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英勇者の天敵  作者: バル33
第三章:欺瞞の王国

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その18


「うっはっは。 マジかマジか。 おもしれぇイベント発生だよ」


 観客席から拍手をし大声で笑うキュレイピアがいた。

 謎の光の正体を知ってる様子だ。

 腹を抱えて笑っているロリっ子に聞いてみるか。


「おーい! コイツの身になにが起こってる?」

固有(ユニーク)スキルの発現だよ。 逆境に苛まれ追いつめられることで稀に潜在能力の覚醒することがある。 兆候としてはそのベール(ひかり)。 追いつめ過ぎたんだよ、君は。 スキルの能力によっては逆転劇があるかもしれないよ」


 ケリをつけるのはいつでもできたが、敢えて実行しなかった。

 装備の性能やそれを扱う担い手がどれほど力量があるのかを測るためだ。

 慢心が引き寄せた結果が固有(ユニーク)スキルの覚醒。

 破格な能力じゃないのを祈る。


(みなぎ)る……(たぎ)る……これならてめえを倒せる」

「全力でこい。 逃げも隠れもしない」

「いいぜ。 肉片も残さず消滅させてやる。 ()()()()()()


 やつの身体から電球みたいな灯が這い出り、七色の剣に集いだした。

 だんだんと光は膨れて巨大になっていく。

 完成した光の結晶体は黄金に輝き鳳凰を(かたど)っていた。

 芸術だと思うほど綺麗で美しい。


反逆なる不死鳥(ダメージカウンター)!!」


 剣先から放たれる渾身の一撃。

 不死鳥が通った場所は高熱で焼かれ焦げていた。

 絶大なるエネルギーに恐れ入った。

 魔眼による計測だと瀕死になるダメージを負うのがわかる。

 回避しようと思えば可能だ。 だが後ろにはティにロリっ子がいる。

 避けてしまえば不死鳥に喰われてしまう。


 ……逃げる選択肢はなし。

 かといって強力な一撃を耐えうる防御力もない。

 今の状態での話だが。

 十年も異世界で暮らしてないだろう経験不足の勇者に、引き出させざるおえない状況に持ち込まれとは……固有(ユニーク)スキルとはなんとも厄介な力だ。


「――ギア二、解放」


 直撃する一歩手前でギアを上げ不死鳥に呑み込まれた。

 集約した力が人壁に接触すると空に向かって光の柱を形成し黄金の粒子が舞い落ちる。

 決まった。 最大威力をその身に受けたがわかり次第歓喜の声を上げる。

 勇者しかり王国側は「うおおおおっ!」と叫ぶ叫ぶ。

 あの一撃を受けて生きてるはずがない。

 塵も残さぬ滅殺の光なのだから……とでも考えてるだろうな。

 

「王様! おれ、おれ……やりましたよ!」

「そなたはこの国の英雄じゃ。 よくぞ成し遂げた」


 生死の確認をするまでは勝敗は決まらないと最初に伝えたはずだが、喜ぶのも無理もないか。

 英雄クラスでさえ即死だろうから。 


「あ……あっ……うぅ……」 

「あれれ、泣いてどうしたの?」

「主人が目の前で死んだんですよ。 悲しまないあなたはなんなのですか!」

「いやー、早計だと思うよ。 リングをよく見てみなよ」

「………………えっ! い、生きてる!」


 砂埃が邪魔なので腕を振るって風圧で退かす。

 無事だと伝えるため背を向けながら手の甲を見せる。

 身体強化中ゆえにティの泣き声はちゃんと耳に届いていた。

 悲しんでくれるとは俺は案外愛されているのかもな。


「第二ラウンド始めようか」

「……はあ!?」


 甲高い声で幽霊と遭遇したように腰を抜かした。

 五体満足なわけがない。 英雄をも滅ぼす必殺だと。

 だが現に生きて立っている。

 それも火傷なく損傷箇所が一つもなし。

 口をパクパクし顎が震えていた。


「あう、ううそだろう! どうやって避けた!」

「生身で受けたよ。 大したやつだ。 ギア二を使わさせるとはな」

「あり得ない……あの一撃をまともに喰らって立ってるなんて。 ……そうか、固有(ユニーク)スキルで防いだのか」

「不正解だ。 お前らのよく知る基礎中の基礎魔法。 身体強化だよ。 まだ二割しか出してないけどな」

「そんなわけあるか!」


 当然のごとく信じなかった。

 ただの身体強化で一帯を消し炭にする攻撃を防げるわけがないと。

 やつの知識ではそう決めてしまっている。

 だけど極限まで極めた身体強化は常軌を逸脱した魔法。

 己の知識に当てはまるはずがない。

 そりゃあり得ないと言うのは仕方ないか。

 

「無傷で余力を残してるけどまだ決闘は続けるかい? お前に戦う意思があるとは思えないが一応聞いておく」

「…………降参だ。 あの一撃で全てを賭けたんだ。 それで倒せなかったらお終い。 実力の差もわからず挑むバカじゃない」

「お利口で助かるよ。 お前ほどのやつを失うのは国にとってダメージが大きいからな。 殺さず済んでよかったよかった」


 必ず後で役立つ人材を亡くすわけにはいかない。

 勇者が存在しなければ世界を渡り合えないからだ。

 もしもいなければ他国に攻められ蹂躙されるだろう。

 それを見越してギブアップありのルールで決闘を申し込んだ。

 キュレイピアは不服そうだったが逆らえない以上自由にやらせてもらう。


「王権も剥奪したし一件落着」


 勝負勝ったことで、国ぐるみの機密を市民に知られることになる。

 権力も失い逃亡を図るだろう。

 ようやくこの国の平和が訪れる……その頃はそう思っていた。

 

  

 

     


次は第4章に移ります

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