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英勇者の天敵  作者: バル33
第三章:欺瞞の王国

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その11


 分娩台に大勢の人が座っている光景だった。

 頭には管付きのヘルメットを被っており身体は大小なり痩せ細っている。

 肘辺りに点滴を投与され「……うぅ」と唸っている状態。


「なんなんだこの部屋は……」


 体験モニターをしている様子ではないのはわかる。

 強制的に拘束されたようにしか映らない。

 分娩台に固定されている一人に近づいてみるとひどい有様だった。

 骨と皮しかなく肉がない。 生気もなくまるで飼い殺ししているようだ。

 一体、王国はなんのために非道なことをしているのか。


 歯を噛みしめ怒りを抑え、ふと管の先を追っていくことにした。

 異臭の漂う道を突き進みチューブが伸びる最奥まで歩んでいく。

 たどり着けばそこは淡い青光が照らし、女の子が両手を管の出入り口にかがげていた。

 ポトリと輝く液体がチューブの先端から落ちて大釜に満たされている。

 生命体のように液体は蠢き、生きている感じだ。


 戦慄した。 理解してしまった。

 あの分娩台に頭に装着されたヘルメットの意味を。

 身体強化を解き、抑えられない衝動を床に叩きつけて怒りを発散してしまった。

 こんなことが許されるのか。


「ひゃひ!? だだ誰ですか!」

「――身体強化」


 怯える少女だが許すわけにはいかない。

 なぜなら少女がやっていた行為は()()()()()()()()()()()()からだ。

 死なない程度に魔力を徴収し、生き殺しをさせている。

 薬で延命させ魔力を搾り取る外道。 許せるわけないだろう。

 ふくらはぎに力を注ぎ首を跳ねようとした途端、ティに裾を引っ張られ静止させられた。


「早まってはいけません。 あの少女は魔女の子供ですよ」

「魔女の子供…………そうか、マルダさんのじつの子」


 危うく殺すところだった。

 ティの助言がなければ今頃屍になっていた。


「驚かせてすまない。 君を助けに来た」

「え、え。 もう魔力を引っ張らないでいいの?」

「勘違いしてるが王国の者じゃない。 マルダさんの使者だ」

「……お母さんに会えるの……」


 信用してないようでもう一度問いをかけてくる。


「会える。 今日中にな」

「……ふぐぅ……うぇ……ひぐぅ……」


 こぼれる涙を裾で隠し泣いていた。

 どれだけ王国に縛られ閉じ込められていたのか想像を絶するだろう。

 マルダさんが地下室に差し向けた理由は、じつの子を助けてほしかったから極秘情報を流したのだ。

 もう一つは非人道的な行為を知ってもらうためもある。 

 予想外な人物がいたがマルダさんの子を救えてよかった。

 あとは地下室を脱出するだけなのだが、魔力を吸い取られる人たちはどうするべきか。


「おやおや。 侵入者が誰かと思いきや勇者様でしたか」

「あんたは……火球を撃ってきた執事か」


 ロウソクの入ったガラス瓶で闇を照らし立っている執事。

 侵入してからまだ十分と経ってないのに気づくのが早すぎる。

 まさか監視でもされていたのか?


「いくら勇者様でもおいたが過ぎますね。 これを見られたからには生かして帰すわけにはいきません」

「ほお……あんたが俺にかなうとでも?」

「いえいえ滅相もございません。 お相手するのは私ではありません。 同格の勇者様でございます」


 タクトのような棒を胸ポケットから取り出し、魔法石であろう塊に口を近づける。


「緊急事態であります。 勇者サクライが強奪及び殺害をしました。 至急、一階門前にて勇者様方お越しください」

「嘘の情報を流して操るか。 だけどな、詰めが甘い。 どうやら四勇はこの部屋を知らなさそうじゃないか。 俺がここから離れなければ困るだろ?」

「たしかに困りますな。 ではこうしましょう」


 タクトの切っ先を分娩台にいる人に向けた瞬間、身体はじけ内臓に血が飛び散る。

 魔法を使用した形跡は感じなかった。


「てめえ!」

「勇者様が大人しく出て行ってくださるのなら公開処刑はしないであげましょう。 もしも歯向かうのならば、一帯を血潮の海に変えてさしあげましょう」


 身体強化で距離を詰めたとしても執事は一振りで抹殺できる。

 つまり人質に取られた。

 下手に刺激すれば皆死んでしまう。

 不本意だが部屋を出るしか道は残されていない。


「覚えておけ。 必ず貴様には天誅がくだると」

「ほほ。 それは楽しみですな」


 (あざ)笑う執事を置いて地下室から脱出する。

 魔力を強制的に吸い取る魔道具を国ぐるみでやっているのならば、城内にいるすべての使用人と王族に対話を求めても無駄だろう。

 希望があるとすれば四勇の説得だが難しい。

 今は逃げること先決にする。  


「お二人さん、ちょっと我慢してくれ」

「「へ?」」


 両脇でティと魔女の子を抱えて爆速で城内を駆け巡る。

 彼女らの足では追いつかれ捕まってしまうと考えた結果だ。

 サーレの武具を回収後、檻で退屈している彼を救出する。

 どこに武具を保管しているかは調べはついている。

 夜になる前に歩きまくった甲斐があったものだ。 

 

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