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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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ユイナ再び

予定より少し早いですが、投稿を再開します。


ダンジョンから帰って来て数日後のジェラールの研究室。

重力魔石の回収により、ジェラールたちの飛行船計画は飛躍的に進んだ。

最新の模型は、高度調整の為の空気熱調整機器は大幅に小型化され、その分居住部分が大きくなっている。

最初の設計図にはあった羽も無くなっていた。

風魔石による噴射口も当初二つだったものが四つに増え、強度も大幅に向上させてあった。

もはや飛行船というより、飛行艇と呼んだ方が良さそうだ。


「魔石で、重さを軽く出来るんだから、そりゃあ丈夫でいいものが出来るだろう」とユーゴが軽く言うと、

「ユーゴさん、そう簡単にはいかないんですよ、バランスと、軽い分風に流されやすく、空気抵抗も考えなくてはならない」

とジェラールは数種類の模型を前にして力説し始める。

しまった、地雷ふんじゃったか、とユーゴが適当に相槌を打っていると、

「おお、ユーゴ、お前たちのおかげで、材料の制限が少なくなって助かったぞ」とこちらはご機嫌でジャステスが言って来た。

「三分の一模型でこれから浮上実験だ、お前も立ち会え」とこっちだと手招きしながら言う。


ジャステスに案内されて、ジェラールと共に事件室の奥にある中庭に出ると、さっきの模型と同じ形をした飛行艇があった、

かなりの大きさだ、これで三分の一?、いったいどんなものを作ろうとしてるのか、このおっさん達は・・・。

「魔石を何処に取り付けるか迷っててな、いろいろ試してる所だ」とジャステスが嬉しそうに言う、

飛行艇の周りには、この計画を知って協力を申し出たこの街の技術者や職人たちが真剣な眼差しで調整を行っている。


その中の一人が、

「よし、準備出来たぞ」と声を掛ける、ジャステスはそれを聞くと

「止め綱を切れ、ロープをそーっと緩めていくぞ」と号令をかけた。

飛行艇に繋がれてるロープが徐々に伸ばされていくと、それに合わせて三分の一の実験用飛行艇は徐々に空に浮いて行った、

屋根の上にでて、多少風にあおられても、その姿勢は安定している。

やがて、街の城壁の高さも越え、奇怪な物体は空高く浮いて行った。


「ところで、あれの三倍もあるものを何処で離発着させるつもりだ?」とジャステスに聞くと、

「どこだと思う?、フフフ、ダンジョンウォールの天井さ」とジャステスが言う、

「もうすぐ、あちらの工事も始まる予定ですよ、飛行艇が想定より軽く出来そうですから、建物の屋上でも問題ありません」

そう続けたのはジェラールだ、

「ヒルフォーマー商会のグランさんは、港町イスタンにも専用の発着所を作って、とりあえず二つの街での運航を考えているようです」

そう説明してくる、

え?、運航?、もうそんな事まで考えてるの?、なるほど飛行艇が巨大なのも納得である、さすが商人、抜け目ねえ、とユーゴが感心してると、

「グランさんは、自分用にもう一機欲しいようですがね」とジェラールは付け加えた。



その飛行艇の奇怪な姿は、インターキの城壁の外側からも見えた、中世の景色に上がったアドバルーンのようだ。

それを見ながら、怪訝そうな表情をし、インターキの街へ急ぐ、銀髪の女性の姿があった。


次の日、くれない亭の食堂で、ユーゴが朝食を終えてコーヒーを飲んでいると、外から女性同士の言い争う声が聞こえてくる、一人には心当たりがあった。

アイーダの奴、また凝りもせず誰かに言い掛かり付けてるのか、まったく困ったもんだ、と外に出てみると、予想とはちょっと違った情景があった。


アイーダが目を丸くして、

「な、なんなのよ、いきなりそんな物突き付けて、わたし、あんたなんか知らないわよ」と剣を突き付けられ怯えながら言っている、

「貴様、その魔石銃とやらで、何を企てている、事と次第によっては容赦せぬ」ときつい表情で剣を突き付けてるのは、

なんと、そんな姿も美しい龍人の娘ユイナだった。


 ユーゴが慌てて間に入り、

「二人共、まあ待て、いったい何があった」と言うと、


「何があったもなにも、こいつがいきなり剣を突き付けてきたのよ」とユーゴが出てきてちょっと安心したのか、アイーダが鼻を膨らませて言う。

「ユーゴ殿、気をつけて下さい、こやつは悪魔の魔道具を持っております、何を考えているやら」とユイナの方も興奮気味だ。

「ユイナさん、とにかく一旦剣は納めて、ね、ちょっと誤解もあるようだから、中で話しをしましょう」となんとか説得する。

久しぶりのユイナとの再会が、こんな形になろうとは、ユーゴもユイナの意外な一面に戸惑っていた。


くれない屋のテーブルに、ユイナとアイーダが向き合う様に座る、その間にユーゴが座った。

二人は無言でにらみ合い、火花が飛んでるのが見えるようだ。

ユーゴは、この手の女性の扱いは、まったくもって不得意だった。




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