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英勇者の天敵  作者: バル33
第三章:欺瞞の王国
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その16


「《アイアンニードル》」


 無から手のひらサイズの金属性の釘を持ち、身動きが取れない茶髪の勇者に向かう。

 瞼が閉じないよう指でこじ開け釘をゆっくりと近づけさせる。


「ま、まさか、おまえ!」

「想像通りだよ、目ん玉を抉りだそうとしてる」


 恐怖を植え付けるかのように時間をかけて目に向かわせる。

 接触まで数ミリといったところで動作を停止した。


「やめてくれやめてくれやめてくれ!」

「ぴーぎゃぴーぎゃ喚くなよ。 目ん玉以外誤ってくり抜くかもしれないじゃない…………といたぶるのはここまで。 『制約のもと勇者を故意に傷つけてはならない。 危害を加えられた場合や逃走する場合においては魔法の行使を許可する。 ただし、許容を超える魔法や攻撃は禁ずる』、なんて制限があるせいで君を殺せない」

「……なにを言っている?」

「わからなくて結構。 不満をぶちまけてるだけだしねぇ。 だーけーどー……図に乗るなよ小童が。 妹がなんで勇者のせいで神経を擦り減らさなきゃいけない? 妹がなんで勇者のせいで痛みを伴なきゃいけない? 妹がなんで勇者のせいで命を削らないといけない? ……己ごときはいつでも肉塊にできるのを忘れるな。 制約がなければ死ぬのがいいと思わせるぐらいの苦痛と絶望を味あわせて黄泉に送ってやるところだよ。 ――制約があって助かったねぇ……クソナメクジ君」


 早口で喋っては、憎悪と憤怒の瞳で睨みつけていた。

 殺したくてうずうずしてる殺人衝動を深海に沈めて収め、アイアンニードルの魔法を解いた。

 と、なぜか首を傾けて手を振り誰かに挨拶をしだすキュレイピア。

 悦ばしいキュレイピアの先には血に染まったサクライが険しい顔で立っていた。



                           ◆



「なにこの状況は」


 意識のないサーレに取り逃がした勇者が、キュレイピアに拘束されている現場に困惑した。

 ダウンしているサーレはなんとなくわかる。 激しい戦闘の末、敗北したのだろう。

 だけど、キュレイピアが謎過ぎる。

 いつの間にかにかはぐれて、姿を見せたら見せたで勇者を捕まえてるしわけがわからない。

 行動が不可解なのは今に始まったわけじゃないが。


「うぅ……怖かったよダーリン!」

「気安く抱きつくな」

「あだいだあああああっ!!」


 走って来たと思えば抱きつく変態にこめかみを圧迫し激痛を与える。

 ほんと不可解で困る。


「で、このカオスな空間はなんだ? 説明してくれ」

「王国全体を調査して帰ってきたらサーレ君が倒れてて、茶髪の勇者に襲われたので拘束しました。 喧嘩はやめようよと提案したんだけどねぇ、聞いてくれなくて」

「なるほどな。 にしては勇者は相当怯えてるようだが? 拘束以外なにかしただろ」

「いんや、なにも。 我の力の前に恐れ入っただけでしょ」


 悪魔的な笑顔は嘘を吐いている証拠。 短い付き合いとはいえ、簡単な嘘は見破れるようになった。

 軽い嘘を吐くときは目を細めて口を大きく広げるのが特徴。

 あの勇者はなにをされたのやら。


「ティ怪我はないか?」

「心配に及びません」

「君は転んだりしてない?」

「は、ははい! 転んでません!」


 優しく語りかけ傷がないか確認したが大丈夫だったようだ。

 さてと、本題に移ろうか。


「捕まった気分はどうだ?」

「ゲロを吐くほど最悪だよ。 まさかてめえの仲間にチート持ちがいるとはな」

「存在自体が特異だからな。 ま、それはいいとしてチャンスを与えよう」

「チャンス?」

「ここで抵抗できずに死ぬか、抗って死ぬか」

「けっ、抗うもなにも時期に仲間が来る。 拘束を解除してくれる。 死ぬのはてめえだ」


 盲目なのか信じたくないのか、俺がこの場にいる時点で四勇のうち三人は五体満足ではないだろうに。

 現実を教えてやるか。


「期待するのはいいけど、仲間は助けに来ないぞ」

「嘘コケ。 てめえは上手く逃げ切っただけだろうがよ。 勇者三人相手に無事なわけがない」

「よーく観察してみろ。 この手は何色に見える?」


 女勇者の頭蓋を潰した影響で真っ赤な血がこびりついているのを見せる。

 さらにかかとを見せてやると、彼の表情に変化が訪れる。

 じっくりと身体を見渡し確信してしまったようだ。

 仲間は破れてしまったのだと。


「規格外の強さ……英雄クラスか。 どおりで皆が負けるわけだ」

「英雄ではないが英勇者(お前らを)殺す力を備えているだけだ。 さあ、理解したお前の選択はどっちだ?」

「……抗う。 まだてめえより弱いと決まったわけじゃないからな」

「強気でいいことだ。 勝負の日程は後日通達しよう。 キュレイピア、彼を解除して王様のところまで連れて行ってくれ」

「たく君ってやつは……殺せば解決なのに。 はいはい、逆らったらアイアンクローするんでしょ。 送り届けますよーだ」


 ぶつくさ文句を言いつつも拘束を解いて舌を出してべーとしてくる。

 手首を光の鎖で縛ったまま空を飛び王城方面に向かっていった。

 干からびているサーレを回収し住処に帰るのであった。  


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