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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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西の国の事情


 ドイルはユーゴを連れ立って、バーバラのいる【夢魔法の館】に向かう、入り口を入る時、ちょっと躊躇するのはいつもの事だ。

 中に入ると、バーバラが、おや、と言う表情で迎えてくれる。カウンターに腰かけて、とりあえず水を頼むと、少し困った顔を浮かべながら、西で見てきた出来事を話しはじめた。


まとめると、

 西の最果ての国スパンク王国は、元々住民の魔力が高くなかった、その為、魔道具の研究が盛んで、少ない魔力でも使いやすい魔道具が発達した国だった。

魔力の少ない人間でも暮らしやすいという事で、周りの国からも移住するものが増え、近年人口が急激に増え続けている。よその国に比べ、自由な風土ができあがり、よそから逃げ出した奴隷も逃げ込む様になり、近隣の諸国から反感を買うようになったようだ。しかも、魔国と内密に交易してるという噂もあった。


 そんなスパンク王国で、五年ほど前、恐ろしく回復力の高い魔物が現れた、強力な攻撃魔法の担い手がいないので、打撃攻撃で退治しようとしたが、ブニョブニョとした厚い肉と切っても切ってもすぐ回復してしまう回復力のせいで、お手上げ状態となった。

 魔道具の研究員達は、急ぎ対魔物用の魔道武器の開発を目指し、ついに完成させた。

それが、金属製の筒の中で火炎の魔石を爆発させ、その勢いで別の効果のある魔石を発射するというものだった。

  この魔道武器の威力は強力で、見事に魔物を退治してみせた。


 ユーゴはここまで聞いて、銃?、いやバズーカ砲みたいなもんか、と想像した。

「ここまではいいんじゃがな」とドイルが顎をさする。


この武器は、初期の頃は使う魔石が貴重なため、気軽に使える武器では無かったが、木炭と硫黄と硝石で、人工的に火炎の魔石より威力は劣るものの、同じ様な効果がある魔法の砂を開発すると、様相が変わった、

(いや、それ、普通に火薬ですよね、とユーゴの無言の突っ込み)

魔力の少ない大いにに関係なく、誰でも安価で使える強力な魔法銃が出来上がった。



 ドイルとバーバラの様子を窺っていると、かなり戸惑ってっるのが伺えた、

人並外れた魔力を持っていて、尚且つ正義感が強く、優しいこの二人にとって、魔力の弱い庶民は、何処まで行っても、守ってあげなければならない保護の対象だったのだろう、長年そうして来たのだ。


 だが、ユーゴの考えは違った、この世界は見かけよりずっと生活水準が高い、交通手段や通信手段が遅れているので、どうなる事かと思っていたが、生活魔法や魔道具で快適に生活できる。だが、それはある程度普通に魔力を使える人までに限られる。

魔力の弱い、いわゆる底辺の人達は、何処まで行っても底辺のままだ。

ユーゴがこの世界に一番違和感を感じるのは、この人たちが諦めきっている事だった、魔力という壁がこの人達から気力や気概を奪っている、そう感じていた。

 もし、魔力の弱い人の為の魔道具を開発し、力を使えるように工夫努力しているなら、それはいい事だろうと思えた。


話の続きである。

 スパンク王国にそんな魔法銃があるとは知らないファントラス王国は、住民の流出と逃亡奴隷の続発に業を煮やし、スパンク王国が密かに魔族と手を結び侵略を企てている、という理由で攻め入った。

魔力の弱い烏合の衆と舐め切って攻めたファントラス王国側は、魔法銃の前に這う這うの体で逃げ帰ったという。

魔法銃を脅威と感じ、報復を恐れたファントラス王国は、その対抗策を考えた。


「それが勇者召喚、という訳ですか、そりゃあ、召喚された側はたまったもんじゃ無いな」

ユーゴは、召喚された女性への同情と、召喚した側への苛立ちが込み上げていた。

「軍事力のバランスが変わった事は確かじゃからのう、かと言って放っておくわけにもいくまい、あの嬢ちゃん、相当参っておったからのう、助け出すなら早い方がいいじゃろう」とドイルが言う、

「そういう事なら仕方無いわねえ、さっさと連れて来なさいな、連れて来れば後はなんとでもなるわ」

とバーバラも了承する。


「でも、どうするんです?ファントラス王国って、結構遠いんでしょ?」とユーゴが聞くと、

「ま、それは、方法が無いでもない」とドイルは後頭部をさすりながら言った。


 「では、行くかのう」とドイルが立ち上がる、

「へ?、今からですか?」ユーマは呆気に取られ、間抜けな顔でドイルを見上げた。



 

 



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