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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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重力魔石


 天井まで繋がった柱の所まで来ると、奥の方にフワフワと浮いてるように見えるタコ型の魔物が見えた。

柱の先はテラスの様になっていて、壁が崩れて出来たような平らな面の下りの坂道があり、その先に魔物が足の先だけ地面につけて浮いている、大きさは足まで入れると五メートル以上、胴体部分でも直径二メートルはある。


どうやって攻めようか、柱の陰で作戦会議が始まった、

メルマの分析でも、骨の無い軟体動物という他の情報は得られなかった。

とりあえず、テラスにみゆきが防壁魔法を掛け、その中からアイーダのライフルで凍結弾を打ち込み、その様子を見て、男たちが囲んで攻撃を掛けるという事に決まった。


「じゃ、行くわよ」とアイーダがライフルを構えて、凍結弾を放つ。

見事に命中したが、命中した部分は白く凍るものの、その範囲が広がって行かない。

「なにあれ、たいして効いてなさそうよ」とアイーダが言ってる間に、魔物の体がヌルヌルした液体に包まれていく、

「それならこれよ」と続けてアイーダが別の弾丸を打ち込む、今度は体全体に電気が走るものの、魔物は全く意に介してない様子だ。

(体を覆ってるゼリー状の液体が攻撃を遮断している模様)とメルマが解析する。


「ええ~、私の攻撃が通じないって言うの」とアイーダが憤慨してると、魔物が体を覆っていたヌルヌルした液体をこちらに向かって放ってきた、

ユーゴがバリアを張りなんとか直撃は避けたものの、バシャー、と広範囲に液体がかかる、全員ヌルヌル状態となり、足が滑ってまともに立ってられない、

四つん這いになって、なんとか体を支えて、魔物の方を見ると、いつのまにか三体、四体と魔物が増えている。


魔物達は次々、ヌルヌルを掛けて来る、みゆきが慌てて結界を張るものの、すでに床面はヌルヌル状態だった。

バース達三人は、魔力を自分達の体力や剣技に使う格闘タイプだ、アイーダの魔法銃以上の攻撃魔法は持っていなかった。

「どうする」とコイルが叫ぶ、

「どうするもこうするも、こうなりゃぶった切るしかねえだろう」そう言ってバースが背中の大剣を抜いて立ち上がろうとするが、

床がヌルヌルで立ち上げれない、バランスを崩して坂になってる床を滑り落ちそうになる、

あわててそれを止めようとするコイルとハンス、だが、三人供バースに引き込まれるように坂道を滑って下まで落ちてしまう。


ユーゴは、みゆきとアイーダに結界の中から動くな、と言って、瞬間移動を使って天井近くにあった突起物の上に移動し、風魔法を使って魔物達をけん制する。

ところが、ヌルヌルがその風魔法に煽られて、泡状になってそこら中にまき散らされるだけの結果となった。

なんとか体制を取って反撃に出ようとする三人に、三匹の魔物がそれぞれ足を広げ、落下傘のように襲い掛かる。


体制を崩しながらも、得物を抜いた三人はなんとか魔物の足を切り払った。

すると、その切り口から、またも大量のヌルヌルが放出される、なんとかその場を逃れようと必死にもがく三人、

「早く魔物から距離を取れ、そのままじゃ魔法が使えない」とユーゴが叫ぶ。

コイルが投げたワイヤーをみゆきとアイーダがヌルヌルに苦戦しながらも柱に縛り付ける、そのワイヤーを伝ってなんとか坂の上に上がろうとする三人。

途中まで上るが、一人がこけて滑り落ちると、他の二人も巻き込まれて落ちるという、どっかで見た事のある光景に、

「あの三人、ああなるとダ〇ョウ倶楽部にしか見えないわね」とみゆきが呟いている。

アイーダは、みゆきの言葉に、ン、何の事と??を頭に浮かべていたが、下手に手を貸そうものなら自分も巻き込まれかねない状況に三人の様子を静観していた。


ようやく、三人が上段まで上った時、魔物は全部で六体に増えていた、魔獣とバース達との距離が出来たのを見計らって、ユーゴが魔法を放った、


「アイスカッター、乱舞」


無数の氷の刃がタコ型魔獣を襲う、胴体も足もすべて切り刻まれていく、と同時に大量のヌルヌルが飛び散る。

みゆきが張った結界の周りもヌルヌルだらけだ。

その状況を、ユーゴは一人高い場所から、笑いをこらえて眺めていた。


みゆきが恐る恐る結界を解く、ビシャとヌルヌルがアイーダとみゆきの足元を覆う、

「ヒャイン」とアイーダが妙な声を上げたかと思うと、ユーゴを見やって

「隊長命令よ、団員一号のユーゴ、魔石を回収してきなさい」とヌルヌルと魔獣の切り身一帯を指さして言った。



ヌルヌルは、腰の高さまであった、

ユーゴは、滑って頭をヌルヌルに突っ込まないように、慎重に魔石を探る、

(二時の方向、二メートル先に魔石の反応があります)といつも通りのメルマの機械口調もなんか癇に障った、

「おいメルマ、お前空中から魔石を回収できないのか?」と聞くと

(残念ながら、そういった機能はありません)と答える。

「本当か?後で似たような機能使ったら承知しねえからな」と言うと、反応は無かった。


そんな様子を、一段上のテラスから五人が雁首そろえてニヤニヤ眺めている。

「ほら、もうちょっと先よ」「ここからなら見えてるんだがなア」と好き勝手に声を掛け始めた。


「ああ、もう頭来た」とユーゴはそう言うと、風魔法で自分の周りのヌルヌルを吹き飛ばす、

泡状になったヌルヌルが視界を妨げる程飛び散った、風は一段上に居た五人を押し流し、全員坂を滑り落ちて下段のヌルヌルの中に落ちた。

「何するのよ」とアイーダが叫ぶ、みゆきも「酷いですよ、気持ち悪いこのヌルヌル」と言っている。

男達もどうしてくれよう、という顔でユーゴを見ている。

ユーゴはニヤッと笑って、

「ここに六人の人間が居る、探す魔石は六個だ、魔石の報酬は見つけた者の物というのはどうだ、このまま俺が全部見つけたら全部独り占めするぞ」と言った。

「あ、てめえ、きたねえぞ」とバースが言う、

「なにがきたねえだ、他人に探さしといて分け前が等分というほうがよっぽどきたねえだろう、早いもん勝ちだ異論は認めん」

ユーゴは完全に開き直ってそう言い放った。

「なによそれえ、私は隊長よ、言う事聞きなさーい」とアイーダ言う、

「知るか」とユーゴが言う間にも、それぞれ魔石を探し出そうと動き出している。

そこからは仁義無用の足の引っ張り合いをしながらの魔石争奪戦が始まった。


結局、みゆきだけが魔石を見つけられず、二つ見つけたユーゴが、ほらよ、とみゆきに一つ渡して等分となった。

散々文句を言っていたアイーダは、

「ああ、面白かった」と言って満面の笑みを浮かべていた。




 だが、おっさん達の反応は違った。

「もう、こんなのは御免だ」とコイルが言うと、

「ギルドに情報渡して、次からは何処かの大きいファミリーに来てもらおう」とユーゴが答える、するとバースが、

「だが、ここに降りられる奴はそうはいねえぞ、俺たちはショートカットして一番底の水面近くまでこれたが、ユーゴが居なけりゃそれもできない、地道にテント貼れる場所を探しながらとなると、かなり時間がかかるだろうよ」そう言って来た。

「あのギルド長の事だ、俺が魔法陣を張って、いきなり最深部迄行けるのは見通してしまうだろう、なんか手を考えないとな」

と言ってユーゴが顎に手を当て考えていると、ハンスが至って冷静に

「簡単だ、一度本人達に経験させればいい、たしか副ギルド長の彼女はアイスカッターが使えたはずだ」と言う。

「そりゃいい、その時は是非見学に連れてってくれ」とバースが嬉しそうに言う。

ユーゴも、ギルド長と副ギルド長の二人の顔を思い浮かべ、ニヤニヤ笑いながら「それは面白そうだ」と呟いていた。


 一行は、魔法陣で五階層に戻り、中央に流れてる川で交代に水浴びをし、クリーン魔法を使って体や服、装備についたヌルヌルを綺麗に落とした。

その足でギルドに報告に行き、アイーダとみゆきにも言い含めて、ヌルヌル以外の情報はすべて話し、困難さを強調したうえで、自分達は二度と御免だと念を押した。


後に、重力魔石の重要度が増し、再び最深部に潜った時に、ギルド長と副ギルド長がヌルヌルだらけで悲鳴を上げるのは、また別のお話だ。



つづく。


重力魔石を手に入れた所で、又、10日ほどお休みします。

ここまで、いかがだったでしょうか、よろしければ感想をお願いします。

次は23日辺りを目処に投稿したいと思います。

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