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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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情報と昼食


 大型船の操舵室、

「船長、食料の調達は順調に進んでいます、しかし、魔石の方は交渉中で、もう少し時間がかかりそうです」

船長に向かって、副船長がそう報告する。

「そうか、まあ量も多いしな、仕方がないだろう、交渉事は商人達に任せるしかない」

船長がそう答えると、副船長はちょっと難しい顔をして、

「余計な人物を乗せている事が判ってしまったのでしょうか、この地の者は宗教には寛容と聞いていますが」と言う。


そこに、黒ずくめの服を着た男が不機嫌そうに入って来た、

「船長、いつまでこんな所に留まるつもりですかな、こんな邪教の巣窟に用はないのです。目指すのはもっと東、最果ての森の向こう側に広がる新天地なのですぞ」そう船長に迫る。

「そうはおっしゃてもですな、この港が最後の補給場所になるのです、ここで準備を怠っては、何が待ち受けているか判らない未踏の地には到底辿りつけませんよ、それに先々の事を考えても、この地の住人達とは友好関係を築きたいというのが我が国王の御意思です」

そう言って、胸を張った。

「いいですかな船長、我が教会がこの航海に出資してる額は、貴国と同等の額だという事をお忘れなさいますな、我々には権利があるのです、とにかくこの穢れた土地を一刻も早く出立できるよう計らってください」そう言って宣教者らしい男は操舵室を出て行った。


「ふん、これから行く土地がどのような場所かもわからないのに、どうしてああも楽観的なのか」船長がやれやれと頭を振る、

「神の御意思とやらで、信者を一人でも多く増やす事が目的のようですが、あの人格では期待は持てませんね」と副長もあきれ顔を作る。

「それなら、この地の魔導士に説教をたれればいのだ、魔法で丸焼けにされるのが落ちだがな」そう言って船長はため息をついた。



倉庫街の展示場、

「まったく、ここの連中ときたら、ああだこうだ文句ばかりでちっとも買おうとしない、やんなっちまうよ」

商人の一人がぼやく、

「まあ、仕方ないさ、奴らは魔力が高い、こんな道具を必要としない連中がほとんどだ、必要としてる人はここまで見にこれないしな」

もう一人が、慰めるように言う、

「今回は、魔石砲を見せるだけでいいんだ、こんな物があるとな、魔石砲や魔石銃は西の各国にはかなり浸透している、中には馬鹿な事を考えてる国もあるようだ、フフフ、一度、この魔石砲の脅威にさらされれば、いくら魔力が強い人間が多いと言っても対抗策として買わざる負えなくなるさ」

一番偉いと思われる人物がそう言う、さらに

「それに、今回の一番の目的は、新しい奴隷の調達場所を探す事だ、東の果てにどんな連中がいるのかそれを知ることが目的だからな、ここは、ついででしかない」と言って、不敵に笑った。


「それより、魔石の調達組はどうなっているのかな、地元の商人が出し渋ってると聞いたが、足元見られてるんじゃないのか?」

「まあ、突然大量に注文したんだ、時間稼ぎだろうよ、在庫が無いとは言いずらいからな、フハハハ」

そう言いながら、三人の商人が、入り口の扉に鍵を降ろして出ていく。


ネズミが二匹、それを見届けると、パッと蝙蝠に姿を変え、天井近くの空気窓から薄暗くなった外の空に飛んで行った。


・・・・・・・・


 「なるほどねえ」

蝙蝠達が集めた情報をメルマを通して聞いたユーゴは、頭を掻きながらそう呟いた。


まあ、どちらも直接ここに影響がある様な事は考えてないようだな、宣教師なんか早く出ていきたいようだったし、

商人の方が、少し物騒な事を言っていたな、

元の世界の大航海時代の幕開け期みたいなもんか、でもなあ、・・・


それにしても、スパンク王国の商人や教会の宣教師は見通しが甘いとユーゴは思った、

魔力が普通にあり、魔獣が闊歩するこの世界で、彼らの思惑通りに事が進むとは思えなかったのだ、

それに、元の世界の日本で、種子島に鉄砲が伝来した時、二丁の銃を買い取っただけで、直ぐ日本中に鉄砲が溢れた事を思い出し、

あれ、見せちゃったら、こっちの職人なら簡単に作っちゃうよね、と思っていた。

ジャステスの親父なんか、凝りに凝ってとんでもない物を作りそうで悪寒が走った。


まあ、これくらいのネタを持って帰れば、なんとかカッコがつくだろう、そう考えてその日は就寝した。



次の日、ヒルフォーマー商会の会頭、グランからユーゴだけが昼食に招かれた。


「このマヨネーズという調味料はいけますね、スクルトがみゆきさんに頼み込んでうちの料理人に教えてもらったんですよ、もちろんそれ相応のお礼はするつもりです」とサラダを口にした後、グランがユーゴの反応を窺うように言う。

「みゆきちゃんは、別にお礼は欲しがらないと思いますよ、あの子は純粋に料理が好きなんでしょう、・・あ、でも孤児院をもっと充実させたいとか言ってましたから、そちらを協力すれば喜ぶと思いますよ」とユーゴが答える。

「そうですか、孤児院ですか、もちろん喜んで協力させてもらいますよ」と、グランが品のある笑顔を作った。


 どうも、こういう相手は苦手だなんだよなあ、こちとら育ちが悪いからなあ、食事するのも疲れるよ、

元の世界では、スパゲッティを食べるのにも箸を使っていた元38歳のサラリーマンは、この手の腹の探り合いは苦手だった。

なんとか、うすら惚けて無難にやり過ごそうと考えていると、食後のお茶が出されたタイミングでグランがこう切り出した。


「ところでユーゴさん、大型船の情報は取れましたか?、出来れば私にもお聞かせ願えればと思っているのですが」




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