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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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ガスティー商会


 ユーゴはグランに

「ガスティー商会というのはご存知ですか」と聞く、

「西側随一の商会です、教会とのつながりが強く、扱う商品も多岐に渡っています」と答えが返って来た、

スクルトが持ってきた港全体の地図を見ながら、この辺り一帯がガスティー商会の倉庫、ここが会館です」とおおよその位置を指し示す。

「よし、まずはソコから当たってみよう手分けして頼む、グランさん、この二日で西に向かった船はありますか?」

ユーゴがグランに聞くと、手帳を見ながら

「十数隻向かっていますが、ガスティー商会の船は無かったはず、今日一隻でるはずです」と厳しい口調でグランは言った。

「その船は俺が調べよう」ユーゴはそう言うと、メンバーを三組の班に分けた。


バースとコイルに蝙蝠のB1を付け、ハンスとアイーダにB2、みゆきとみそのにB3、班名はそれぞれ蝙蝠の名をそのまま使う事にした。

蝙蝠はメルマを通じて通信にも使えるので、変わった事があれば情報を共有できた。

「教会の宣教師がいるはずだ、それを探してくれ、おそらく囚われてる人たちも近くに居る、B1とB2は倉庫、B3は、みそのさん、会館をよろしく」

そう言うと、それぞれ急ぎ足で散会した、

「スクルトさん、船への案内頼みます」ユーゴはスクルトと今日出航予定のガスティー商会の船に向かった。


船に向かいながらユーゴは、さらわれた人達が、すでにほかの船で西に向かっている可能性を考えていた、

奴隷売買は、ガスティー商会にとって裏稼業だ、表だってそんな事をしていればここで商売は出来ない、ならば自分の船籍で運ぶ可能性は低い、自分達の倉庫や会館も同様だ、だが、確かめねばならない。内心かなり焦っていた。



 ハンスとアイーダはガスティー商会の倉庫の向かい側の建物の屋根に、光学迷彩のポンチョを被って潜んでいた、

「おそらく、はずれだな」ハンスが様子を見ただけでそう言った、

「どうしてわかるの?」とアイーダがハンスに聞く、

「余計な人員が一人もいない、人出が足りないくらいだ、あれでは誰かを忍ばせてられまい」ハンスがそう言うと、蝙蝠のB2が戻って来て、(言われた通り、隠し部屋や地下室が無いかしらべたけど、何にもなかったよ)と言って来た、

「見た所、ここにいるのはただの労働者だけだ、おそらくバース達も同じだろう、一旦戻ろう」ハンスがそう言ってその場を去った。


みゆきとみそのは、ガスティー商会の会館の隣の建物の屋根に潜んでいた、

みそのは、みゆきのポンチョを見て、なんと面妖な魔道具とビックリしていたが、この人達なら驚くほどの事では無いのかもしれないと思い直した。

みそのの懐から、二匹の猫が出てきた、一匹は少しふてぶてしい顔した虎猫と、一匹はまだ若いのかとても可愛らしい顔をした黒猫だった、

「これは、私の使役獣、トラとクロ、今からこの子達に中の様子を探らせます、私も何か手掛かりが無いか忍んできますゆえ、みゆき殿はここで待っていてください」そうみそのが言う、慌てたのは蝙蝠のB3だった。

(猫!、僕ネズミにしか化けられないよ、食べられちゃう)そう言って怯えている、

「蝙蝠君もここで待機してて、私達が探って来るから」そうみそのが言うが、

(そういう訳にはいかないよ、主の役にたたなくちゃ、試してみる、エイッ)っと気合を入れると、ポンと屋根瓦の上に落ちた、

そこにいたのは、猫ともネズミともつかない、ちょうどリスの耳を大きくしたような顔をした奇妙な生き物だった、

「あら、猫にはみえないけど、とってもカワイイわ」と蝙蝠の時はさわれもしないみゆきが抱き抱えた。

(僕もこれで探って来るね)そう言うとB3は猫の跡をつけて、隣の会館に入って行った。


天井裏に潜んだみそのは、眼下の二人の会話に耳を傾けていた、

「まったく、あの宣教師殿には困ったものだ、あてがった船では汚くて気にらないと来た、運搬船を何だと思っているやら」

「ああ、おかげで今日中に終わるはずの仕事が、明日まで伸ばさなければならなくなった、しかもうちの船を使ってな」

「なにが神様の思し召しだ、あんなのがいたんじゃ教会との関係も考え物だ」

「まあ、そう言うな、教会が後ろにいるから面倒な手続きも免除される、使い道はあるのさ」

みそのは、この二人をひっ捕らえたい衝動に駆られたが、今は我慢とその場を去った。


 ユーゴとスクルトは、ガスティー商会の船が見えるテラスでお茶を飲んでいた、

船に潜っている蝙蝠が化けたネズミ達の様子をメルマを通して窺っていた。

「出航は明日に延期だそうだ」

「ええ、なんでまた、準備なら滞りなくできてますよ」

「ああ、例の宣教師がこの船に乗るらしい、まったく厄介なこったぜ、船室を一つ綺麗にしとけだとさ」

「げえ、あのえばりくさった宣教師ですか、そりゃまた面倒な」

「まったくだ、それとな、船底にある物置もかたずけて置いてくれ、荷物があるそうだ」

「ちょっと待って下せえ、それって、例の仕事の方をこちらに回してきたんですか」

「どうやらそうらしい、せっかく小分けにして目立たないように運んでるってのに、正規の船で運ぶなんてどうかしてるぜ」

「荷物は何人なんで?」

「二人だ、荷物の中でも上玉らしいぞ、あの宣教師、何考えてるやら、頭が痛いぜ」


ちっ、やはりもう大半の人達は船で移動させられてる最中か、こりゃ思ってたより大掛かりな事になりそうだ、

まだ宣教師が残ってたのは助かったかな、さてどうしたもんか、

ユーゴは、顎をさすりながら、スクルトに状況を説明した。






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