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英勇者の天敵  作者: バル33
第二章:守護竜の役目
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その15


 投げた衝撃で天井に壁に床と赤い液体が飛散していた。

 殺しの現場を見せたくなく、遊びに行かせた子供たちが帰る前に、血を拭き取るのに間に合う気がしない。

 死体の処理もプラス、血の痕も消すと不可能だ。 ……大戦犯してしまった。


「もう外に移動させたのか……さすがだね。 運んでくれたことに感謝するよ」

「ぅぐ、いや、その、ですね」

「急に敬語になった。 君らしくないよ」

「あの赤い点々をどうしようかと思いまして」

「ああ、血の痕ね。 飛び散るのは毎度のことだし、私の魔法で浄化するから心配には及ばない」


 聖属性の魔法が便利で助かりました。

 液体でも浄化できるとはいい能力だ。


「浄化はあとでするとして、教会の子たちに見られる前に遺体の処理をしよう」


 血痕など気にも止めず教会から出ていく。

 中に居ても退屈なので死体処理を拝見していくことにする。

 付いていくと遺体の山の隣に手回しのレバーが視界に映った。

 レバーを掴み自転車を漕ぐように回転せていくと、ギギギと地面が割れて隠し扉が飛び出した。

 サーレは死体を担ぎ真っ暗な底に落としていく。

 ドスンと鈍い音が鳴り響き、結構深いようだ。

 すぐ隣もあってか山積みだった遺体は扉の奥に全て消えた。


「それは?」

「魔石、レッドフレア。 火薬の十倍以上の効力を秘めている。 燃やすのに効率がいいんだ」


 ひし形の一つまみ程度の紅い宝石。

 魔物の体内に稀に構成される結晶体。 魔力が凝縮した物とキュレイピアからは聞いていた。

 高価な代物なのによく使う気になれるな。 実は金持ちなのかと疑う。


「痛い出費だけどみんなの安全のためだ。 えいっ!」


 魔石を暗闇に投げ、腰にかけているポーチからマッチ棒の形をした木を防具に擦り付けて発火させ落とした。

 黒しかない世界に朱色が照らされる。 爆発にも等しい炎の燃え上がり、熱気がすざましい。


「うっ……おえ……」


 人が焼かれる臭いに吐き気を催す。 尋常がないほど鼻につく異臭。

 前世で臭いは経験したことがあるのに耐性がまったくない。

 他の三人は底を見つめて異臭をもろともしてない。 マジかよ。


「お前らよく平気で立っていられるよな」

「嗅げば嗅ぐほど慣れるよ」

「噛めば噛むほど味が出るみたいな言い方やめんかい」

「これしきで情けねえ、ぷぷ」

「自慢のロングヘアーを刈り上げてやろうか」

「マスター。 耐性なさすぎではないですか?」

「ティまで同じ感覚とは。 誰一人として共感してくれねえなおい!」


 背を預けられる信頼するティから辛口発言に心からの叫びをしていた。

 どんな人生を歩けば死体の臭いを嗅いでも平気になるのやら。

 異世界だから常識は通用しないのはわかるけど、わかるけども! 人を焼く臭いは慣れそうにない。


「焼却後、報酬金をギルドから貰いにいく。 その金で良ければご馳走するけど?」

「なら遠慮なくご馳走させてもらおう」

「決まりだね。 ……はあ、国の崩壊を食い止めれてよかったー」


 大きくため息を吐いて座り込んだ。

 よほど気を張っていたのだろうか疲弊しきった顔をしている。 失敗の許されないクエストで緊張しぱなっしだったのか。


「これで大問題の一つは解決した。 残りは国を蝕む四勇をどう対処するか……」

「なんだ、四勇とやらに悩んでいるのか」

「追い出そうにもバックに王国がついていて無理だし、人の話も一向に聞きやしない。 実力行使しようにも、私ではやつらに歯が立たない。 もうずっと頭を痛めているよ」

「悩まずとも簡単に解決する方法があるじゃないか」

「え? どんな方法だい?」


 彼は完全に櫻井翔太という存在を忘れているようだ。

 不幸な死を遂げた若者が転生したのではなく、神が選別して送り込んだ勇者殺し(ひと)なのだと理解してない。

 やれやれ。


「俺に依頼しろ。 四勇の首を取れと」

「……いや、それはできない。 サクライの底知れない強さは目に焼きついている。 けれど、コカトリスのような魔物と比較しようがないほど四勇は強い。 それに勇者が一人ならまだしも、四人相手だと勝ち目はない」

「サーレはまだ俺の力量を見誤ってるようだな。 神が選んだ存在だぞ、そこらの雑魚に負けるわけなかろうに」

「嘘……ではないか。 気乗りしないが依頼しよう。 ただし条件付きでだ」

「条件はなんだ?」

「私も四勇と戦う。 君に死なれては困る」

「死なれて困るのはこっちの台詞なんだがな。 OK、それで条件をのもう」

「よろしく頼むよ、サクライ」

「こちらこそ」


 握手を交わし契約は成立した。

 大勢の人を見殺しにできない性分で竜の卵の回収を手伝ったが、ようやく本来の仕事に戻れる。

 旅の必需品もサーレに要求すれば揃うだろう。

 遠回りしたが世界を食いつぶす害虫を排除できる準備は整った。

 待っていろ……貴様らに平穏を壊しに行くぞ。

  

次は第三章に移ります。


お楽しみにー

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