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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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怒りのブレス


 アイーダの頭に直接メルマからの指示が来る、

(アイーダさん、準備が完了しました、合図を打って下さい)

指示を聞いたアイーダは、自分の後ろ側、峠に向かって信号弾を打った。


信号弾を見た黒龍と赤龍が峠から飛び立った、アダンテは少し不安そうにそれを見送っている。

立ち込めていた霧を吹き飛ばしながら、黒龍と赤龍は襲われた龍の前に出る。

今まで立ち込めていた霧はなくなり、その代り龍の後ろに黒々とした雷雲が沸き上がる、


この雷雲は、メルマによる立体映像だった、時折稲光が走り、迫力満点だ、

ただでさえ、迫力と威厳のある龍二匹を、メルマはさらにライトアップで目立たせた。


龍を襲っていた男達の集団は、今までとは格の違う巨大な龍の、それも二匹の出現に怖れおののき、パニック状態に陥っていた。

リーダー格の男が、「打て、魔石砲を打て」と腰を抜かしながら喚く、

何人かの男が魔石砲に取り付き、巨大な龍に魔石砲を向ける。

そのタイミングを見計らって、ユーゴが魔力を仕掛けた魔石に送った。

魔石砲に電気が走り、男たちは弾き飛ばされる、魔石砲は音を立てて砕けた。


愕然としている男たちを見て、ユーゴはさらに魔法で大きな雷を龍と男たちの間に落とした。

もの凄い雷鳴がとどろき、男たちは腰を抜かしたまま二匹の巨大な龍を見上げていた。


黒龍が、その雷鳴を合図に地響きが鳴るような迫力で

「我らは、この山脈を古より納める白竜様の配下、黒龍と赤龍である」と叫び始める。

「おろかなる人間どもよ、我らは正々堂々たる挑戦ならば、そなたらの挑戦をあえて受けてきた、だが、力も無きものが道具に頼って集団で龍に挑もうというのであれば、我らも容赦はせぬ・・・」



はるか、山の麓、山の入り口にある西側の村や町の上空に、ユーゴの蝙蝠達は待機していた。

稲光はここまで達し、雷鳴が遅れて鳴り響く、

蝙蝠達は、わずかに聞こえる黒龍の声を拡大し、村や町のすべての人間の頭に直接響かせていた。

人々は、突然響く恐ろしげな声に、不安そう上空を見上げ、それが龍の声と判るとはるか龍の山脈に向かって膝まづいていた。


「今回だけは慈悲を持って見逃してやる、とっとと立ち去るがいい、だが、またこのような所業を繰り返すならば、その邪悪な魔道具もろとも、それに加担した人間すべてを滅ぼしてくれる」

まだ、黒龍の言葉は続いた、男たちは壊れた魔石砲の横で手を組み跪いて震えていた。


「山脈との共存を望むなら、この事、子々孫々に伝えるがいい」

威厳と迫力のある、黒龍の言葉が終わると、赤龍が高く飛びあがり強烈な光を伴うブレスを上空に向かって首を振り扇状に吐いた、その光は山の麓の村や町まで達し、あやうく蝙蝠達が巻き込まれる所だった。

このブレスは、ユーゴの指示ではなく、赤龍の独断だった、考えてみれば赤龍は姿を見せるだけで他に役目が無い、かなりストレスが溜まっていたのだろう、そのブレスの迫力はユーゴの想像をはるかに超えていた。


龍を襲いに来てた男たちは、「お許しを~」と口々に叫びながら散り散りに逃げて行く。

その姿を見た黒龍と赤龍は、フン、と鼻息を出し、満足気に笑っていた。



ユーゴの狙いは、山に入っている男たちを追い返す事より、この黒龍の言葉を麓の人間たちに聞かせることにあった、

龍を襲う集団は大人数だ、麓の村や町で準備を整える必要があるだろうと考えていた。

その準備の段階で、麓の人々が止めに入るように仕向けるのが狙いだった、魔石砲を持って龍の山脈に入るのを許せば、自分達も協力者とみなされ絶滅させれてしまうかもしれない、そう思い込ませたかったのだ。

そして、多くの人々がこの言葉を聞けば、やがて西側の国々全てに行き渡るだろうと考えていた。

狙い通り、麓の人々は怖れおののき、山脈に向かって祈りを捧げていた。




龍を襲った集団が逃げ帰った山で、初めに襲われていた若い龍バンナは、ユイナとみゆきによって銛もぬかれ、治癒魔法で傷も癒えていた。

いつの間にかアダンテもやってきて、女性三人と喜び合っている、アイーダが触っても、もうアダンテは嫌がらなかった。

それどころか、大きな舌で舐め上げていた。



若い龍バンナが、まだたどたどしい言葉使いでユーゴに礼を言って来る、ユイナになにか吹き込まれたらしく、平伏しきっている、

「ユーゴ様、助けてくれてありがとう、この命はあなたが救ってくれた」そう言って頭を地面につける。

「いや、礼なら、そこにいる黒龍、赤龍、それに白竜様に言ってくれ、俺は依頼を達成しただけだ」そうユーゴがいうと、

「もちろん、古龍様達には感謝しています、でも、私はあなたに感謝の気持ちを伝えたい、どうか私を召喚獣としてお仕えさせて欲しい」

そう言って来る。

ユーゴがユイナの方を見ると、ニコニコ笑っている、どうもユイナの入れ知恵ぽかった。


ユーゴが召喚獣?と頭の中で本で読んだ知識を探っていると

(召喚獣とは、魔法陣で召喚可能な使役獣の事です、使役獣は普段は元の場所に居る事も可能)とメルマが教えてくれた。

つまり、必要な時にここから呼び出せるという事か?と頭の中で聞くと、

(肯定)と帰って来た。それなら問題は無いか、と思い。

「なら、よろしく頼むよ」とユーゴが言うとバンナは前足を折って頭を下げ、ユーゴの前に差し出してくる。

(呼び出す時の魔法陣を相手の額に書いてください)というメルマの指示に従い、ユーゴはバンナの額に〇にカタカナでバンナと魔法陣を描いた、魔法陣が青白く光りバンナの中に溶けていく。


「これで、契約は成立ですね、よかったわねバンナ」とやけに嬉しそうにユイナが言った、

どうして、そんなに喜んでいるのか、ユーゴが不思議に思っていると、

「ユーゴさんは優しい方よ、自分の使役獣を見捨てたりしないわ」と言ってバンナの首をなでている、

え、そりゃ確かに見捨てたりはしないけどさ、それが狙いなのユイナさん、とユーゴは心の中で唸る。

「使役獣は、使役者の魔力が高いと能力も増す、いい取引だな」と言って笑ったのはハンスだった。

まあ、移動手段に便利そうだからいいけどさ、とユーゴは頭を掻いていた。




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