三人旅
今日から、投稿再会です、またよろしくお願いします。
ユーゴは荷馬車の荷台に乗って、港町イスタンに向かっていた。
馭者は、ジャスティス武器屋の魔力をまったく持たないカーク、その隣には女勇者ことみゆきが座っていた。
どうしてこのメンバーでイスタンに向かっているかというと、それは数日前に遡る。
・・・・・・・
ユーゴは、ギルドに依頼されたイスタンの港に停泊してるスパンク王国の大型船の目的を探るべく、イスタンに向かう準備をしていた。
イスタンと言われてもなあ、行った事は無いし、知り合いもいなしなあ、どうしたもんか、と思っていると、
(マスターの記憶に、イスタンに本拠を置くヒルフォーマー商会のスクルトという人物がいます)とメルマが言って来た。
ああ、魔石を買いたがってたあの商人か、そうだな、商人ならいろいろ情報を持ってるかも知れないな、会ってみるか。
ユーゴは、ジャステス武器屋に行き、スクルトと会いたいので渡りをつけてくれと主人に頼んだ。
すると、その日のうちにカークが明日には会えると伝えに来た。
次の日、ジャステス武器屋に行くと、スクルトは先に来て待っていてくれた。
スクルトはすでにユーゴが前例のないスピードでレベル5まで上がっている事を知っていて、特別な人物としてユーゴと繋がりを持つことを望んでいたのだ。
「これはユーゴさん、お噂は聞いてますよ、蝙蝠の羽というチームを結成したそうですね、それもあの勇猛で知られるバースさん達と、いよいよのご活躍、陰ながら喜んでおります」
ユーゴはちょっとびっくりしたが、商人というのはこういう物かと納得もしていた。
スパンク王国の大型船に興味がある事を伝えて、魔石を売る条件で、港町イスタンでの滞在に便宜を図ってくれるように頼むと、
「流石はユーゴさん、あの船は色々面白いものを持ってきてますからねえ、私共もとても興味を持っています。わかりました、イスタン滞在の間は私共にお任せください、その代わり私共の会頭ともお会いして頂きたいのですが、よろしいですか?」と言って来た。
ユーゴはちょっと面倒だなとは思ったが、その位は仕方無いかと承諾した。
その様子をジッと窺ってたのがカークだった、フランクが去った後、
「ユーゴさん、イスタンに行くんですか?僕もぜひ連れてってください」と目をキラキラさせて頼んでくる、
スパンク王国の大型船の噂はインターキの街にも広がっていて、フランクも新しい技術を持ってきたというその大型船を見たくて仕方なかったのだ。
「ユーゴさん、馬車の馭者は僕がやりますから、お願いします」と言うとユーゴの返事も聞かず、
「親方、親方あー」と走っていってしまった。
ユーゴは、初めて会った時とすっかり変わったカークの様子に、笑みをこぼし、まあ、一人より怪しまれなくていいか、と呟いていた。
そして次の日、もう一人、目をキラキラさせてユーゴに迫って来たのが、みゆきだった。
「ユーゴさん、聞きましたよ、港町に行くんですって」ユーゴはみゆきの表情を見ただけで察しがついてしまった。
「私、こっちに来てから、何処にも出かけて無いんですよ、街の外は魔物が出るって言うもんですから一歩も出て無いんです」
そ、そうだよねえ、確かに若い女性としては辛いかもねえ・・
「カーク君も一緒だと聞きました」
ああ、カークとは随分親しくなってたんだっけな、
「私も連れてってください、お願いします」
こうなった時のみゆきを止める術を、ユーゴは持っていなかった。
「わかった、わかった、ちゃんとバーバラさんの許しとって下さいね」とユーゴが言うと、
「もう、とってあります」と答えてきた。
この人、勇者の能力に目覚めたら、かなり怖いんじゃなかろうか、寒気に似たものを感じるユーゴだった。
こうして、三人はジャステス武器屋所有の荷馬車で、港町イスタンを目指すことになった、スクルトにはあらかじめ伝えると、こちらは大歓迎です、と返って喜んでいるようだった。
「カーク、よく親父さんが許してくれたな」とユーゴが聞くと、
「今回は、武器に付ける装飾品の仕入れも兼ねてますからね、それに僕、これでも小物の製作で、結構役に立ってるんですよ、アイデアを絞る役に立つから、と言ったら許してくれました」
カークは、武器の本格的な製作はまだやらせてもらえないものの、みゆきにヒントをもらったり、自分で考えた小道具類を作って、近くの雑貨屋に卸していた、これが結構評判で、主人もカークの好きにやらせてくれていたのだ。
「僕は、武器の製作より、生活の役に立つものを作ってる方が向いてるのかもしれません、親方には怒られそうですけど」とカークは笑って言った。
「いいんじゃない、みんなの役に立つものを作れるなんて素敵よ」とみゆきも持ち上げる。
みゆきは、自分の欲しい調理場の道具をカークに作ってもらっているので、むしろそっちに専念して欲しいくらいだった。
実は、みゆきが教えた手漕ぎポンプは、魔石を使わなくても水が汲めると評判になり、すでにかなりの実績を上げていて、水魔法の使えない家庭に広がりつつあったのだ。
道中は、和気あいあいと続いた。