのその飛行艇は、車体の底から浮遊の為の風を出すようになっていて、推進用の噴射口は座席の後ろに左右に二つ、車体にくっ付くように付いていた。

要するに、少年が夢の車を描けと言われて描いたような、カッコイイおもちゃの様なフォルムだったのだ。

ここに集まってる大人たちは、初めてレーシングカーの実物を見る子供のような気分で、その飛行艇を見ていたのだろう。


ユーゴは、この飛行艇でダンジョンの最深部の水中を探索するつもりで作らせたのだが、探索だけが目的なら自分の魔法だけで何とかなるのは判っていた。この飛行艇は、ユーゴの全くの趣味で作らせたものだった。

それが、これだけ注目を浴びるとは、ユーゴにも予想外だった。





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