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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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帰路


 あら、ほんとに何でもお見通しなのね、とユーゴが思わず顔をあげると、

「いえね、私は仕事がら、インターキのギルド長フランクさんとは懇意にして頂いてるのですよ」とグランはニコニコして言って来る。

そう言う事か、

「という事は、ここであなたに喋る事を、ギルド長も承知という事ですか?」そう聞くと、

「まあ、予想はされてるでしょうね、ユーゴさんが私共にイスタンの滞在を知らせてくれた段階で」と笑顔を絶やさず言う。


ふーん、結局俺は、この人たちの想定通りに動いたという訳か、なんか癪に障るなア、

まあ、でも知られて困るような事も無かったしな、と、ユーゴは知っている情報を粗方話した。


「そうですか、まあ、それなら魔石を渡しても問題なさそうですね」とグランが言う、

「あれ、魔石の譲渡は、俺の情報待ちだったんですか、言ってくれればいいのに」食えない奴だなとユーゴは思った、

「教会が絡んでたんで、ちょっと慎重に対応してただけですよ、気を悪くしないで下さい」そう言ってグランはまた微笑んだ。


その微笑んだ顔を、少し真剣な顔に戻して、

「スパンク王国も教会も、東の情報を全く持っていないようですね、おそらく今回の航海は失敗に終わるでしょう」と言う、

「東の人達は強力な魔力をお持ちだ、あの程度の装備では太刀打ちできないでしょう、勘違いして強気に出なければいいんですがね」

と、まるで、自分は東の情報を持っているというような口ぶりに、

「グランさんは、東の事をご存知なんですか?」と聞いてみた。

「この港に拠点を構えて、東に興味を持たない訳がありませんからねえ、何度か遠征隊を出していますよ」とユーゴの様子を窺う様に言って来る、

「いくつかの民族と地道に振興も深めてます、彼らは気難しいのでなかなか大変ですがね」と言ったあと、

「もっとも、ユーゴさんは東のご出身と聞いてますから、よくご存じなんでしょう」と鋭い目つきでユーゴを見てきた。


あっ、そうだった、俺って東の国出身なんだった、ユーゴはすっかり忘れてた自分の設定を思い出して、焦りを感じた。

そうか、俺に会いたがった本当の目的はこれか。

いやあ、どうやってごまかそう、俺、東の事なんて全く知らないんですけどぉ、

「俺は東のさらに辺鄙(へんぴな所にいましたから、東全体の事はよく判らないんですよ、アハハハ」


グランは、明らかに様子のおかしくなったユーゴを見て、

「ユーゴさんにもご事情はおありなのでしょう、深くは詮索しませんよ、ただ、私共は、東の森の中に、陸路ではどうして超えられない、迷いの地、と呼ばれる場所がある事も知っていましてね」と又ユーゴの反応を見るように、さらに、

「そこをユーゴさんがどうやって越えてきたのか、とても興味があるんですよ」と言って来た。


あらあ、そんな場所があるのかあ、聞いてないよ。

ユーゴは内心焦りまくっていた、さあて、どう答えたもんか・・・

あ、と先日ドイルと空を飛んだ事を思い出し、

「陸路が駄目なら、・・・」とちょっと勿体ぶって言ってみた。


「ああ、そう言えば、ユーゴさんが飛竜に乗っていたという目撃情報がありましたね、そうですか、陸路ではやはり無理ですか」

ドイルは、一人納得したように顎に手をやり、考え事をしている。


ふひー、なんとか誤魔化せたかなあ、とユーゴは額の汗をぬぐった。


・・・・・・


次の日、ユーゴ達は帰路についていた、

馭者はカーク、来る時とは違いその隣にユーゴがいた、

「で、なんであんた達がこの馬車に乗ってるの、商会のスクルトさんに言えば、もっと乗り心地のいい馬車出してくれたでしょうに」そうユーゴが荷台に向かって言う、

「荷物が一杯あって、それを運んでもらう様に頼んだから、私たち迄馬車を出してもらうのは気が引けたのよ、いいでしょ、あんたに迷惑はかけないわ」そう返したのはアイーダだった、

「すみませんねユーゴさん、知らない土地ですので心細くて、ご一緒させて頂きました、よろしくお願いします」とジェラールが続けて言う、

「いいじゃない、大勢の方が楽しいわ」そう言ったのはみゆきである、ほんとに楽しそうにアイーダとおしゃべりしていた。

カークも隣でニコニコしている、ユーゴだけちょっと憂鬱な顔をしていた。


昨日、あの後グランが、スパンク王国の商人たちは大きな勘違いをしている、と言っていた。

それが、この二人がこの地に残るという事だったのだ、なにせ、魔法銃を考え出したのはこの二人なのだ、その二人が残るという事は当然ここでさらなる魔法銃の開発を進めるという事だ。

ユーゴはなるべくなら、この二人とジャステスの親父を会わせたくなかった、とんでもない物を作るのが目に見えたからだ、

しかし、ヒルフォーマー商会の手配で、すでに道具街のジャステスの店の近くに家を借りているという。

もはや、この二人の知識とインターキの職人の技術が融合するのは決定事項だった。


ユーゴは、これはきっとこの世界の歴史の流れなのだろう、と思った。

自分はあまり関わらないようにした方がいいと思っていた、この世界の歴史はこの世界の人が作るものだと考えていたからだ、

みゆきちゃんにも、その辺は伝えた方がいいかな、そう思いながら馬車に揺られていた。






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