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英勇者の天敵  作者: バル33
第四章:最強の五十VS究極の一
47/55

その5


「夕飯はじくっりことこと煮込んだ牛肉のビーフシチューだそうですよ」

「ほおそりゃ美味そうだ」


 木製のスプーンを掲げフンと息を鳴らしている。

 食事が待ち遠しいくて興奮のご様子。

 骨付き肉の時もこんな感じだったな。


「そーいえばサクライ。 前々から大英雄はご存知ですか?」

「サーレから聞いて初めて知ったよ。 英雄はキュレイピアから聞いてるけど、まさかその上が存在するとはね」

「では大英雄の力量も知らないのですね?」

「ああ、知らないな。 だけどキュレイピアの試算からして脅威にはなり得ないだろうけど」

「最後に一つ。 聖都ヴァルファルニアに住まう大英雄がどんな人物かもご存知ないのですね?」

「ああ、噂も聞いたことがない」


 そう答えるとティは鼻に指を当てて眉間にしわを寄せ考え出した。

 唐突な質問しては深く悩む。 なんのための聞いてきたのか。

 真意がわからないな。


「お待たせしました。 ビーフシチューでございます。 ごゆっくりどうぞ」


 と、ここで夕飯が運ばれてきた。

 角切りの肉に野菜もたっぷりで胃袋を刺激するいい匂い。

 さっそく頂こうとしたがまだティは思考を巡らせ中。

 食べ物に目にくれず考え事を優先するとは異常事態だ。


「おーい、ティさん? 夕飯もう届いてるぞ」

「…………あ、ええ。 頂きましょう」


 料理が運ばれて来たのも気づいてなかったようだ。

 よほど集中していた模様。 あの質問でそこまで考える要素があったとは思えないが……。


「冷めますよ」


 熱々のビーフシチューに息を吹きかけ冷まして口に運ぶティ。

 すでに半分近く量が減っている。

 食べるの早いなぁ。


「頂きます」


 手を合わせて食に感謝をする。

 丹念に煮込まれたスープを舌で味わい食を楽しむ。

 肉の油がよくしみ込んでいて美味しくてほっぺが落ちそうだ。

 王城以外にここまで美味い食事が提供されているとは感激した。


「おかわりお願いします」


 ものの五分ぐらいで完食したティが店員におかわりを要求。

 食うのほんと早いよ。


「少々お待ちを」


 空になった受け皿を片づけ厨房の奥へと消えていった。

 お腹をさすり「あと二杯は入りますね」と呟きまだまだ食う気満々だ。

 料理が届くまでの間暇なのか食べてる姿をじーと見てくる。

 母親の温かな目で見守るように視線を外さない。

 なんだか食いにくい。 こそばい感覚が首筋に襲う。


「……命に代えても守りますから、ター君」

「なにか言ったか?」

「いいえ、空言です。 あ、どうも」


 大事な言葉を発した気がしたが、店員が遮るようにビーフシチューをテーブルに置き去っていった。

 ティはなにを言葉にしたのだろうとモヤモヤしながら夕飯を取っていた。




                           ◆



 翌朝。 王国から避難勧告が発令された。

 聖都ヴァルファルニアから宣戦布告を受けた事実を包み隠さず国民に伝えた。

 当然大混乱が起きた。

 暴徒したかのように喚いては泣き崩れるものが続出。

 喧噪が収まったのは昼過ぎ辺りだ。

 

 国民は現実を受け止め旅路の準備を始める者や、生きる気力をなくし地べたに座る者。

 もう国として機能はしていない。

 滅びた王国と称してもいいぐらい静かで人が生気がない場所に変わり果てた。

 避難勧告をする前に「英雄と勇者は全て倒す。 住民には伝えなくていい」とサーレに二度言ったが聞き入れてもらえなかった。

 実力は認めてるが相手が大英雄と、その他大勢の勇者と英雄では絶対に勝てないと断言されたのはショックだった。


 信用されていないのだ。

 どれほどの強者(つわもの)でも数で圧倒され敗北するとサーレの意見だ。

 ティも反対の色も濃かった。

 サーレとティから挟み撃ちでマシンガントークされ降参したのは苦い思い出。

 旅に必須な道具をバックに詰め込み仕度し、今に至る。


 しぶしぶ従ってるのだ。

 なぜかサーレからは緋色の手袋に純白の上下一セットを授かった。

 なかなか高価な装備らしく魔法防御力が上がるらしい。

 身体強化あるのでいらない気がしたが身だしなみは大事と一喝され、仕方なく装備している。

 ……やっぱり白は似合わないな。


「俺様のボディはかっこいいだろ的な感じで見惚れてるのですか?」

「ちげえよ」

「それそうと。 まだ英勇者(やつら)と戦う気があったりしませんよね?」

「……ないな」

「そうですか」


 白眼で見透かされてるのはわかっている。

 ティに嘘は通用しない。

 戦う気がないといえば嘘だ。

 その場しのぎで虚言。

 旅に出かけるのもフェイクの一環。

 誰がどう言おうと殺し合いに行くつもりだ。

 たとえティが相手だろうと振り切って戦場に向かう。

 そんな内心を知ってるだろうティも百の承知のはずだ。

 止めれるものはこの世にいない。

 

 そうして日は過ぎていき英勇者が赴く一日前の夜が訪れた。

 王国に残っている者は勇者組と僅かな兵士、諦めて死を待つ住人のみになった。

 現在宿屋の空き巣で寝泊まりしている。

 ティも眠っているようだし明日に備えて寝ることに。

 眠気に襲われふかふかのベットにダイブする。

 しばらくして就寝した。


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