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英勇者の天敵  作者: バル33
第四章:最強の五十VS究極の一
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その4


 夕暮れと共に憂鬱(ゆううつ)に浸っていた。

 美しい町並みも戦火に巻き込まれるのを想像すると気分が滅入る。

 本日より五日後、聖都ヴァルファルニア全戦力をぶつけてくる。

 ほとんどの確率で町を守り切るのは不可能だろう。

 今夜明ければ現王サーレから避難勧告が発令される。

 勝ち目のない戦争で命を無駄に散らせないためだと言うのだ。


 俺が蹴散らしてやると発言したが聞き入れてもらえなかった。

 「いくらサクライが規格外の強さでも大英雄にはかなわない」と拒否されたのだ。

 世界に十三人の英雄を超えし英雄。 存在自体がイレギュラーと噂される化け物。

 勇者から英雄にランクアップするさえ常軌を逸脱しているのに、更に英雄の枠を突破した者。

 円卓の騎士を模倣して作られた最強最悪の勇者。 それが大英雄だ。


 もちろんその中で異質で凶悪で席に座る大英雄をまとめる長がいるわけだが……いつか衝突するのだろうと予想する。

 ともあれ進言しても拒否されたので、五十人相手に挑もうとすれば、どうしたものかと絶賛お悩み中。

 チクチクと監視役であろう人が尾行してるからだ。

 監視の目をかいくぐるのは難しそうだ。

 王国から抜け出して戦う意思を示せば全力でサーレは止めにくるだろう。


 静止を求められたら戦闘の邪魔になりやりづらくなる。

 そうならないためにも考え事しているのだ。

 しかし敗北すると思われているのは心外だな。

 ラルクの反逆なる不死鳥(ダメージカウンター)を受けてもなお、無傷だったのを忘れている。

 身体強化ギア一の威力を乗せて放つスキルには驚いたが、ギア二の盾には届かなかった。 

 それでも信用してくれず逃げる選択肢を取るのだから困ってしょうがない。


「せっかくの町並みも今後拝めなくなりますね」

「そうはならないさ。 俺が全て食い止める」

「正気ですか?」


 目を細めティは不安げに質問してくる。

 いつも肯定派のティが今回ばかりは反対の意見を述べてくる。

 大英雄はそれほど巨大な戦力なのか?


「正常だし身体強化が破れるビジョンが見えん。 なにより最高神から享け賜わった力だ。 そう易々と敗北する力を授けんだろうに」

「……だといいですね」


 どうも納得しないご様子だ。

 極点魔法の身体強化を持ってしても力不足と思われてる。

 ならば尚更大英雄との死闘が楽しみだ。

 どこまで渡り合えるのか実験させていただかこう。


「そろそろ日が落ちるし宿にでも泊まろうか。 サーレから金はがっぽり貰ってるしさ」

「はい、高級な宿屋に泊まりましょう」

「旅の資金も含まれてるから一般の安い宿屋しか駄目だ」

「ケチですね」

「贅沢するほど余裕はないわ」


 以前キュレイピアに奢ってもらった高級な宿屋をご所望らしい。

 あんなホテルに一泊でもしたら全財産が吹っ飛ぶ。

 心地が良かったのはわかるけど我慢するのを覚えさす。

 モダルヘルクを離れた後は貧乏旅行が続くだろうから慣れてもらわないとな。


「どの宿屋に行きますか?」

「そうだな…………こことか良さそうじゃないか」


 一般エリアでも品性のいい外装をする宿屋を示す。

 昔ながらの老舗って感じで居心地が良さげだ。


「はあ、ここ……ですか」


 露骨に嫌な顔をする。

 眉はひそめては頬を痙攣させている。

 そこまで気分を害するか。 うーん、悪くないと思うのだけど。


「主人がどうしても行きたいと仰るので参りましょう」

「もうわかったよ。 ティが嫌なら他の宿屋にする」

「てのは冗談ですので行きましょう」

「冗談かよ!」


 薄ら微笑み宿屋に行こうと催促される。

 完璧に騙された。 少しは疑う癖をつけたほうがいいのかも。

 簡単に相手に騙されては先が思いやられる。


 宿屋に着いた後は店主に金を払いマイルームの鍵を受け取る。

 お金にはまだ余裕があるので、別部屋にするかティに問うが相部屋でいいとのこと。

 裸を見えられたのを気にしてないようだ。

 部屋に入ってからはいうものの、なにもすることがなく無意味に時間を潰すだけで暇だ。

 ティと会話する以外やることがない。


 会話が終えれば沈黙が流れれば無音が占拠する。

 こう平穏が続く世界が末永くあればな想像を膨らませる。


「鐘の音……夕飯の時間です。 迅速に行動しましょう」

「飯になると急に元気になるよなぁ」


 ゴーンと店全体に音が反響し広がり、夕飯の時間だと伝えてくれる。

 この音が飯の時間なのを知るのは初めてだけど、食べに行きますか。

 すでにティの姿はない。 一目散に食堂に向かったのだ。

 主人を立てる気づかいはないらしい。 まあ、いいけど。


 部屋を扉を閉めた後は、一本道を進みのれんが垂れさがる先へと赴く。

 のれんを通ればにぎやかに騒ぐ宿泊客が木製の長テーブルに集まり椅子に座っていた。

 壁の端っこにはティが鎮座しており、飯がまだかまだかと待ち遠しい笑顔でご機嫌だった。

 ティに近寄り隣に座り飯を待つことにする。

 

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