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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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対面


 長老達の部屋を出て、みんなが居る控室に行くと、そこに純白の衣装に銀の髪飾り、腕輪、ネックレスで着飾ったユイナが立っていた。

ほへー、とユーゴが見とれていると、

「白竜様の所へご案内します、これは、巫女の正装なんです」とユイナが微笑む。

「・・・・あ、はい、よろしく」と思わず返事を忘れる程、その姿は優雅で美しかった。

見とれていたのはユーゴだけではなく、他のメンバーも同じだった、

「ユイナさん、ほんとに綺麗、女神様のよう」とアイーダもぼうっと見ている。


ハッと我に返ったユーゴは、自分だけ普段と同じ格好だという事を思い出し、このまま行っていいのだろうか、と頬をかいていた。

「さ、ユーゴ殿」とユイナにせかされて建物の外に出ると、ユイナと同じ格好巫女がもう二人待っていた。

三人の巫女に先導されて、ユーゴはおずおずと後をついて行く、他のメンバーは真剣な顔つきで見送っている。


三人の巫女は、最奥の大きな滝の近くまでくると、跪いて短いお祈りを捧げると、滝の裏側へと続く道を進んでいく、

滝の裏側には洞窟があった、トンネルのようなその洞窟を先に進むと、両開きの扉があり、その前に祭壇のような物がある。


その祭壇の前で三人の巫女はもう一度跪き、ユイナが、

「白竜様に申し上げます、インターキのユーゴ様をお連れいたしました」と少し小さめとも思える声で言った。

すると、何処からともなく、神秘的な女性の声で、

「ご苦労であった、そなた達は下がっていなさい、ユーゴ殿は中に」と聞こえてくる。


ユーゴは一人扉の前に立つと、扉を指さし、ここに入るの?とちょっと不安気な表情でユイナを見る、

ユイナは小さくうなずいて、その後、三人そろってお辞儀をしている。

ユーゴは緊張しながら恐る恐る扉を開け、中に入って行った。


扉の中は、かなり広い円形の広間になっていて、奥の方の天井は抜けていて空が覗いていた。

その空から、半洞窟に差す光の中に、真っ白な美しい龍がいた。

ユーゴから見ると逆光になり、その神秘的な神々しさに拍車を掛けていた、

「よくぞ参られた、もっと近くにいらしてください」


そう言われ、ユーゴは圧倒されながら龍に近づいていく、白く美しく大きな龍の姿に、自然と畏怖の念を抱く、

かなり近づいた所で、頭を下げた。


すると「やあ、ユーゴさん、ご苦労様です」と聞いた事のある声がした、

頭を上げると、白竜の脇にいたのは、神ゲブスだった。

「巫女たちも行ったようだし、それじゃあ」と言ったのはなんと白竜だ。

白竜の体が光ったかと思うと、そこに現れたのは銀髪の少女だった。歳の頃は14歳くらいか、ユイナを幼くしたような容姿はとてもかわいらしい。

その少女が「わざわざ来てもらっちゃって悪かったね」と神ゲブスと同じくらい軽い口調で話してくる。


くそー、今まで感じてた厳かな気分を返せ、そう思いながらユーゴは神ゲブスと白竜が姿を変えた少女を見る。

「いやあ、人の子って案外扱いが難しくてさ、威厳を保ってないと言う事聞いてくれないのですよ、正直疲れるんですけどね」

と少女が言う、

「まあ、サラヴィは見た目が可愛いらしいからね、よけいなのさ」と神ケブスが白竜の少女に言う。

ユーゴはその様子を白けた顔で見ていた。


いつの間にか現れたテーブルと椅子に座るように勧められ、これまたいつの間にか現れた大柄な二人の女性が運んできたお茶を勧められる。

「私は白竜、本当の名はサラヴィと言います、元はゲブスと同僚だったのよ」と少女が言う

「という事は、元は天界の神様?」とユーゴが聞き返すと、

「そう、大昔に天界はちょっと意見が対立した時期があってね、その時、私は天界を見限って龍に姿を変える事を条件に地上に降りてきたのよ」あまりに軽い口調で話すので、ユーゴはそんなもんなのか、と聞いていた。

「私としては、ここの子供達と、龍たちが平和に暮らしてくれてればそれでいいのだけれど、よその子供達が新しい武器を手に龍の子を襲ってきちゃった、これは放っておくわけにはいかないわ」とサラヴィは困った顔をする、その顔は普通の少女と何ら変わらなかった。

「天界との約束で、私が直接手を下す訳にいかないのよ、かといってそこにいる黒龍や赤龍にまかせたら、よその子を根絶やしにしそうだし、困ってたの、そしたらゲブスがあなたの事を教えてくれたという訳なの」と事情を説明してきた。


さっきお茶を運んできた女性が、黒龍と赤龍らしい、サラヴィの古くからの眷属だそうだ、

「当たり前です、龍を襲うという事は覚悟があっての事のはず、根絶やしにしたところで文句を言われる筋合いはございません」

褐色の肌をした黒髪の大柄な女性戦士がそう言って不機嫌そうにこちらを見ている、赤髪のもう一人の女性戦士も不機嫌そうにしている。

ユーゴはなるべく目を合わせないように、サラヴィの方に顔を戻した。


「でね、私の立場としては、なるべく穏便に、でも二度と子供達があの武器で龍を襲ったりしないようにしたい訳なんですよ」と神ゲブスが話に入って来た。

「それを、俺にやれと?」と半目でユーゴが神ゲブスを見る。

「ほら、ユーゴさんだって、理性のある龍が子供達の欲の為に殺されるなんて許せないでしょ、でもユーゴさんは人間ですし、根絶やしなんてのも許せない、上手くやってくれるんじゃないかなと思いましてね」とわざとらしい笑顔で言って来る。

「具体的には、何をどうしろっていうんだ?」とユーゴが聞く、

「ああ、それは、その、ユーゴさんのお考えどうりに」とさらにわざとらしい笑顔でゲブスが言う。

「丸投げかよ」憮然とするユーゴ、少し考えてからこう言った。


「ダンジョンの最深部の人工物、あれが何なのか教えてくれたらやらないでもない」





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