表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神託の転移者  作者: 百矢 一彦
36/88

魔石銃


 三日後、ダンジョン入り口前。


「本来なら、三十階層より深い階層は大部隊を要して挑戦する案件だが、今回は特別に許可を出した、是非とも貴重な重力魔石をなるべく多く持ち帰って来る事を期待する」

ギルド長のフランクが探索チーム6人を前にして挨拶をしている。

「アイーダ隊長、あまり無理をせず、ベテランの隊員たちの言う事を聞いて慎重に行って来てください」

フランクは、ユーゴやバース達に、なるべく目が合わないようにしてアイーダにそう言っている。


「ギルド長め、金の力に押されやがって、まさか、ヒルフォーマー商会のグラン会頭があれほど熱心に押して来るとは思わなかったぜ」

とコイルが小声で言うと、

「まったくだ、ギルドが許可を出す訳がねえと高を括っていたが、あの嬢ちゃんもぬかりがねえぜ」とバースが返す、

「しかし、よりによって、アイーダを隊長に据えるってのはどうなんだ、おかげでやりずらいったらありゃしない」ユーゴがぼやく。

「まあ、スポンサーだからな、雇い主が建前上の隊長ってのはよくある話だ」バースがユーゴを慰める。

「大丈夫ですよ、アイーダちゃんは頭もいいですし、根は素直なんですよ」と楽観的に笑っているのはみゆきだった。

ハンスは黙って立っていた。


フランクはアイーダに話をした後、そっとユーゴに近寄って、

「私だって、君の移動用の魔法陣が無ければ許可を出しませんよ、いざと言う時はよろしくお願いしますよ、その為の少数精鋭なんですから」と言って来た。

「まあ、危なくなったらすぐ引き返しますよ、後から俺達だけで行った方が楽なんですから」とユーゴが返すと、

「そう言わずに面倒見てやってよ、あの子、本当に天才らしいから、あの銃の考案者はあの子なんだそうだよ、機嫌悪くなると困るからさあ」と笑ってフランクはユーゴの肩をたたいた。


じゃあ行くかとユーゴがダンジョンの入り口に向かおうとすると、山のような様々な武器の前で、アイーダが仁王立ちで笑っている、

「さあ、隊員一号、この武器をあんたの時空魔法とやらで運んでちょうだい、聞いてるのよ、いくらでも持てるって」と二カッと笑って言って来る。

「誰が教えたんだよ、まったく」ユーゴは仕方なく、その武器の山を小さめのリュックに入れてアイーダに渡す、

「いいか、取り出す時は、取り出したい武器を頭に浮かべて手をリュックに入れろ、俺だと覚えきれないから時間がかかる」

「え、私が持っても平気なの?」アイーダが不安そうに聞いてくる、

「出し入れだけなら、お前の魔力でも出来る、貸しといてやるよ」そうユーゴが言うと、アイーダは嬉しそうにリュックをしょい、軽く一回転してみせた。


ユーゴは、他にもチーム全員に無限ポシェットを作って渡していた、今回は流石に荷物が多く、ユーゴ一人では把握しきれない、自分の荷物は自分で管理してもらう事にした。

特にみゆきは、薬や簡易ベット、料理道具など荷物が多く、とてもユーゴ一人では無理なので、早々に用意しておいたのだった。

ユーゴは、移動の魔法陣を使うのは最後の手段としても、今回は手抜きなしで行くつもりだった、ユイナの時の二の舞だけは御免だと思っていたからだ。



 ダンジョンに入ると、当然の様にメルマが姿を現した、マントから飛び出してくる蝙蝠達を背に、

(私の名はメルマ、マスターユーゴに仕える妖魔です)と自己紹介を始める。

もう、何回か聞いたフレーズに、いちいちユーゴも反応しなくなっていた。


だが、今回の相手は今までとはちょっと反応が違っていた。

「こ、これは、なんという変わったフォルム、妖魔と言う割に魔力が少ない、金属のような体に、この羽は本物の蝙蝠とは違うようね」

とゴーグルを掛けしみじみ観察を続けるアイーダ、

「あなたは魔界の出身なの?羽ばたかなくても宙に浮いてるのはなんかの魔法なの?どうしてユーゴに仕えるようになったの?」

矢継ぎ早に質問している、答えを保留しているメルマに変わってユーゴが、

「全部秘密事項だ、先を急ぐんだ余計な詮索してないで行くぞ」とアイーダをせかして歩きはじめる。


ところが、もう一人、ユーゴの袖を引っ張り、

「なんなんですかあれは、まるでSFに出てくるロボットみたいじゃないですか、後でじっくり説明お願いしますよ」とみゆきがメルマとユーゴを交互に見ながら興奮していた。


先頭にコイルとハンス、その後ろにユーゴ、みゆき、アイーダと続き、しんがりがバースという布陣で進んだ。

後ろの方で、バースとアイーダが、ゴーグル仲間だな、とか何とか言って結構親しげに話している。

蝙蝠達の衝撃波は、想像より威力を増していて、4階層迄ほとんど蝙蝠達だけで魔獣を倒してしまっていた。

ユーゴは、ダンジョンに慣れさせるために歩きで来てるのに、これじゃ何にも成らないなと思っていると、

「ダンジョンも、浅い階層は魔獣が少ないのね」とアイーダが暇そうに両手を頭に添えて言い出した。

「俺の蝙蝠達が優秀なだけだ」とユーゴが言ったとき、


(前方より、イタチ型魔獣の大群が接近中、数が多い為、蝙蝠の攻撃を突破する個体多数)とメルマが警告を発した。


小型の魔獣の大量発生、大型魔獣より始末に悪い、とユーゴは三段棒を構え足止めの魔法を考える、

コイルとハンスもそれぞれ得物を持って待ち構える。


魔獣の大群の先頭が見えてきたその時、

「私に任せて」とアイーダがユーゴの前に出て銃を構えた、

ユーゴは、数が多い相手に短銃じゃ相性が悪い、と止めようと思っていると、それより先に銃声が鳴った。


銃弾が群れの先頭のすぐ手前の地面に着弾する、すると、辺り一面が白くなったかと思うと、

イタチ型魔獣の群れ全体が凍り付いた。


一同がビックリしてアイーダを見る、

「フフン、どう?、新しい氷結弾の威力は」とアイーダは得意満面で腰に手を当て立っていた。


 ユーゴは、魔石銃を勝手に前の世界の拳銃のような物、と決めつけてしまっていた、まさか、魔石を使用した銃弾がこれ程の威力だとは思ってもいなかった。

「凄いな」

初めにそう言ったのは、意外にも無口のハンスだった。

魔石銃の認識を改めないと、とそこにいた全員がそう思っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ