表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英勇者の天敵  作者: バル33
第三章:欺瞞の王国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/55

その8


 異様な光景に見えるだろう。

 高級住宅街に似つかわしい格好をした少年と少女。

 所々衣服には血が付着し品性のかけらもない。

 なにより住人は服装より黒髪に目を奪われていた。

 異国の者の証ともいえる不吉の象徴。


 黒髪は勇者以外ありえないのだ。 好んで黒に染める輩がいるのならば命知らずである。

 勇者となれば襲う敵は多く、倒せば一躍人気者になれるが現実は甘くない。

 異界の者は桁外れに強く原住民が勝てる相手ではない。

 だからこそ勇者と呼ばれる。

 ……はあ、いくら勇者が異質とはいえ羨むような蔑むような眼差しは気になる。

 四勇とやらはよく視線に耐えれるものだ。 


「着いたか」


 不快感を覚えながらも王城の前へとたどり着く。

 背に担いだ()()()()()は降ろさず、門番に歩み寄る。


「偉大なる勇者様が王との面会を望んでいます。 至急、王に伝えてください」


 言葉が詰まっては威厳が台無しになるのでティに代弁してもらっている。

 初対面で上がらず話すのは難易度が高すぎるからだ。

 門番が慌てて城に消えてから十分後、頑丈そうな扉が開き執事らしき人物が鎮座していた。

 お辞儀をし「お待ちしておりました」と声に発した刹那――火球が目の前に広がった。

 余っている腕で炎を振り払い霧散させる。

 いきなり攻撃を仕掛けるってことは潜入捜査はすでに知られている。

 作戦失敗か。


「お見事。 偽物ではないようですな」

「誰だ?」


 天から……ではなく小窓から髭を大量に生やしたおっさんが見下すように眺めていた。

 黄金に輝く(かんむり)を装着し、いかにも王様の雰囲気漂わす。

 あれがこの国を腐敗させている王様か?


「此度の無礼はお許しくだされ。 勇者と語る偽物が多いこと多いこと。 そこで選別に平均程度の魔法使いであれば灰になる攻撃をさせていただきました。 ですが、勇者様はなんなく掻き消しましたので本物と断定いたします。 さて、立っているも疲れるでしょう。 どうぞ中へお入りください」

「……」


 王様らしき人物は小窓を閉ざしどこかへ行ってしまう。

 黙って聞いていて、そこはかとなく王様が気持ち悪く感じてしまった。

 上手く表現できない感覚だ。


「では、セバスチャンが王の元へとご案内します」

「……」


 先ほど炎の球を撃ってきたのを忘れたようにケロッとしている執事に無言になる。

 謝りもしないのかと怒りを覚えながらも執事の後を追う。

 城内に入ればそれは圧巻した。

 奥まで永遠と続く紅いカーペット。 壁際には花形のランプと白色の扉が均等に配置されている。

 相当お金をかけたのであろう豪華で煌びやかな内装に感想が一言。

 その費用をスラム街に向ければいいのにと。


 腐った王国にそんな良心はないかと思いつつも、執事のほうを見やる。

 翡翠の宝石を握りしめ天井に向かってかかげると床が突然変化しだした。

 階段が出来上がり天井の壁もなくなっていたのだ。

 機械仕掛けの城ってのがふさわしい。

 二階へと上がるとこれまた執事が天に石をかかげて隠し通路が開かれる。

 

 敵に侵入されても制圧しにくい作りで感心してると、玉座の間に到着したらしい。

 偉そうに肘をつくさっきの髭親父に、扇子で口を覆い隠す王妃だろうか。

 左右には二人ずつ勇者と旅の仲間である冒険者か。

 どうも歓迎されているわけじゃなさそうだ。

 

「ではさっそく本題にうつりますぞ。 今宵はどのご用件で我が城に参られた?」

「単刀直入に言う。 あんたの仲間に入れてくれ」


 憎むべき存在が四人がいるのもあって喉が締め付ける感覚がない。

 それと王様が硬直してるのが面白いのだけど。 よほど虚をつかれたのだろうか。


「仲間……ですかな。 恐れ入りながら理由を聞かせてはくれませんか?」

「自由に楽して生きたいだからだよ。 みそぼらしい服装は嫌だし、まずい飯ばかりで気が滅入る。 コツコツと働くのも面倒だ。 気ままに楽してスローライフを送りたいだけなんだよ。 もう今の生活はうんざりなんでね」

「ふむ…………そなたは楽して余生を過ごしたいと。 すなわち王の指令もなんでもこなすと?」

「ああ、どんな指令でもクリアさせてみよう。 その方があんたにとっても都合がいいだろ」


 不敵な笑みを浮かべて狂っているように演出させる。 

 王はまだ悩んでいる。 あと一押しで懐柔できそうだ。


「しかし、そなたは反逆者ともいえる勇者サーレと共に暮らしていた者だ。 にわかにその言葉は信じがたい」

「つまり証拠となる物を提示すればいいんだな。 ほら、手土産だ」


 荒々しく背負っていた荷物を放り投げた。

 投げた瞬間に警戒の色を表すが開けるようにと俺は指示をだす。

 勇者の付き添いである魔法使いがくくっていた紐をほどくと一同騒然した。

 袋の中身は、かろうじて生きているサーレが出てきただから。


 ……すまん、投げた衝撃で痛かっただろうにと心の中で謝っておく。

 虫の息状態に見えるのはサーレの演技なのだ。

 王城に侵入し、信用してもらうための方法。

 サーレと仲間割れしたと思い込ませる策略なのだ。

  

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ