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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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シースカイ号


 ユイナとアイーダは、海のはるか上空を幼い龍アダンテに乗って飛んでいた。

アイーダは望遠鏡を伸ばし、眼下の海面を除いている。

「あの船はヒルフォーマー商会の船だわ、対象外ね、次はあっちの船に向かって」と指示する、

アダンテはクォーと鳴くと、体を傾け方向を変えた。


(前方の船は、ヒルフォーマー商会の船籍、対象外)

メルマが飛行艇に乗っている4人の男に向かって報告した。

「しかし、海の中をこんなスピードで移動できるとはなア、これからはこいつを飛行艇と呼んでいいのかどうか分からなくなるな」とコイルがしきりに感心しながら言う、

「そうだな、こいつに名前つけようぜ、ふーん、蝙蝠の羽号が妥当な所かな」とバースが言う。

「ちょっと呼びずらいな、こいつは羽もついて無いしな」とコイルが返す。

「海と空だ、単純にカイクウ号でどうだ」珍しくハンスも口を出す。

「それだったら、シースカイの方がカッコイイな」とユーゴが言う。

すると、他の三人が不思議そうな顔をして「どこがちがうんだ?」と聞いてくる、

ああ、この辺の翻訳スキルはどうなってるんだろう、とユーゴが頭を掻いた。

「おまえがそう言うなら、そうしよう、お前の元の言葉ではちがうんだろうからな」とバースが笑って言った。

ユーゴの正体を知っている三人だから出来る会話だった。


(対象の船に接近します)メルマが報告してくる、

「よし、急ごしらえでカークにつくらせたんで、ちょっと心もとないが、筒を海の上に出すぞ」

ユーゴはそう言うと、水魔法を駆使して船内に水が入らないようにしながら、さっき命名したシースカイ号の天井から海面に円筒形の筒を出した。

「B5頼むぞ、と言うと」リス顔で蝙蝠の羽を出したままのB5は筒状に丸めた獣の革で出来た敷物を足で掴み、筒を通って外に出た、

B5は、前方の船に接近すると、船員の隙を見て船の中の荷物室に潜り込む。

しばらくして、(黒髪の女性四人発見)とB5から報告が入る。

「よし、当たりのようだ、しかし、上手くいくのか?」とバースが不安気にユーゴに言う、

「実験済みだ、大丈夫・・のはずだ」とユーゴも自信ななそうに答えると、シースカイ号の中に書いた魔法陣に入った。


輸送船の荷物室、後ろ手に縛られ猿ぐつわをされた黒髪の女性が四人、不安そうに身を寄せ合っていた、

そこに見た事も無い珍妙な、何処か可愛らしい生き物が何かをぶら下げて入って来た。

四人は目を丸くしてその生き物を見る、

(安心して、助けに来たよ)とその生き物から直接頭に声が届く、四人は猿ぐつわで声も出せずさらに身を寄せるようにその生き物を見ていた、

B5は、荷物室の出入り口から見えない場所に、持ってきた革製の敷物を広げた。

(準備できた-)と思念を送る、すると、革製の敷物に魔法陣が浮かび上がり、男の影が二つ浮かび上がる。

「おー、上手くいったみたいだな」とバースが小声で言って来る、

「だから大丈夫だっていったろ」とユーゴもホッとした表情で言っていた。


目を丸くして怯え切っている女性たちに、口に指を立てて、静かにするように合図すると、

「俺達は君たちを助けに来た、もう大丈夫だから静かにしててくれ」そうユーゴが言うと女性たちは、コクコクと首を縦に振った。

猿ぐつわを外し、縄を解くと、

「じゃ、俺はこの子たちをヒルフォーマー商会まで送って来るから、後は頼んだぞ」とユーゴが言う、

「ああ、任せとけ」とバースが答えた。

ユーゴは二回に分けて女性達をヒルフォーマー商会の執務室に魔法陣を使って送り届けた。


荷物室に誰もいなくなると、バースは、「さあて」と言って背中の大剣ではなく腰の小刀を抜いて出入り口に向かった。

数分後、バースは操舵室で椅子に座りふんぞり返って、

「予定通りに運航すればいい、下手な事は考えないこった」と言っていた、

操舵を握る船員以外の船員は、バースの横で縛り付けられていた。


女性たちを送り届けて、シースカイ号にユーゴが戻ると

(情報通り、女性を運んでいるのは三隻の運搬船で、残り二隻には三人ずつ乗っているとB5から報告がありました)

とメルマが報告してきた、

「よーし、後二隻、早いとこみつけだそう」ユーゴがそう言う、

その言葉をメルマが上空のユイナとアイーダに伝える、上空では、よし、と二人が気合を入れていた。


数時間後、コイルとハンスがそれぞれバースと同じように運搬船の操舵室で乗組員を縛り上げ、船を予定通りに運航させていた、

さらわれた女性たちは、二人を残し無事救出し終わっていた。

コイルとユーゴが運搬船に移動した時、革製の敷物が逆さまに置かれ、頭に被るようになっていたのはご愛敬だった。


「よし、ここまでは順調だ、後は、みゆきちゃんとみそのさん次第だな」ユーゴはそう言ってほくそ笑んでいた。

(B3から、上手く忍び込んだと連絡がありました)とメルマが言う、

「よし、最後の二人を助け出しに行くか」ユーゴがそう言うと、シースカイ号は海の中を反転して二人が忍び込んだガスティー商会の船に向かった。





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