亜空間の部屋
明け方前にインターキの街に着いた一行は、寝間着姿のみゆきにユーゴのマントを貸して、くれない屋に向かった、流石にしゃべり疲れたのか、みゆきはキョロキョロと街並みを眺めながら静かに着いてくる。
くれない屋に着くと、疲れ切った表情をしたみゆきを、とりあえずユーゴの部屋のベットで寝るように即した、遠慮する様子だったが、構わないからと半ば強引に寝る事を強制した。
ドイルは、残ったユーゴに着いて来いと、店の奥にある隠し通路のような場所に向かった、通路は【夢魔法の館】にも通じてるようだったが、使っているのを見たことは無い。一番奥まで行くと地下への階段があった、階段を降りるとやはり通路があり、扉が三つ左右に並んでいる。
「この扉の向こうがわしの部屋じゃ、そっちの扉は物置のような物じゃ、わし以外は入れないようになっておる。まあ、わしが許可の魔法を施せば別じゃがの、少々散らかっておるでの、今、入れる訳にはいかぬ」
と、ちょっと訳ありそうな顔をする。
「それでじゃ、ユーゴ、お前には自分で自分の部屋を作ってもらおうと思う、どうせ、今までの部屋は嬢ちゃんに譲る事になるじゃろうからの」
ユーゴは、ちょっと何言ってるのか判らないという表情でドイルを見返し、
「作る?と言われても、ここ地下ですよね?」と困惑して聞いた。
ドイルは思った通りの反応、とうなずき、
「なあに、次元魔法の応用じゃ、お主がポシェットを作った時と同じように、空間をイメージするのじゃ、
ただの空間ではなく、ちゃんと生活できる部屋をな、くれぐれも部屋をイメージするのだぞ、お前の魔力じゃと、とんでもない空間を作りかねんからのう」と言った。
言われるまま、壁に手を当て、まずは扉をイメージ、そしてその奥に自分が住む部屋をイメージする。
経験上、その魔法にふさわしい名前をつけて念じるとやり易かったので、「空間構築」と名付けて念じた。
すると、スーっと壁に扉が浮き上がってくる、頭の中で空間を押し広げてる感覚があり、しばらくすると収まった。
ドイルは、「ふむ、出来たようじゃの、念のため固定の魔法を掛けておくとよい、でないと体調や精神状態で崩れてしまう時があるでな。基本お前にしか入れないが、この中でなら、無から有も作れるぞ、ベットや家具も作り放題じゃて」と言って笑っている。
ユーゴは半信半疑で扉を開けると、確かにイメージした通りの部屋があった、魔力ってすげえ。
「流石に疲れたじゃろう、少し休むがいい、わしもそうする」と言ってドイルは自分の部屋に入っていった。
ユーゴはこの世界に来てから、自分の睡眠量が増えていると感じていた、特に魔力を多く使った後はよく眠るようになっていた、徹夜明けとなってしまったこの日は、かなりの睡魔が襲ってきていた。
自分で作った部屋に入って、ベットを思い浮かべると、ドイルが言ったとおり、何も無い所にベットが浮き出てきた、それは普通の空間では出来ない事だった。ユーマはベットに入ると、あっという間に寝息を立てていた。
とても目覚めが良かった、普段の睡眠より疲れが取れてるような気がした、安眠をもたらしてくれたベットが、どんな豪華なベットでも作れたはずなのに、質素な普通のベットであることに、性格かなと苦笑いを浮かべていると、そんなユーゴの気分を害するように人の気配がした。
それは、人では無く大地神ゲブスであった。
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