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神託の転移者  作者: 百矢 一彦
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探索初日2


 ブロックンベアは、こちらを視認すると、その巨体の見た目では想像できないスピードで近づいて来る、

「来る」とユーゴが言うと、ユイナはハッと我に返り、ブロックンベアが振り下ろそうとする腕に切り掛かる、その勢いのままその腕の下をかいくぐり、後ろに回ったかと思うと、背中を駆け上るようにして首を後ろから直刀で突き刺していた。

 ユーゴは、ブロックンベアの防御力など一切構わず、ジャンプ一番、ブロックンベアより高い位置まで飛びあがると、「カマイタチ」と念じながら刀を袈裟に振り下ろす。刀から放たれたやいばの様な真空の波がブロックンベアを捉え、体が二つに別れながらゆっくり倒れた。


倒した獲物を一瞥して、互いを見合うと、ユイナが「その刀は?」と聞いてきた、そう言えば元は龍人の持ち物だったなと思い出したユーゴは、「ああ、これは」と、妖刀風丸を購入した経緯を話した。


「そうですか、兄から手紙で槍にヒビが入ってしまったので修理するために手放した、と聞いていましたが、ユーゴ殿が買って下さっていましたか」と、ユイナは懐かしそうに遠い目をしながら言った。

「その刀は、修行に来ていた、侍の里の方との勝負に勝った証として頂いた、と兄が自慢げに見せてくれました。あの頃から兄は、谷の外の世界を見たがっていた」


 ユイナは、ユーゴが仕切り直して作った食事をとりながら、白龍の谷と自分の兄の事を語り始めた。

白龍の谷では、同じ日時に同じ行事を毎年繰り返す事が大切とされ、いつから繰り返されて来たか判らないその伝統を守る事が、守人の役目とされていた。

ユイナの兄は、その繰り返しの暮らしが嫌でたまらなくなったらしく、いつしか谷の外の世界に憧れるようになり、親との確執もあって、ついにユイナに置手紙だけを残し、谷を出てしまったという事だった。

「私も兄上の気持ちは判るのですが、白竜様は変化を嫌いますから、谷の外にはあまり出したがらないのです。今回は特別に許しを得る事ができて、こうして兄の様子を見に来たのですが・・まさか、こんな事になってるとは」

ユイナは軽く唇を結び、目を伏せた。


「じゃあ、ユイナさんは、谷を出たのは初めて?」

「もちろんです、ですから戸惑う事が多くて、・・それに龍人は珍しいらしくて」

「ああ、ジロジロ見られちゃったりするんですか?」

それは龍人だからという理由だけじゃないかも、と言おうとして辞めて置いた、その次に続く、美人だからと言うのが照れ臭かったからだ。


 ユーゴは、五階層にもワープの魔法陣を張って、ではそろそろ行きますか、と立ち上がった。

突然魚が襲って来る、ちょっと厄介な六階層も、衝撃波を覚えた蝙蝠達が魚を打ち落としてくれて、簡単に通過する事ができた。


その後も順調に進む。このダンジョンは、地下深くなるほど光が弱くなり暗くなって行くようだ、十階層になると、かなり暗くなってくる。

ユーゴがそろそろ明かりが無いと辛いと思い、ライトの呪文を唱えようかと思ったとき、

まるで、待っていたかのように、ユーゴの頭にメルマの声がした。

(当機の照明機能の使用を推奨、その為に個体名ユイナへ当機を使い魔として紹介する事を提案します)

はっ、何言ってんの?、お前みたいのを他人に知られたら余計ややこしくなるだろ、

(個体名ユイナの秘密厳守の誓いを確認、使い魔という名称ならこの世界でも不自然では無いと推測します)

・・・・お前、もしかしてユイナさんに紹介して欲しいのか?

(・・・情報収集の為、この世界の龍人とのコミュニケーションは有効と判断)

こいつ、・・・情報収集ねえ、・・まあいいか。


メルマとそんなやり取りして、ユーゴはユイナにメルマを紹介する。

「ユイナさん、今から明かりを照らす事のできる使い魔を呼びますから、ビックリしないでくださいね」

「使い魔、ですか?」ユイナは怪訝な顔をする。

「ええ、・・使い魔・・です」そう言って、これでいいかとメルマに問いかける。


スッと現れたメルマには、なんと蝙蝠の羽が付いていた・・・、

な、おまえ、それどっかで見た事のあるキャラになってるぞ、やめい~~!




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