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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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蝙蝠レベルアップ

 

 確かに、自分の事をいつでもカエルに変えられる存在がそばにいたら、気味が悪い事だろう。

ユーゴはなんて答えようか少し考えて、ちょっと意味深げな顔で、

「フフ、秘密だ」と答えた。

アイーダは、ちょとビクっとした後、

「う、嘘ね、そ、そうやって私を怯えさせて、逆らわらないようにする魂胆なのね」とあからさまに空元気と判る口調で言って来る。

ユーゴは半目でアイーダを見ると、なるべく不気味な笑顔を作り、

「君がどう思おうと構わない、だが、私の正体を探ろうとしない事だな、それが君の為だ、フフフフ」かなりわざとらしく言う。


その時、パシーン、と思いっきり背中を引っ張叩く音がした。

「もう、何やってるんですか、ほんとに怖がってるじゃありませんか」みゆきがかなり本気で怒っている。

「あう、本気でいたいんですけど、みゆきちゃん・・・いや、反応が面白かったもんだから、つい」ユーゴが体をのけぞらしながら、みゆきに謝る。


その横で、口をパクパクさせてるアイーダに、カークが、

「大丈夫ですよ、ユーゴさんは本当はとても優しい人ですから、むやみやたらにカエルになんかしませんよ」と言うと、

「え、・・・本当に出来るのね」とアイーダは口を開け目を丸くしていた。


ユーゴは、確かにちょっと悪乗りしすぎたな、とは思ったが、アイーダが魔力の強い者に食って掛かるのを辞めさせないと、とは真剣に思っていた。おそらく、アイーダは銃の力を過信している、しかも、アイーダの故郷、スパンク王国とインターキを中心としたこの辺りとでは、魔力の強い人間の数も威力もかなり違うだろうと思われたからだ。

俺の言う事は聞きそうにないから、後でみゆきちゃんと相談しなくちゃな、そう思いながらアイーダを見ると、

アイーダは、鼻の孔を膨らませ、こっちを睨んでいた。




 その夜、ヒルフォーマー商会が用意してくれた宿舎に入ると、有難い事に個室が用意されていた。

ユーゴは、ギルドから依頼された、本来の目的について考えていた。

ジェラールとアイーダは、純粋にインターキのダンジョンの魔石が目的だと言っていた、スパンク王国で取れる魔石は種類が限られ、質もそれほど良いという訳ではないらしく、新しい魔石と出会えればすぐれた魔道具を作れるかもしれない、そう言っていたのだ。

おそらく、この二人は純粋な技術屋なのだろうとユーゴは踏んでいた、裏があるようには思えなかった。

特に、アイーダの方は、強い魔力の持ち主に対抗すべく、さらに強力な魔法銃を望んでいるようで、魔石によって威力の変わる魔法銃の強化に燃えているのは、傍から見てとても分かりやすかった。


問題は、商人達と、船に残っているであろう国の指令を受けた指揮官たちだな、さて、どうしたもんかと考えていると、

スッと姿を現したメルマが、何か言いたそうにフワフワとユーゴの周りを飛び始める。

「なんだよ、言いたい事があるならサッサと言えばいいじゃないか」そうユーゴが言うと

(マスターにお目に掛けたいものがあります)と機械のくせに勿体ぶった言い方をする。


「なんだよ、何か珍しい資料でも見つけたのか?」ユーゴがそう言うと、

(よし、整列)と号令をかける。

すると、壁に掛けてあったマントから蝙蝠達が出てきて、器用に二列縦隊に飛び始めた。

(マスター、我が蝙蝠隊の訓練の成果をご覧ください)いつもと同じような機械の口調なのに、自慢げに言ってるように聞こえる。

(初め)とメルマが言うと、蝙蝠達が一斉に、(へんげ)と掛け声をかけた、

すると蝙蝠達はストンと床に落ちる。そこに居たのは、なんと二列縦隊に並んだネズミ達だった。


 (これで、情報収集能力、及び範囲が飛躍的に広まります、今回の任務に最適と判断、推奨します)とメルマが言う

いつもとまったく変わらない見た目なのに、ドヤ顔に見えるのはこっちのせいなんだろうな、とユーゴが思っていると、

(これ、飛べないのが不便)(でも音波使わなくても色々見えるよ)(超音波も出せまーす)(色もわかるー)(隠密も強化したよー)とネズミに化けた蝙蝠たちが今までより明らかにしっかりした口調で思念を送ってくる。

「凄いな、お前たち本当に助かるよ」とユーゴがネズミに化けた蝙蝠達を素直に褒めると、

(主に褒められた)(やったー、嬉しい)(僕たち頑張る)と喜んでいる。


「では、早速だがB1、B2、B3、B4、B5、B6、は港の沖に停泊してる大型船に潜入して、乗組員、特に階級の高い者の会話を盗聴してくれ、B7、とB8、は倉庫の展示場の商人達だ、よろしく頼むぞ」とユーゴが指示を出すと、

体を蝙蝠に戻して(はーい)(お任せください)(行ってきまーす)と窓から外に飛んで行く。


部屋には、ユーゴとメルマだけが残った、

(マスターの要望に応えるため、当機以下蝙蝠団は秘密特訓を実施していました)

そう言うと、メルマはしばらくユーゴの顔の前で静止する・・・・・、


なんだよ、こいつ、自分も褒めて欲しいのか、でもなんか癪に障るな、

ユーゴも無言でメルマを見つめる。

・・・・・・・


根負けしたユーゴが、

「メルマ、お前もよくやってくれてるよ、お前が居なかったら困ってた所だ」そう言うと、

(当機の価値を認識頂き、幸いです。当機はマスターと思考を共にするもの、マスターが要望する事に応えられるよう最善を尽くします)

とメルマが答える。

なんか、気のせいかメルマに表情があるような気がしてきたユーゴが額に手を当てると、

(当機は、マスターの思考を元に行動しています)とメルマが言って来た。

それって、・・・ユーゴは、なんか嫌な事を聞いたような気がした。




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