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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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侵入


 ガスティー商会の船は、今までの運搬船より一回り大きな船だった、荷室も大きく、その一角に物置部屋があった。

みそのの誘導で、光学迷彩で身を隠したみゆきも上手く荷室に潜り込んでいた、

みそのが物置部屋に掛かっていた鍵を外し、「助けに来たわ」と中にいた二人の女性に声を掛けた。


(B3から、準備完了と連絡がありました)とメルマが言う、

「わかった」と言うとユーゴは魔法陣の中に入った。


船の物置部屋は、大人4人がいるといっぱいいっぱいの大きさだった、そこに無理やり革製の敷物を広げた所にユーゴが表れる、

ユーゴの目の前に、みゆきとみそのがいた、

「あっち向いてください」いきなりみゆきのそう言われ、なんで? とその姿を見た。

その服装は、かなり露出度の高い下着のような服に、薄い透明度の高い上着を着た、あられもない格好だった。


「ひゃい、失礼」とユーゴは回れ右をする、

そこには、初めて会う黒髪の美女がビックリした様子で立っていた、

「まったく、変態宣教師め、こんな格好をさせて何を考えていたのやら、こっぴどく痛めつけないと気が済まないわ」

とみゆきが憤慨している。

みゆきとみそのは捕まっていた女性達の服を着ていたのだ。


「私はこういう格好はなれていますから平気ですが、みゆき殿にはきついかと」とみそのが全く慣れている様子も無く顔を赤らめて言った。

「まさかそんな恰好だとは思わなかった、どうせ、幻夢魔法に掛けちゃうんだから、その格好を無理して続けなくてもいいよ」

そう言うユーゴの手は、なぜか万歳をしていた、満員電車で痴漢に間違われないようにする、悲しいサラリーマンの性だった。

「では、こちらで臨機応変に対処させていただきます」そう、みそのが言う、

「いいから、ユーゴさんは早くその子たちを送ってって下さい」そう言ったのはみゆきだった。


「わかった」ユーゴはそう言って、みゆき達が用意した普通の服をきた黒髪の美女二人に愛想笑いをしていた。

「じゃ、行きますね」そう言って、二人を魔法陣の中に入るように誘導して魔法を発動させた。

ユーゴが去って間もなく、船は出航して行った。


「これで、全員救出した訳ね」先にヒルフォーマー商会の執務室にユイナと帰っていたアイーダが嬉しそうに言う。

「ああ、あとは一味を一網打尽にすることと、教会の尻尾を掴む事だな」そうユーゴは言った。

助け出された女性たちは、全員揃うとホッとした様子で、用意されたカップに入ったスープを飲んでいる。

「スクルトさん、この子たちの事はよろしくお願いします」とユーゴに言われ、

「お任せください」とスクルトは答えた。


「じゃ、俺達はしばらくシースカイ号で待機だ、あ、飛行艇の事だ」とユーゴが言うと、

「なにその名前、そのまんまじゃない」とアイーダは不満そうに言う、

「いいから行くぞ」とユーゴはその話を切り上げ、魔法陣を発動させた。


シースカイ号をガスティー商会の船の真下に付けると、

「何かあったら直ぐ助けに行くから安心しろ、と伝えてくれ」とユーゴはメルマに頼んだ、

「あの二人なら心配無いでしょうけどね」とアイーダが言う、

「みそのさんという方はどういった人なのでしょう」まだ、みそのと一度しか顔を合わせていないユイナが聞いてくる。

「ああ、東のヤマタラという国の忍者だ、忍者と言うのは情報収集を主な任務にしてるが、戦ってもかなり強いようだぞ、場合によっては暗殺なんかもやるだろうな」とユーゴが説明すると、

「忍者は聞いた事があります、魔力に頼らない術も持っているとか、味方なら心強いですね」

「まあ、まだ知り合ったばかりだ、お互い信頼しきってるわけでは無いが、みゆきちゃんは不思議と気が合うようだった」

ユイナの答えにユーゴが返すと、

「うん、顔も似てるし、並んでると姉妹みたいに見えた」とアイーダが言う、

「まあ、多分、同じ民族の血はひいてるんだろうな」まあ俺もだが、と心の中で思いながらユーゴは言った。


「その、ユーゴ殿もヤマタラという国のご出身なのですか?」とユイナが聞いてくる、

ユーゴは心の中で、キター、この質問、されると思ってたんだよ、と呟きながら、

「いや、俺とみゆきは別の国の出身だ、ヤマタラという国の事は詳しくない」となるべく自然に聞こえるように言った。

「東にもいろんな国があるのですね、いずれ尋ねてみたいです、ユーゴ殿の故郷も」とユイナが言う、

「あ、ああ、まあ、大した所じゃ無いよ、機会があればね」とユーゴは言いながら、そのうち全部話さなくちゃいけない時期がくるかな、と考えていた。



その夜、

「宣教師さん、商品に傷をつけてもらっちゃ困るんですがね」と荷室に降りて行こうとする宣教師を見つけて、船の乗組員が言った、

宣教師は、驚いてビクッとしたが、その後は開き直り、

「心配するな、あの二人は教会で買い取る、私の身の回りの世話をさせるつもりだ、フハハハ」と笑って見せた、

「なんとまあ、上玉を二人だけ連れて来たと思ったら、そういうおつもりでしたか、手を付けたら返品はなしですぜ」船員は心底軽蔑する眼差しで宣教師を見る、宣教師はバツの悪そうな顔で

「わかっている、大丈夫だ」と言うと、そそくさと荷室に入って行った。

「まったく、あれで神の教えを説くってんだからおそれいるぜ」船員は両手を広げて頭を振っていた。





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