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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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やけくそ


 いつも冷静で落ち着き払った態度でいるグランでさえ、口を半開きにしたまま呆然としていた。

なんとか落ち着きを取り戻すと、

「今の魔族、ベゴールと名乗っていましたね、ベゴールとは大魔王が不在の今、実質魔族の国家同盟の指導者、ナンバー1ですよ」とまだ驚きを隠せない表情で言う。

「え、そうなの?、どうりでもの凄い魔力だった訳だ」とユーゴは頭を掻きながらごく普通を装って言った。

「そうなの、じゃないですよ、あなたはその魔族のボスと同等の魔力を出して普通に話してたじゃないですか」とグランは突っ込んでくる。


だよねー、出しちゃったよねー、魔力、・・誤魔化し効かないよなこれ。


ユーゴは、うまい事ベゴールに誘導された事を悟り、してやられたとかなり怒っていた。

しかも、ここは西の国ファントラス王国だ、ユーゴの魔力がここでばれてしまったのは、平穏な生活を望むユーゴにとって痛手だった。

案の定、ファントラス王国の兵士達は、ユーゴに向かって直立不動で敬礼をしている。

隊長らしき男が、

「ユーゴ殿、ぜひ、我が上官ともお会いして頂きたい」と言って来た。

ユーゴは、ため息をつくと、開き直って言った。

「いやいや、それは遠慮しとくよ、俺は一応インターキのギルドに所属している、しかも君たちから見れば異教徒だ、ついでに言うと奴隷制度は反対だ、そこんとこはよろしく伝えてくれ」

隊長は、額に汗を流し、緊張してた顔をさらに固くして、

「はっ、賜りました」と改めて敬礼してきた。


いつの間にか戻って来ていたみゆきがその後ろでガッツポーズを取り、みそのは恐ろしい物を見るような目でユーゴを見ていた。

「みゆきちゃん、ガスティー商会の連中はどうなりました?」とユーゴが聞くと、

「全部白状するように、魔法掛けときました」と答えて来る。


「よし、もう、こうなったらやけくそだ」とユーゴはそう言うと、メルマ、全員ここに集まるように言ってくれ、シースカイ号もここに持ってきてくれ、派手に帰るぞ、と指示する。


「グランさん、ガスティー商会の連中はファントラス王国にあずけましょう、後は派手に見せつけますんで抑止力に使って下さい」とユーゴがグランに言う、

「私が何か言わなくても、すでに十分抑止力になってますよ」とようやく緊張が解けたのかグランが笑って答えた。


桟橋に今回のメンバー全員が揃う、その周りにはいつのまにか港中の人間が集まって来ていた、

「メルマ、まずはシースカイ号だ」ユーゴがそう言うと、海の水が大きく盛り上がり、シースカイ号が姿を現した、集まって来ていた見物人から、悲鳴にも似た驚きの声が上がる。


「ユイナさん、アダンテを呼んでくれ、俺はバンナを呼ぶ」ユーゴはそう言うと大きな魔法陣を張り、若い龍を呼び出した、

ユイナは指笛をふく、するとはるか上空からアダンテが舞い降りてきた。

すでに、港中大騒ぎになっていた。


遠巻きにユーゴ達を見ている民衆の中から、12歳ぐらいの銀髪の男の子がユーゴに寄って来て、ユーゴのマントの端を引っ張り、

「あの乗り物に僕も乗せて」とシースカイ号を指さし、目をキラキラさせながら言って来る、

「ああん?、・・この乗り物は残念ながらイスタンまで行って戻ってこないんだ、もう少し待てば、飛行艇の定期便も出来るだろうから、それまで我慢してくれ」

とユーゴが言うと、

「別にイスタンまで行って戻ってこなくてもいいよ、だから乗せておくれよ」と少年はしつこく迫る。

「そうは言ってもな、親御さんも心配するだろうし」とユーゴが困っていると、みすぼらしい神父の服を着た男が現れて、少年の体の上から肩を抑えて、

「無理を言ってはいけません、この方達は仕事を終えて帰るところなのですから」と少年に諭す様に言って聞かせる。

「悪いな少年、機会があったら乗せてやるから」とユーゴが苦笑いしながら言うと、

「ふーん、じゃあ今回は我慢する、でも約束したからね、絶対乗せてね」

残念そうに少年が言うと、その少年の頭をなでながら、

「わかった、今度会うような事があれば乗せてやるよ」とユーゴは軽い気持ちで言っていた。



「じゃ、帰るぞ」ユーゴがメンバーに大きな声を掛ける、

ユーゴは初めて呼んだバンナに、よろしくな、と頬をなで背中に乗る。ユイナもアダンテの背中に乗った。

残りのメンバーはシースカイ号に乗り込んだ。

「バンナ、派手に雄叫びを頼む」ユーゴがそう言うと、若い龍はグォァーーっと空気が震えるほどの雄叫びを上げ、空に舞い上がった。

続いてアダンテが飛び立ち、シースカイ号も激しい風を地面に吹き付けながら空に舞い上がった。

アダンテは、港の上空を一回転した後、イスタンの方向に飛び去って行った。


港に残った人々は、その迫力に圧倒され、口々にその凄さを話し、中には膝を付いて拝む者までいた。

銀髪の少年は目をキラキラさせてシースカイ号が見えなくなるまで見送ると、みすぼらしい神父服の男

に、「じゃあね」と言った後、スッと姿を消した。


神父は、ふうー、とため息をついた後、

「いつの間にか、とんでも無い人が増えたんだねえ」と言うと、トボトボと街に向かって歩いていった。


ユーゴはバンナの背中の上で、抑止力にはなったろうがこれで西側は大騒ぎだろうなあ、混乱と争いか、結局あいつの思うツボだったかな、とため息をついていた。








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