超深層2
広い空間に、直径50メートル程の真円に近い穴が何層にもまたがって開いている、
天井には、光る水晶のような物が一面に広がっていて、地上と変わらない明るさを保っていた。
前にも来ているバースは、
「人工物?、こんな地下深くにか、まあ確かに自然にできた感じじゃ無いがな」とユーゴに言われて初めて、その可能性に気が付いた様子だった、
「だとしたら、魔族かなんかの仕業か、誰かが作ったにしても、とっくに滅んでる事は間違いないな」とコイルも辺りを見回して言う。
「こんな物作れるとしたら、人間じゃない事は確かね、でも何の為に作ったのかしら」アイーダも不思議そうに壁を触りながら言った。
ハンスは黙って辺りを見ていた。
みゆきはユーゴに近づいて
「超古代の遺跡?それとも宇宙人でも来てたのかしら」と他の者達とは違う感想をユーゴにだけ聞こえるように言ってくる、
ユーゴは、この謎を知ってる奴に一人心当たりがあったが、また、秘密事項とかでごまかすつもりかな、とその顔を浮かべて眉を顰めた。
「まあ、今それを考えてもしょうがないさ、それより、目的の魔獣を探そう」そう言って皆を集め、
「メルマ、目処は付いてるか?」とメルマに聞いた。
(目的のタコ型魔獣は、この階層には見当たりません、この下は空中を移動する小型魔獣が多く、蝙蝠達も思うように探索が出来ておらず、今だ生息地域は不明です)とメルマは言って来た。
ふん、困ったな、ユーゴは巨大な穴に近づいて恐る恐る下を覗いてみた、
何階層もの床が縦穴に沿って重なっているのが見え、そこから木々も生えている、その間を様々な魔物が飛び交っていた。
まるで微生物が巨大化したような形の者や、深海の生物のような物もいる、どうやって浮いているのか判らない形の生物もいた。
(あるじー、あいつら隠密使ってもみつけてくるんだ)(衝撃波もあんまりきかないよー)と蝙蝠達が言って来る。
お前たちご苦労だったな、後は何とかするから周囲の警戒に当たってくれ、と言うと(はーい)と散っていった。
「何処かに下に通じる通路があったろう?」とバースがメルマに聞く、
(その痕跡はありますが、現在は土砂崩れの為通るのは困難です)とメルマが答える。
「前は、ここでいくつかのグループに別れて探索したんだ、ここからロープを垂らして下に行った連中もいたが、ほとんど帰ってこなかった」とバースが言う、
「バースはどうしてたんだ?」とコイルが聞くと
「俺はまだ青二才だったからな、ここで留守番だった」と苦笑いした。
「ふーん、メルマ、お前が直接ステルスモードで調べてきてくれないか、流石にいきなり降りるのはリスクが高すぎる、頼むよ」とユーゴが言うと、
(了承しました、私が離れる間、くれぐれも危険をおかさないで下さい、わたしの最優先事項はマスターの生命の保護ですから)そうメルマが言う、
「わかった、ここで大人しく待ってるから」そう返すと、メルマはスッと姿を消し、「行ってきます」と声だけが聞こえた。
そこまで、黙ってみていたアイーダが、
「メルマ凄いねえ、まったく気配が判らないわ」と言うと、今度はみゆきが
「え、ちょっと待って、いたの、ずっと、くれない屋にいるときも・・・」とユーゴを見つめる、
「あ、ああ、消えてる時は俺も何処にいるのか判らない」とユーゴが誤魔化すと、
「いたのね」とみゆきはちょっとむくれ顔になった。
しばらくして、
(最深部に到達、縦穴の底は海水で覆われています)とメルマから直接頭に声が聞こえる、
「海水?ここは随分海から離れてるぞ、ただの塩水じゃ無く海水なのか?」とユーゴが聞き返す、
(水中に横穴を多数発見、おそらくその一つが海と繋がってると推測)とメルマが答える、続けて
(縦穴中央に昇降口があり、多数の建築物の残骸を発見、縦穴を上り下り出来た円筒状の建築物があったと推測)と言って来る。
エレベーターが穴の中央にあったって事か、かなりの規模の地下都市が大昔に存在してたって事かな、そうユーゴは思ったが、
今はそれは後回し、と思い直し、
「魔獣の方はどうだ?」とメルマに聞く。
(水中、水上、共に多数の生物を確認、タコ型の魔獣はどちらにもいます)と言って来た、
「よし、その辺りに移動魔法陣を敷ける場所は無いか探してくれ」
(水面より二階層上に、比較的魔獣のいない場所があります、タコ型魔獣も同じ階層に生息)
それを聞いてユーゴは、その場に魔法陣を書くと、
「ちょっと待っててくれ」と全員に行って、瞬間移動魔法で視角の範囲を移動しながらメルマが見える所を目指した。
「な、なんなの、消えたわよ、あの男も」とアイーダがビックリしてると、
「あいつは、どの属性の魔法も使える稀有な存在だ、敵にしない方がいいぞ」とバースがアイーダの頭をポンポンしながら言う、
「どの属性魔法もって・・、反則じゃない、いくら魔道具を考えても追いつけないじゃない、そんなの」とアイーダは口を尖らせた。
程なく、さっき書いた魔法陣にユーゴが表れる。
蝙蝠達をマントに納め、「さていよいよだ、行くぞ」と全員に言うと、真剣な顔つきになったみんなと魔法陣に入り発動させた。
付いた場所は、水面から十数メートル上、穴の断面からちょっと奥まった場所だった。
さっきまでいた場所に比べれば、かなり薄ぐらいが、視界が効かない程では無い、窓の小さい建物の中程度の明るさはあった、
床が少し湿っていて、藻のような物が蔓延っていて滑りやすい。
一同は、メルマの誘導する魔獣の見える場所に足を滑らせないように気を付けながら進んだ。




