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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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白龍の呼び出し


 みゆきの問いかけに、ユイナが何と答えるのかユーゴがユイナの顔を覗く、

「確かに、その為にユーゴ殿をお尋ねしたのですが、・・その・・実はこれは私の意志という訳では無く」

ユイナの歯切れが悪い、

「ん?ユイナさんの意志では無い?」ユーゴが問い返す、するとユイナは

「あ、いや、私の願いでもあるのですが、・・その・・」と口ごもる、そして意を決したように、

「誓って申し上げる、私はユーゴ殿の事を谷の者にも誰一人話しておりません、・・ですが、なぜか白竜様はユーゴ殿の事をご存知だったのです」

ユイナはユーゴとの秘密を守るという約束を、自分が破ったのではないかとユーゴに疑われるのを恐れていたのだ。


白竜の谷で、龍人の長老たちが魔石砲の一団への対処法を話し合っているとき、突然白龍のお告げがおりた。

『ダンジョンの街のユーゴと言う男を連れてきなさい』と、慌てた長老たちは、インターキの街に行っていたユイナを呼び出し、ユーゴと言う名に心当たりは無いか聞いたのだと言う。

ユーゴは、その話を聞いて、自分の事を白龍に教えた可能性のある奴の顔を思い浮かべた。


「ああ、白竜とは親しい、とか言ってたな」ユーゴがそう呟くと、目をぱちくりさせたユイナに、

「ユイナさんが秘密を洩らしたとは思っていませんよ、別口で一人心当たりがありますから」と言った。

ユイナは、本当にこの人の正体は何者なのだろうと、背筋が寒くなる思いをしていた。


「それで、ユーゴ殿、白竜の谷まで来ては頂けないだろうか?」と改めてユイナはユーゴに聞いた、

「ふむ、白竜様直々の御呼出しとあっては、行かない訳にはいかないだろうな」とユーゴが答えると、


「話は決まったわね、出立は早い方がいいわね、準備しなくっちゃ、あ、バーバラさんにも言わないと」とみゆきが立ち上がる、

「あの親父達には私が伝えておくわ」とアイーダも立ち上がろうとする。

「いや、まてまて、今回呼ばれたのは俺一人だ、お前達は関係ないだろう」とユーゴが二人を止めようとすると、


「はあ?」二人同時にユーゴを睨め着けて来る、

「相手は何十人という規模なんですよ、ユーゴさん一人では逃げてしまう奴がでるかもしれません、私はそんな奴ら一人として許すつもりはありませんから」とキっとした顔でみゆきが言う、

「あたしには、魔石砲を開発したという責任があるわ、そんな事に使ってっる連中は凝らしめないと気が済まないわよ」とアイーダ、こちらも険しい表情でユーゴを見ながら言う。


「あ、いや、ほら、白竜の谷の方の都合もあるだろうし、ねえ」こうなった時の女性の止め方を知らないユーゴは、これが最後の頼みの綱と、そう思ってユイナに振った。

「わかりました、お二人の熱い思い、このユイナ、しかと心に受け止めました」とこちらも目を輝かして言う。

この三人にかなう奴はこの世にはいない、そう見えてしまう光景だった。


え~~、さっき迄あれ程言い合ってたのに~、

一人で行ってさっさと事を終わらせたかったユーゴは、完全に裏切られたという表情でユイナを見る。


「しかし、一つ問題があります、今回は急ぎという事もあって途中の森まで龍に乗ってやってきたのですが、ユーゴさん一人を想定していたので、龍に乗れるのは精々もう一人が限界かと・・・」とユイナが残念そうに言う。

「そ、そうだよねえ、ほら、白竜の谷って遠いしさ、流石に移動用魔法陣もそこまでは無理じゃないかなあ」本当は魔法陣を使えば迎えに来れる事を偽ってユーゴは惚けて見せた。


しかし、アイーダは目を輝かせ、

「フフフ、それならいい物があるわ、心配ご無用」と不敵に笑ってみせた。



ジェラールの研究室の中庭、

実験用三分の一モデルの飛行艇の前で、アイーダは腰に手を当て胸を張って言った。

「これを使えばいいのよ、三分の一といったって、六、七人乗るのには充分なスペースがあるわ、急いで座席を作れば大丈夫よ」

「いやいやいや、これはただ浮くだけの代物だろう、これで移動は無理があるだろう」とユーゴが言うと、

「なによ、あんたの魔法なら、浮きさえすれば移動させるのは簡単でしょ?、なんだったら龍に引っ張ってもらったって、そう負担にはならないはずよ、なにしろ重力魔石を組み込んであるんですから」アイーダはさらに胸を張った。


実は、ユーゴも動かす事は出来るだろうと思っていた、だが中に入って運転するように動かすにはある程度練習しないと自信が無かった。すると、スッと姿を現したメルマが、

(この飛行艇に、マスターの魔力を私を通して流せば、操縦性能は各段にアップ、自由に動かすことが出来ます)と言って来た。

「つまり、動力である魔力をお前に流せば、運転はお前がやる、という事か?」とメルマに聞くと

(肯定)と答えが返って来た。


ユーゴは、ふうー、とため息をつくと、

「判ったよ、ジャステスの親父に、空気温度調整の機械を外すように言ってくれ、そんなもの無くても飛べる、その分、中の天井を高くして座席は七席、できれば床前方に、下を覗ける窓をつけてもらってくれ、今日中に頼むぞ」そう言った。

それを聞いたアイーダはニカっと笑うと、

「ジャステスさーん」と叫びながら研究室の中へ走っていった。


本当は、これに口出ししたく無かったんだけどなあ、とユーゴは頭を掻いていた。




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