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英勇者の天敵  作者: バル33
第四章:最強の五十VS究極の一
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その1


 四勇との闘争から早三日が過ぎた。

 コロシアム形式で元四勇の一人であるラルクに勝利した翌日に、王国の機密情報及び激闘の結果を包み隠さず国民に公表した。

 不安、疑念、野次罵倒が飛び交い王が仕切る政治は一日で崩壊。

 王権は剥奪され、国に関与していた貴族たちも地位を失い廃れた。


 案の定、王族や貴族どもは恐れをなして逃亡し国から姿を消した。

 追うこともできたが国自体が揺らぎ滅びかねない状況下だったので見過ごした。

 国をまとめる者は誰が相応しいかと国民投票の結果、サーレに決まったのはいい話。

 信頼も厚く前々から人気があったのが功を成したようだ。

 新王に着任したサーレは激務に追われる日々。


 他人事だけど王にならなくて良かったと、自分ことサクライは遠目で山積みになっている書類を必死にさばいているサーレを眺めていた。

 傍らで手伝いをしているラルクの姿もある。

 真実を告げられてからラルクは別人のように激変した。

 口調も柔らかくなり、人の接し方も優しくなり、今まで犯してきた罪を払拭しようと努力している……そんな印象を抱いた。


 生かした甲斐があったなと心の中で頷く。

 真実を知れば改心する者もいるという情報を得たからだ。

 勇者というやつはただの無知な野郎が多いのかもしれない。

 ちゃんと話せばわかり合えるやつもいる。

 語り合う前に聞く耳持たずで戦闘する輩ばっかで苦労するが、良いデータが手に入った。


「……もうだめだ。 HPが持たない」

「へこたれるな。 ゴールはあと少しだ」


 二人とも目の下にクマを作りながら終わりが見えない書類の山を裁いている。

 使用人の話によると、かれこれ二日も眠ってないそうだ。

 ……ほんと王に選ばれなくて心底よかった。


「さ、サクライ。 ……手伝ってくれ」

「絶対に嫌だ。 不眠不休はごめんだ」


 充血した瞳でお願いされたが断る。

 長時間労働の影響で病んでいる二人のもとに行きたくない。


「これから用事があるから仕事がんばれ」

「薄情者……少しぐらい手伝ってくれてもいいじゃないか」

「やなこった」


 恨めしい視線を飛ばし書類を猛烈なスピードで判子を押しているが、気にせず階段を下り王の間を後にした。

 三階から一階まで下り門を潜り抜け城をから脱出する。

 高級住宅街を歩くと奇異な目で見られるがスルーし、一般住宅街を通り抜けスラム街に足を踏み入れる。

 手入れされてない路上を直進し教会を過ぎてさらに奥へと進む。

 スラム街の端っこに位置する場所、魔女の家にやってきたのだ。


 約束を叶えてもらうために足を運んだ。

 待ち合わせ通りの時間に到着。

 すでに先客がいた。


「遅くもなく早くもない到着ですね」

「おはようさん、ティ」


 大半は赤褐色のローブで身体を包み隠し純白の瞳を持つ少女、ティ。

 事前に待ち合わせをしていたのだ。

 再生屋の店主であるマルドさんの治療を受けに来た。

 王国の地下室に赴き、マルドさんの娘を救い出した報酬をもらいにここまでやってきた。


「起きてますか、マルダルク・エシュタニアさん?」


 フルネームで相手の名を口にし、ティが呼び鈴を一回だけ鳴らす。

 足ふみを五回したぐらいの時間で扉は開き、紫色の双眸で見られる。


「学習したようだね。 なんども鳴らもんなら薬漬けの刑にしていたよ」


 呼び鈴を連打し睡眠を妨げたことをまだ根に持っていたようだ。


「さあ、お入り。 もう片耳再生させてやるよ」


 前より顔が良くなったように感じる。

 自分の子が無事に戻って来たからだろうか雰囲気が穏やかだ。

 マルドさんの後ろに付いていき、治療を受けた場所二階のポーション部屋にお邪魔する。

 部屋に入るとサイズが合っていない帽子を被る小柄なマルドさん娘がいた。

 薬を見つめては手のひらサイズの紙に鉛筆で殴り書きをしていた。


「お客さんが来たよ、ルル。 挨拶しな」

「あ……あの時の怖いお兄ちゃんと優しいお姉ちゃんだ。 おはようございます。 ルルキマク・エシュタニアと申します。 牢獄から救ってくださり感謝感激です」


 若輩ながら礼儀正しく好印象だ。

 (しつけ)をしっかりしている。

 どこかの奴隷さんは時々毒を吐くので見習ってほしいものだ。


「髪にゴミでも付いてますか?」

「いや付いてないよ」


 勘づいたのか目線を逸らさず眼光を飛ばしてくる。

 怖いなこの子。


「あとで腹パン百発しますね」

「なにも悪行働いてないのに暴力宣言やめてください」

「邪悪な感じがしたので殴らないとストレス発散できません」


 日に日につれてティが凶暴化してる気がするのはなぜだろうか。

 ご主人に敬意を払う心はどこにいったのやら。


「さあ、ティちゃんこちらへ」

「はい」


 治療のため太陽光が差し込む窓付近に呼ばれて向かう。

 企業秘密とやらで命令される前に九十度に方向転換。

 ティの片耳が終わ治るまで適当にくつろぐことにする。

 

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