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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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女勇者救出作戦


 ユーゴとドイルは、インターキの街の外に来ていた、辺りはすっかり暗くなってもう門は閉まっていたが、二人にとって外に出るのはたやすい事だった。

来る途中、「嬢ちゃんは、ユーゴと同郷で間違いあるまい、かなりの人間不信に陥ってるようじゃ、ユーゴで無ければ連れ出すのは叶うまいよ」

「はあ、まあ、なんとかやってみます」というやり取りがあり、ユーゴは、どうやって同郷であろう女性に状況を説明し説得するか考えていた。

その為、ドイルが大きな魔法陣を描いて、何やら呟いている事に気が付かずにいると、

ブゥーーウン、と言う不思議な音と共に、何やら巨大な物が現れると、腰を抜かしてしまっていた。


 そこに現れたのは、大きな飛竜だった。


「すまんな、ちょっとファントラスの王城まで特急でたのむ」と龍に向かってドイルが言うと、

「そいつも乗るのか?大丈夫か?」と竜は、腰を抜かしたユーゴをゴミを見る目で見ていた。

ドイルは、「もう夜更けじゃが、念のために高い所を飛んでもらう、防風と保温の魔法を忘れずにな」

と器用に竜の背中に乗る、あたふたしてるユーゴを見て、まだまだじゃなと手を貸した。


 竜のスピードは想像を絶していた、雲の上に出ると映画の映像でしか見た事が無いような景色が広がる、月明かりに照らされた雲海が、もの凄いスピードで流れていった、

ユーゴは、そんな景色を・・全く見ることが出来ずに、身体強化魔法を掛けたうえで竜の背中にしがみ付いていた。

 どのくらいそうしていたか、何も考えられずに必死にしがみ付いていると、龍のスピードが落ちて、雲のすぐ下まで降りていく、眼下には王都と思われる街並みが広がり、少し高くなった丘の上に城が小さく見えていた。

 「これ以上低く飛ぶと騒ぎになるでな、ここから飛びおりよ」、平然とドイルが言う、

なに、しらっととんでもない事言ってるんだこのじいさん、ものすごい高さだよね、パラシュートとか持ってないんですけど、と、ユーゴは地上とドイルを交互に見ていると、

 「東側の二階におる、なに、風邪の魔法でも使えば、死にはせんて」 とドイルはいきなりユーゴを突き飛ばした。

 「ええ~、作戦とかないの~」という落ちていくユーマの声が小さくなっていった。



 ユーゴは落ちながら必死に自分がムササビになったイメージをお越し、魔力を出す、が、ほとんど効果が無かった、これは不味いと次は竜巻に飛ばされる車を自分に置き換えたイメージで魔力を出す、すると自分の周りに風の渦が巻き起こり、落下スピードが落ちた、が、上手くコントロールできない。

頭が下になった格好で姿勢も制御できないまま、城が近づいてくる、あー、やばいやばい、東ってどっち?

方向も判らないまま、城の端の方にある二階のテラスに逆さのまま着地した。


 ふい~、なんとか死なずに済んだ、そう思いながら体を起こし周りを確認していると、ユーゴが起こした風のせいで開いてしまった扉の向こうに、タクトの様な杖を構え、必死の形相でこちらを見据える寝間着姿の女性がいた。


 髪の毛は黒、瞳も黒い、髪の毛を両脇に束ね、短い三つ編みにしていた、見た感じは女子高生ぐらいに見える。

え、まさかのお下げ、なんか真面目を絵に描いたような人だな、と思いながらユーマは騒がないようにと両手を前に出して「こんばんは」と話しかけた。


「ち、近寄らないで、・・わ、わたし、魔法が使えるんですからね、・・火の玉だって出せちゃいますから」女性は震える手で、こちらに杖を向けながら必死に訴えて来る、

「わかった、・・わかったから、ちょっと落ち着こう、・・俺は君と同じ日本人だ」

ユーマは日本語で話しかけた、そうすれば信じてくれるだろうと思ったからだ、

「そ、そんな事、信じられません、・・・こっちの人は勝手な事ばかり言うんですから、あなたも私をだまして言う事を聞かせるつもりなんでしょ、出て行ってください」

「いや、だから、ほら、日本語で話してるだろ?本当に日本人なんだよ」

「そんなの、魔法でどうにでもなっちゃうんでしょ、私だっていきなりこっちの言葉話せました」

女性は、まったく聞く耳を持たないという雰囲気でユーマを睨みつける、ちょっとでも動こうものなら、本当に火の玉を出しそうな勢いだ。


 ちょっと考えて、ユーゴが語り掛けた。


「・・・セブンイレブンで一番売れているのは、実はカウンターにあるコーヒーだ・・・・」

「・・・・・へ?・・・」


「・・・日本で二番目に大きい湖は、茨城県の霞ケ浦だ・・・・・」

「・・・あ・・・そうなの・・」


「・・・東京ディズニーランドは、千葉県にある・・・・」

「・・・はう・・ほ・・ほん・・・・・・・うわぁーん」


大粒の涙が目からこぼれ出たかと思うと、その女性はへたり込む様に泣き崩れた、

「ほ、ほんとうに日本人なんですね?・・わ、わたし、いきなり知らない世界に飛ばされて・・」

安心したのか、今度は事情を説明しようと、必死にしゃべり始めた。


ドンドン

「みゆき様、どうかされましたか、今、大きな音が」

部屋の外が騒がしくなってきた、ユーマの竜巻着地のせいで、大きな音がしていたのだ、

「話は後だ、とにかくここから出よう」とユーゴが女性の腕を掴む、

「え、でも、どうやって、・・あ、ちょと待って下さい」

女性は枕元にあったメガネを取ってユーゴの方に向き返った。

ユーゴはテラスに出て周りを見る、飛竜がこちらに向かって飛んできていた。

「あれに乗る」そう言って女性の腕を引っ張る、

「え?あれですか?・・」

女性は呆然と成りながら、ユーゴの引っ張るままにされていた。


眼下では、城の兵士達が騒ぎはじめていた。

「まったく、もう少し上手くできんのかのう」と言いながら、ドイルは飛竜にテラスの脇に付けるように命じた、

ユーゴは、飛竜の近づくタイミングを計って、風の魔法を使いながら女性の手を引き飛び移る、

「上手くいったようじゃな、じゃが60点じゃ」ドイルがそう言うと飛竜は上空を目指し羽ばたいた。


雲の上に出ると、新しい乗客に気を使っているのか、来た時よりかなりスピードを落として飛竜が飛ぶ、

「俺は、橘勇吾っていう、元は普通のサラリーマンだ、この爺さんはこっちの世界の魔導士ドイルさん、良い人だから心配いらないよ」と女性に自己紹介とドイルの紹介をした。

「私、千勢みゆきっていいます、日本では看護師をしてました」それを聞いてユーゴは、え、看護師?成人女性なのか?そう言えば俺も来た時若返ってたな、と思い、「やっぱり、こっちに来て若返っちゃいました?」と聞くと、

「え?、全然そんな事ありませんでしたよ、目が悪かったのは治っちゃいましたけど」とみゆきは答えた。

あ、元から若作りだったんですね、すいません、と心の中で謝った。


 その後は、

「聞いてください橘さん、あの国には、奴隷がいるんですよ、奴隷、信じられますか?それに日本の神様全否定ですよ、自分達の論理ばかり押し付けて・・・・」

と、延々と愚痴を聞かされた。

段々面倒臭くなったユーゴは、飛竜さん、もう少しスピード上げても大丈夫ですよ、と飛竜を促した。

だが、スピードが上がっても、ユーゴのマントにしがみ付いたまま、「聞いてますか橘さん」と話し続ける、来る時よりかなり長かった帰りの間、「うんうん」「あーそうだね」と、延々とから返事をとする羽目になったのだった。





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